お知らせ

2021.4.14

【現場視察】日本トップクラスのCLTマザーボード製造工場

eTREE編集室

2021年3月26日~27日、愛媛県と高知県へCLT見学ツアーに行ってきました。
非常に有意義な視察だったため、是非ご紹介させていただければと思います。

CLTとはCross Laminated Timberの略称で、ひき板(ラミナ)を並べた後、繊維方向が直交するように積層接着した木質系材料です。厚みのある大きな板であり、建築の構造材の他、土木用材、家具などにも使用されています。
一般社団法人日本CLT協会

主催:株式会社イケダコーポレーション
共催:株式会社サイプレイス・スナダヤ
https://iskcorp.com/all/tour_clt20200205/

はじめに訪れたのは、愛媛県にある大手製材工場サイプレス・スナダヤ(以下スナダヤ)です。創業100年を超えるスナダヤは、3年前に工場を新設し、CLTの生産に着手しました。

CLT工場では、ラミナを貼り合わせて作るマザーボードの生産工程と加工工程を見学しました。

マザーボードは最大12,000×3,000ものサイズになります

工場内には、巨大なマザーボードが積み重ねられており、壮大な風景でした。
ラミナの接着は全て自動で、瞬く間にマザーボードが出来上がります。

スナダヤの社長曰く、マザーボードの生産よりも、加工の方が手間がかかり、現状加工のスピードが追いついていないとのことでした。

続いて、ラミナを生産する製材工場を見学しました。
スナダヤの本業は無垢の構造材、土台です。原木消費量は年間で18万㎥にも及ぶとのこと。それだけの製品をどのように加工するのか、興味がありました。

今回のツアーで最もインパクトがあったのが、この機械です。

まるでコックピットのような、コントロール室

ここで原木を3Dスキャンし、形状を計測し、どのような木取りをしたらよいのか瞬時で決め刃を入れ製材します。

ドイツのリンク社が開発したチッパーキャンター製材設備です。日本では今のところ、ここだけに設置されています。
角材が取れる時は角材を優先します。ラミナ優先のような設定もできるそうです。
この機械で1日2000㎥もの原木を製材できるとのこと。中小の製材工場1年分の量です。
「もはや台車に乗って製材している場合じゃないな…」
と感じました。

2日目は、CLTを使った現場見学です。
1件目は、高知学園大学です。

設計:艸建築工房

CLTのマザーボードを通しで使っており、燃え代設計の為2枚合わせにしています。
内側の部分はそのまま内装材として表しで使用しております。
スナダヤの社長もおっしゃっておりましたが、CLTの約9割は表し(あらわし:通常は仕上げ材によって隠してしまう構造部分を、露出させる仕上げ)で使用するそうです。
せっかくの無垢材なので、表しで使用したいというのはよく分かりますが、そのために無節や上小での指定が増えて、ラミナの生産が偏ってくる弊害があるそうです。
CLTは本来は構造材なので、表しで使うことはあまりありません。比率がもう少し均等になると、森林資源の偏りもなくなるかも知れません。

設計の詳細は日経XTECHをご覧ください。
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/mag/na/18/00109/070100004/

個人的に興味があったのが、外壁に使用している無垢材です。

南向き大開口に、気持ち程度のひさしがついて無垢材が使用されております。
杉の無節材に天然塗料リボスのタヤを使用。よく染み込むように荒木での仕上げです。

この環境では、直射日光や雨風が容赦なく当たります。
無垢材の使用環境としては、これ以上なく過酷です。

こちらの建物はすでに1年間経過しておりますが、写真の通り大きな劣化もなく竣工当初の風格を維持しています。元から風化した色合いをイメージして着色されていますが、木材自体に劣化は見られませんでした。

木材の新たな利用用途が見込めそうです。

荒木、隙間を空け実なしビス止めでの施工です

最後に視察したのが、地元の企業の社屋「上田微生物オフィス兼研究所」です。
設計は同じく、艸建築工房の横畠様。

上田微生物オフィス兼研究所

初見、ものすごいインパクトでした。
ご覧の通り、屋根(壁?)にCLTのマザーボードをそのまま使用されています。
元々は、普通のS造、RC造の依頼だったそうですが、地域材を使用するCLTをご提案し、今回の建築設計になったそうです。
ちなみに、こちらのCLTは、「屋根」だそうです。
詳細は伺えなかったのですが、屋根の方が検査的に通りやすかったとおっしゃっていました。

現場には、施工を担当された中成の中上常務もいたのですが、建て方がそれは大変だったとのこと。
巨大なクレーンでつり下げ、かつ斜めの角度を維持したまま貼り合わせるので、その困難さは想像に難くありません。

CLTは構造を維持するためにも、最高強度の桧S120を指定。
S120は高強度のラミナのみを貼り合わせて作られたCLTです。

同じく、表しで使っておりますので、内装はオール無垢の仕上げです。
これだけ無垢材を使うと、調湿性も優れた建物になると思います。

その他、愛媛県職員、高知県職員とも地域材の新たな利活用について打ち合わせし、とても有意義なツアーでした。

今後、弊社でもこのような現地見学ツアーを実施予定です。
ご希望やリクエストがありましたら、お気軽にご連絡下さいませ。
また、CLTのご相談、お見積りも可能ですので、合わせてご相談下さい。

株式会社森未来 浅野純平

この記事をシェアする

おすすめの記事

おすすめキーワード

eTREEに情報を掲載しませんか?

eTREEでは、木材関連の情報をご提供していただける
木材事業者様、自治体様を募集しています。

現在募集中の情報はこちら