木材加工

2023.5.24

LVLとは?中大規模建築物に使用される単板積層材の特徴を解説

eTREE編集室

建築物に使用される木材といえば、スギやヒノキ、アカマツなどが有名ですが、強度にばらつきがあることから、余裕のある設計が必要です。また、強度の余裕を確保するために、必要本数以上の構造材を設置しなければならず、思うような間取りの建築物が建てられません。

これに対し、中大規模建築物に使用される「LVL」という木質建材を利用すれば、強度のばらつきを解決できるとご存じでしょうか。

本記事では、LVLの特徴やメリット・デメリットなどを解説します。建築に利用できる便利な木質建材の魅力をご確認ください。

LVL(Laminated Veneer Lumber)とは

「LVL」とは、以下に示す木材をスライスして製造された単板を接着し、かたまりにした木質建材のことです。

【単板の種類】

  • ダフリカカラマツ
  • ラジアータパイン
  • 国産カラマツ
  • スギ

正式名称をLaminated Veneer Lumber(ラミネートしたべニア材)と言い、国内では「単板積層材」と呼ばれています。

LVLは、乾燥させた単板を何層にも重ねることによって、強度低下の要因である「節」を分散できます。その結果、強度のばらつきを抑えることができ、安定した強度の構造材(一部、内装材)として利用できるのが最大のポイントです。

また、強度の安定化を図れるのはもちろん、単板の表面および積層接着層に薬剤処理を行えるため、腐食や害虫の被害を受けにくい構造材として利用できます。

そこでまずは、LVLの基礎情報として

  • 製造方法
  • 歴史
  • 集成材との違い

を詳しくご紹介します。

LVLの製造方法

LVLは、丸太をスライスした単板を重ね合わせて製造された木質建材です。主に次の工程で生み出されます。

出典:一般社団法人 全国LVL協会 製造方法

製造工程として、まずは原木を切り出して、大根の皮をスライスする「桂剥き」のように単板を用意します。単板を乾燥させたら、数枚の単板を接着する「一時接着製品」を製造します。そして、一時接着製品同士を接着して、柱や梁といった建築物に使う「二次接着製品」を製造するのが一連の流れです。

一般的には、合板を製造する製造機械設備を利用しますが、近年では、LVL専用のプラントが登場し、製造需要が高まっています。

LVLの歴史

LVLのことを初めて聞いた、という方もいるでしょう。ただ、LVLの歴史は思っている以上に長く、昭和40年代から国内で利用されています。

当時は、造作材として次のような一部の目的で利用されていましたが、1972年に米国林産試験場から構造用のLVL開発研究成果が発表され、全国的に普及していきました。

【当時の利用目的】

  • 家具
  • 楽器
  • 運動器具

また時代が進むにつれて製造システムも整備されていき、現在では「柱」「梁」など、主に構造材として利用されています。

上記からも分かるように、厳格な基準であるJAS規格に定められているのが特徴です。また、基準強度が高いことから、高い品質を維持し、中大建築物の構造材として利用されています。

LVLと集成材の違い

LVL(単板積層材)と集成材には、製造方法や特徴において次のような違いがあります。

LVL集成材
単板の繊維方向を揃えて積層接着ラミナ(挽き板/小角材ピース)を、
繊維方向を揃えて接着
耐久性のある接着剤を利用しているため
単板が剥がれにくい。
イソシアネート系接着剤が使用された集成材は
耐水性に劣り、
板材・小角材が剥がれる場合がある。

どちらも繊維方向の強度に優れていたり、共有が安定していたりと似たポイントを持っていますが、その中でも大きな違いとなるのが「剥離性」です。

LVLは、材料の剝がれやすさに違いがあります。薄くスライスした単板を重ねたLVLに対して、単板や小角材などを重ねた集成材は接着面積が広いため、LVLよりも材料が剥がれやすいのが特徴です。

LVLがもつ3つの特徴

LVLが、中大規模建築物の利用に最適といわれる特徴を3つご紹介します。

寸法安定性や精度に優れる

LVLは、製造時に平衡含水率以下になるまで乾燥されているため、膨張・収縮が少なく、寸法安定性と精度に優れます。

また、LVLは単板を継ぎたすことにより、最大長6,100mm、最大厚220mmまで製造できます。また、製品として利用できないLVLは、再加工を行う「再割」を行うことによって寸法を変更できるため、製造した木質建材を無駄にすることなく、汎用的な目的で使用できます。

参考:セイホク株式会社

軽量で品質が安定している

LVLは、強度のばらつきが少なく、製造工程の中で水分量を平均含水率以下に抑えられているため、軽量で耐久性といった品質が安定しています。

また、あらかじめ乾燥されていることから、構造材として利用した後に発生する乾燥収縮を抑制し「割れ」を防止できるのが特徴です。

薬剤処理(防腐・防蟻・防虫)ができる

LVLは、積層接着を行う前に、単板もしくは接着層に次の薬剤処理を実施できます。

【LVLに利用できる薬剤処理】

  • 防腐処理
  • 防蟻処理
  • 防虫処理

薬剤処理を表面だけでなく積層の内部にも実施できるため、高い防腐・防蟻・防虫性を維持できます。湿度が高い軒下、日の当たらない壁内など、構造材を設置する箇所に発生するシロアリ被害を抑えられることから、長持ちする家づくりとして活用できるのが特徴です。

LVLのメリット・デメリット

LVLを構造材として利用するのなら、あらかじめメリット・デメリットを理解しておくことが大切です。どんなに便利な木質建材であっても、メリットと同時にデメリットを持ち合わせています。LVLについて深く理解するためにも、LVLのメリット・デメリットを押さえておきましょう。

LVLのメリット

LVLのメリットは次のとおりです。

【LVLのメリット】

  • 強度のばらつきがないため材料の質で出来栄えが左右されない
  • 製造時点で乾燥しているため気密性に優れている

強度にばらつきのある木材を使用すると、木材の質によって出来栄えが左右される場合があります。一方、強度にばらつきがないLVLなら、木質建材の質に変化がないため、出来栄えが変化しません。安定した強度を発揮できるため、中大規模建築物でも広く利用できます。

また、気密性が高く収縮に強いことから、木材同士の接合部にスキマを作りにくいのがメリットです。気密性を保持することによってゆがみのない建築物を生み出せます。

LVLのデメリット

LVLのデメリットは次の通りです。

【LVLのデメリット】

  • LVLの寿命は70年程度といわれているが正確な寿命が分からない

LVLが登場し、現在まで70年程度経過しており、構造上の問題が発生していないことから「70年は確実に保つ木質建材である」といわれています。ですが、登場して数十年しか経過していない木材であることから具体的な寿命は判明していません。ただし、LVLよりも強度に劣る木材でも数百年の耐用年数があることから、およそ同等の寿命があると予測できます。

まとめ

建築物に使用する木材・木質建材は、日々進化を続けており、高強度な製品が多数登場しています。

その中でも、乾燥、寸法の安定性に優れる「LVL」は、今後の日本建築を背負う、重要な木質建材だといえます。すでに国内にある複数の建築物でLVLが利用されているので、長持ちする建築物の建材として、利用を検討してみてはいかがでしょうか。

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