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記事公開:2023.6.9

オフィスを木質化したらどんな効果がある?事例と一緒に解説!

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オフィスを木質化することによって、オフィスで働く人や訪れる人、社会全体にも良い影響を与えられます。国も木質化を推進しているため各種支援制度も用意されています。

この記事では、オフィスの木質化を検討している人に向けて、実際にオフィスを木質化した事例やその効果を紹介します。オフィスを木質化する際に覚えておきたい点も解説しますので、自社に適したオフィスの木質化を考えてみましょう。

内装の木質化とは?

内装の木質化とは、建物内の内装部(天井や床、壁、窓枠など)や外壁などの屋外に面する部分に、木材を活用することを指します。

柱や梁などの構造に木材を用いる「木造化」と異なり、鉄筋コンクリート造や鉄骨造でも取り入れられるのが特徴です。

木質化が注目されている背景

オフィスの木質化が注目される背景には、2021年に改正された「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」の影響があります。

法律の改正前は、主に公共建築物の木材利用が推進されていました。しかし、法律が改正されたことによって、法の対象が公共建築物から建築物一般に拡大したのです。

SDGsの認知度が高まり、地球環境への負担低減や森林資源の保全、林業の活性化が求められる現代において、内装に木材を活用する動きは広まっています。

オフィス木質化の事例とその効果

ここからは、オフィスを木質化した事例と木質化したことによってどのような効果があったのかを解説していきます。

紹介するオフィスの事例は、以下の通りです。

  • H¹O渋谷神南
  • ネスティングパーク黒川
  • 鬼塚電気工事・鬼塚産業 本社ビル
  • 福井銀行本店ビル
  • ネッツトヨタ和歌山

「オフィスの木質化」といっても、木質化するねらいは企業によって異なります。自社でオフィスを木質化する際、どのような効果を得たいのかを考えて、事例を見ていきましょう。

H¹O渋谷神南【植物×木材で創造力の向上を目指す】

H¹O渋谷神南は、木製家具を至る所に配置し、木の温もりや香り、素材感を感じられるような内装のオフィスを作り上げました。

素材にもこだわり、無垢材の表層部を圧縮した「Gywood」をテーブル材に使用しています。Gywoodは、テーブル材に傷がつきにくくなるだけでなく、寸法安定性が高いというメリットもあります。

さらに、インテリアに植物を多用することで、リラックスできる空間を作り出しています。水の音が楽しめる水盤(建築物に設けられる浅い水面)も設置されており、創造力の向上を促進しています。

参考:内装木質化した建物事例とその効果|公益財団法人 日本在宅・木材技術センター

鬼塚電気工事・鬼塚産業 本社ビル【地域の交流をも生み出す】

鬼塚電気工事の鬼塚産業本社ビルにおけるオフィスは、大分県産材の杉があらゆる場所に使われています。自社でインテリアまで作り上げるこだわりようです。

木質化されたオフィスは、社員が快適に働ける環境作りに貢献しているだけでなく、さまざまな交流の輪も作り出しています。屋上には庭園があり、未来の環境創造の活動促進のためにと、視察や見学も積極的に受け入れています。

多くの人との親密なコミュニケーションが生まれやすいオフィス環境であるため、新たなアイディアも得やすくなるかもしれません。

参考: 地域の未来について考え、取り組む場として『新社屋』を建設しました。|鬼塚電気工事株式会社

ネスティングパーク黒川【コミュニティの拠点となるようなシェアオフィス】

ネスティングパーク黒川は、豊かな自然が広がる郊外に立地しているシェアオフィスです。

里山の景観になじむように木造の平屋造りになっており、外壁には無垢材が用いられています。内装は、木の温かさや素朴さが感じられるデザインで、木製の家具が随所に配置されています。

雰囲気や居心地がよく、緑を感じながらリラックスして仕事をすることができるでしょう。郊外の新たな拠点になりつつあるシェアオフィスです。

参考:内装木質化した建物事例とその効果|公益財団法人 日本在宅・木材技術センター

福井銀行本店ビル【地域材を活用して地域貢献】

福井銀行本店ビルの建て替えプロジェクトにおいては、福井県産材の「黒杉(クロスギ)」を銀行の壁面や家具材に用いました。傷つきやすい杉のデメリットを補うために、表層圧密材を使用するなどの工夫もなされています。黒杉の調達は、県内の製材所と連携して行ったため、地元産業活性化への貢献にもつながっています。

地域に密着した銀行だからこそ、地域材を用いたオフィスの内装化を行うことで、その魅力を発信し続けることが可能です。2階にはカフェやライブラリーもあり、木の温かさが訪れる人に心地良さを与えています。

ネッツトヨタ和歌山【地域に根差した企業であることをアピール】

ネッツトヨタ和歌山は、内装の細部まで地元産の紀州材を用いることにこだわって、「人とクルマが触れ合う店舗作り」を行いました。

木質化に用いた紀州材には毎回異なった加工を施しており、紀州材の多彩な魅力を引き出せるような工夫がなされています。

また、インテリアの製作にいたっても、和歌山県内の事業者に発注しました。オフィスの木質化が「地元の産業に貢献する姿勢」や「地域に根差した企業」をアピールすることにつながっているでしょう。

店内には木育コーナーもあり、人と木が触れ合って、温かなコミュニケーションが生まれるような場が形成されています。

オフィスを木質化したら期待できる4つのメリット

オフィスを木質化した事例とその効果を知っていただいたところで、次にオフィスの木質化はどのようなメリットがあるのか整理して紹介していきます。

オフィスの木質化によって期待できるメリットは以下の通りです。

  • リラックス効果がある
  • 生産性が高まる
  • 健康増進の効果が期待できる
  • 社会貢献ができるのでブランディングにもつながる

以下に、それぞれ詳しく解説していきます。

リラックス効果がある

木質化されたオフィスで働く人は、ストレスを感じにくく、リラックスして働くことができます。

スギ材を使用した部屋で計算課題を行った際は、ストレスの指標となるだ液に含まれるアミラーゼの活性化が抑えられたという報告がされています。自然と従業員同士のコミュニケーションも増え、温かな雰囲気の中で仕事ができるでしょう。

また、オフィスに訪れた人も、心地良さを感じるでしょう。人を集める必要があるシェアオフィスや飲食店などは、「心地良さ」を作り出せるのは大きな利点ではないでしょうか。

生産性が高まる

オフィスに木製の家具を導入することによって、仕事に集中でき、新たなアイディアを生み出しやすい傾向があることが報告されています。

さらに、内装に無垢材を使用すると深睡眠の時間が有意に長くなり、作業効率が高まる傾向があります。従業員の生産性が高まる点も、オフィスを木質化する上での大きなメリットです。

健康増進の効果が期待できる

木材や木質化された空間には、以下のような効果があると考えられています。

  • 免疫力向上
  • 五感に刺激を与え、リフレッシュを促す
  • 疲労感を緩和する
  • 良い眠りを引き出す
  • 湿度を調整し、過ごしやすい環境に整える
  • 消臭や抗菌
  • ダニの防除

従業員の健康は、健全な事業運営を行う上で重要です。オフィスを木質化することは、長期的な視点でも有用です。

社会貢献ができるのでブランディングにもつながる

オフィスを木質化することによって、以下のような社会貢献になります。

  • 木材の利用推進によって森林の持続的な管理に貢献できる
  • 環境に対する負荷を減らせる
  • 地域産業の活性化につながる

木には炭素を固定し貯蔵する特性があるため、木材を積極的に活用すれば、二酸化炭素を長期間にわたって固定することが可能で、環境負荷の低減にもつながります。環境保全や地域産業への貢献をアピールすれば、競合との差別化を図れるでしょう。

オフィスを木質化する際に覚えておきたい4つのポイント

オフィスを木質化するメリットを具体的に知っていただいたところで、次にオフィスを木質化する際に知っておきたい事項を紹介していきます。

オフィスを木質化する際は、以下4つのポイントを必ず覚えておきましょう。

  • 内装制限の対象になる場合がある
  • 耐久性やメンテナンス性を考えて木材を選択する
  • オフィス木質化の支援制度を調べる
  • 最適な木材調達方法を考える

オフィスの木質化を行う際は、これらの点を意識して、戦略的に木質化を行いましょう。

内装制限の対象になる場合がある

オフィスを木質化する上で覚えておきたいのは「内装制限」の対象になる場合がある点です。

内装制限とは、建築基準法によって不特定多数が利用する事務所や店舗などで、壁や天井などに木材の使用制限が課されることを指します。

別の条件がある施設もありますが、内装制限の対象となるようなオフィスの規模は以下の3種類です。

  • 3階建て以上で延べ面積が500平米を超える
  • 2階建てで延べ面積が1,000平米を超える
  • 平屋建てで延べ面積が3,000平米を超える

内装制限は火災の被害を抑えるための法律です。

よって、不燃木材を使用したり、スプリンクラーや排煙設備を設置したりすることで、内装制限があっても木質化が可能な場合があります。

参考:内装制限一覧表|日本塗装協会

耐久性やメンテナンス性を考えて木材を選択する

木材は傷つきやすいため、定期的なメンテナンスが必要です。材料選びにはこだわり、耐久性やメンテナンス性が高い木材を選んでおくことで、メンテナンスの手間が省けます。耐久性の高いおすすめの樹種は以下の通りです。

  • 桧(ヒノキ)
  • 栗(クリ)
  • 欅(ケヤキ)
  • ウリン

また、木材に圧密加工などの強化加工を施しておくことで、耐久性やメンテナンス性だけでなく、耐水性なども向上させることができます。

関連記事:木材を強化する加工とは?目的や種類、具体的な商品を解説!

オフィス木質化の支援制度を調べる

オフィスの木質化にあたって、活用できる支援制度があるかどうかを確認してみましょう。補助金制度などの支援を活用すれば、オフィス木質化に要するコストを下げることが可能です。

例えば、東京都では国産木材を活用した建築物の設計・施工にかかる費用を支援する取り組みを行っています。 施工経費の補助上限額は5億円にものぼるため、活用も検討してみましょう。

全国知事会の公式サイトでは、国産木材の需要拡大に向けた各都道府県の取り組み事例を紹介しているので、オフィスがある自治体の取り組みを確認してみてはいかがでしょうか。

最適な木材調達方法を考える

オフィス木質化の目的を考え、その目的にあった木材の調達方法を選びましょう。

木材の調達方法は、主に以下の2つのパターンがあります。

  • 地元の木材を、地域の木材関連事業者と連携して調達
  • 他地域の木材を、木材流通事業者から主導してもらって調達

地域に貢献する」という意味合いが強ければ、地域の木材関連事業者と連携して木材を調達するのがいいでしょう。

スムーズに木材を入手したいのであれば、木材流通事業者のネットワークを活用してみてはいかがでしょうか。

まとめ

オフィスを木質化することによって、そこで働く人のリラックス効果や生産性の向上が期待できるだけでなく、社会貢献にもつながります。

「オフィスを木質化する目的」を明確にし、その目的を達成できるような取り組みや内装のデザインを行うことで、企業の価値はますます高まるでしょう。

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