木材合法性の歴史

Text by Shinmirai

森林保全の原点

森林保全に対する考え方が大きく変化してきたのは、1992年6月にブラジルのリオデジャネイロで開催された国連環境開発会議からです。すべてはここから始まります。

この会議は地球サミットとも呼ばれ、京都議定書につながる気候変動枠組条約が採択され、持続可能な開発という考え方も打ち出されました(リオ宣言)。今日のSDGsにつながる源流となっています。

ここで「森林原則声明」も採択され、以後のISO14000や森林認証へと発展していきます。

”利益中心”の80年代以前

地球サミットに至る森林保全をめぐる世界情勢の変化は80年代から始まります。
80年代以前は、林業、木材産業の利益のみに集中し、特に発展途上国では森林を外貨獲得のための資源と位置づけ、政府が主導する形で積極的に開発を行っていきました。

しかしながら、そこで生活する人々の暮らし、生息する動植物の生態系、自然災害を抑止するための機能などはそれほど考慮されなかったといえます。

現在も石鹸など天然由来を売り物にしたパーム椰子の大規模栽培や食肉のための大規模農地開発のため、天然林が皆伐されるケースが見受けられます。植林するケースでも、元々の植生ではない成長の早い樹種を持ち込み大規模に植栽されることがありますが、元々の生態系を考えると、必ずしも正しい手法とは言えないかもしれません。

森林活用の見直しと環境NGOの台頭

1980年代後半から東南アジアやブラジルなどの熱帯林地域での森林伐採のあり方への批判が高まり、そうした潮流は北米や欧州にも伝播し、生物多様性や森林環境の維持という観点から、林業・木材産業を優先した森林活用への見直しが始まります。

グリーンピース、レインフォレストアライアンスをはじめとした環境NGOの活動が本格化するのも80年代後半以降です。しかしながら、ネット時代ではないことから情報は断片的にしか入らず、何が起きているのか、正確に知ることは困難でした。

日本では熱帯林行動ネットワーク、サラワク・キャンペーン委員会などが東南アジアでの森林伐採と日本の関わりを追及し始めます。

熱帯林行動ネットワークは、ボルネオ島などでの森林伐採に対し、産地国や輸入元商社に対し事業見直しを求める活動を強化していきました。グリーンピースは主にアラスカやカナダBC州の木材会社に対し、天然林伐採への批判を強めました。欧州での環境NGOの活動は把握していません。

輸入に依存する日本

当時、日本政府や木材輸入関係者は、環境NGOの言い分を重要視しておらず、無頓着で、フィリピン、インドネシア、マレーシア等での熱帯林輸入のあり方を主体的に見直す動きは乏しかったといえます。

環境対応というよりも、産地国において丸太輸出規制が強化される都度、代替産地を開発していく歴史でした。東南アジア産丸太の主力は合板用原材料となるラワン等のフタバガキ科樹種で、膨大な数量が合板原材料として日本に輸入されました。

日本が戦後復興から高度成長へと続く時期であり、大量の木材を必要とした時代ですが、戦中の森林大量伐採で国産材資源が乏しく、輸入木材に依存するしかなかったのが実際です。

商社は日本の高度成長を建築資材の面から支えているのは自分たちであるとの自負が明確で、供給安定性確保のため、産地国の政権とも密接につながっていきました。欧州においても植民地時代のアフリカ旧宗主国から熱帯材が大量に輸入されてきた歴史があります。

中国が世界最大の木材輸入国として登場して以降は、中国が東南アジア、アフリカ、南米産熱帯天然木材輸入の主体となっており、この状況は現在、さらに顕著になっています。

規制強化や仕組みづくりの本格化

森林の多面的価値に関する考え方の台頭、森林開発と保全の仕組みづくり(森林認証)、デューデリジェンス(DD)という考え方が芽生えてきたのは、前述した地球サミット以降です。

日本はまだ、反応が鈍かったですが、欧米では世論の批判的な論調、ネットを駆使した環境NGOからの攻撃などを受け、90年代後半から改革に動き始めます。環境ISOの創設、森林認証システム構築、国際機関による新たな仕組みづくりが本格化し、現在に至ります。

90年代を前後して、米国西海岸では93年、斑フクロウの生息地保護を目的とした大規模な国有林伐採、販売停止が起きました。ウッドショックと言われる事象です。
カナダのBC州、米国のアラスカ州では原生林伐採停止、東南アジアでは熱帯林丸太輸出規制が強化されました。アフリカ諸国でも段階的に丸太での輸出について規制強化されています。

商社内部にも、森林認証をはじめとした木材輸入調達への検討が始まります。東京都が熱帯産合板の不使用方針を打ち出すなど、需要環境が先行して変化してきたことも影響しています。

住友林業ではいち早く、地球環境室が創設されました。現在、同様の部署は商社、大手問屋、ゼネコン、建設会社等で増えています。

また、CSR(企業の社会的責任)という考え方が浸透し、決算書類の付属として公表するケースが増えてきました。こうした取り組みは今日のようなSDGs時代を迎え、ESG投資に対する大変重要な公表文書となっています。

輸入木材の現状

現在、北米、欧州から輸入される木材は大半がPEFCやFSCのFM認証を取得した森林から供給された原材料を、CoC認証を取得した製材等木材加工会社が供給しており、懸念する必要はないと思います。

一方、東南アジア、南米、アフリカ、中国、ロシアから供給される木材は、供給者すべてを信頼することは難しいと思います。輸入側は基本的に産地国の森林法制度を信頼するしかありませんが、こうした考え方はリスクがあるというのが環境NGOの考え方です。

また、森林法制度だけに適合するのでは不十分との指摘もあります。地域社会への様々な貢献、劣悪な労働環境、森林伐採後の土地の使い方なども考慮する必要があるといいます。