[eTREE TALK vol.6] Part3 / むしろ、余地しかない

2021年6月29日

オンライン開催

機能よし、環境よし、コストよし。デメリットもしっかりと伝えていく

浅野: このオフィスのデザインはどのように作っていったのでしょうか。一般的にはまず空間デザインから作って最後に家具の設計に入っていくと思います。この場合は、はじめに「このスチール家具どうしようか」などと議論して図面ができていったのではないかなと想像したのですが、そのあたりはいかがでしたか?

グランドデザインとして、席はいくつ必要かといった全体像はありましたよね。

成富: はい。初めに課題を出し、必要機能を落とし込んで、そこに対して転用できるものを計画していきました。例えば、個人のワゴンはいなくなったけど共用の棚が必要だとします。それならワゴンを積み重ねたら棚になるじゃんと。これは僕のなかで発見だったんですけど。

成富: グランドデザインは、平面ではありましたが、空間として描き切ることはあえてしませんでした。現場で工事しながら変わっていく部分もあると思ったので、スピード感をもって柔軟に対応できるように考えました。工事しながら、手も動かしながらという感じで。

浅野: 全部ぶっ壊して新しく作り直すのと、リデザイン・アップサイクルするのでは、コスト面ではどちらが良いのでしょうか。今回設計にお金がかかったとかは置いておいて。

成富: そうですね。肌感で、半分から7割くらいに抑えられたのではないかと話していました。今回は自分たちがオーナーなので特に抑えられました。許せる範囲が広かったので。

浅野: これと同じパターンの内装設計を仕事で受けたことはありますか。

成富: 学校など教育機関の案件はあります。あとは車のディーラーさんのショールームとかもありました。現在進行中の案件もあります。

商業ではまだ温度感が違うかもしれません。しかし、今、間違いなくこのようなエシカルの意識に慣れてる方が多くなっています。

浅野: きちんと機能要件を満たした上で、地球環境に配慮もでき、コストも抑えられる。これなら導入したい企業さんも多いのではないでしょうか。
今後このような設計が広がってほしいし、広がると思いました。

成富: 設計する側がエシカルな空間、リサイクルを意識したデザインをするとどういうデメリットがあるのかを理解してお客様にきちんと伝えられることが大切だと思います。例えば壊れたらこうしたら治るけど多少壊れやすいですよとか、新品に比べて水が染みやすいですよとか。ネックをカバーしていくというのは課題かなと。理解をどちらも深めなければいけない。これは木材にも通じることなのかなと思いますが。

むしろ、余地しかない。アップサイクルと木材の可能性

浅野: 今回の経験を踏まえて、もしこれから新規で内装を作るとしたら、どのような方針で作りますか?

成富: そうですね、使い続けることを考える視点で、その場がなくなってしまった後のことを考えることも必要かなと思います。

LINK

成富: 写真はLINKと言って、使い終わった材料を砕いて入れ込み、前あったものの記憶をつなぐマテリアルです。こういうプロジェクトもやっています。空間の寿命が終わった後は、こういった記憶の継承の仕方もありなのかなと。

あとは組み立てやすくしておくことでしょうか。例えば全部ノックダウンで作っていたらばらして全部使えますよね。

木材に関していえば、プリント材ってそこそこの5年くらいの耐久性で作られているんです。だから5年後ごみになる可能性が高い。でも、日本の木材の利用の仕方って何百年も持つように作られていたんですよね。こないだ木工家の友人に聞いたのですが、20ミクロンのカンナで挽けば仕上げになるそうです。「なにそれ」と。お恥ずかしながら知りませんでした。木には樹脂塗料を塗って強度をあげて、というイメージしかなくて。その友人によると、木の細胞は20ミクロンだから、それに合わせて20ミクロンのカンナで挽けば水もはじくし汚れもはじいてある程度の仕上げになる、神社仏閣はそれで仕上げているから長持ちするんだと。

木を見直したいなと思いました。使い続けることを考えたときにリユースしやすいですよね。接いだりもできる。そういう技術が残っている。残っていくといいなと思っています。そういった面を再発見したいし僕個人としてもやっていきたいなと思っています。

浅野: 使い続けることを考えるとおっしゃっていましたが、内装業界は真逆の業界だったのかなと僕は思っていて。前半でも出ましたがスクラップ&ビルドが基本ですよね。
もし内装業界の方から、その空間の寿命が尽きたとしても使った素材をもう一回アップサイクルできるような素材を使っていこうと言ってくださったらとても良いことだと思うし、そこに木材が活躍できる余地はあるんじゃないかなと。

成富: むしろ、余地しかないかなと。

浅野: 元々、古民家の古材は解体してもう一度くみ上げられたりするんですよね。有名なのは伊勢神宮の式年遷宮で、いったん全て解体してその材が日本全国の神社に行ってまた再利用されたりする。木組みの構造から見ても、木材はアップサイクルしやすい素材なのかなと思います。無垢の板を木組みにつけて、その内装空間が終わりましたとなったときに、もう一度削りなおせばほぼ新品として使い直せます。またはバイオマス燃料として使うこともできます。

「木材はもう一度アップサイクルできるからなるべく使いましょう」という流れができて、オーナー様にもそれが伝わっていけばいいなと思います。

成富: そうですね。それだけでなく、今の時代は空間を作るときにストーリー性がないと難しいなと思っているのですが、木ってストーリーが魅力的になりやすいなと思っていて。そもそも生き物ですし、どんな地域のどんな山でどういう林業屋さんが作っているか、どこの製材所を通って廃棄物はどうなってとストーリーが作りやすい。そんなストーリーもありつつ、アップサイクルの面からも良さを知り活用していければと思います。

■ ゲスト
株式会社船場
エシカルデザイン本部
Senior Designer / 一級建築士
成富法仁

●日経ニューオフィス賞入賞
・2010 ECナビオフィス
・2020 VOAYGE GROUPオフィス
●SKY Design Shortlist(海外)
・2020 VOAYGE GROUPオフィス
●グッドデザイン賞2013
・荘内銀行泉中央
●JCD入選、JCD入賞
・サンゲツジャパンショップ 07-12
・アメーバスタジオ道玄坂
●SDA入賞
・トレニアート鉄道博物館
●照明学会賞
・荘内銀行温海支店オフィス
他多数

■PART1「計画6か月、製作1か月、利用は3日」はこちら
■PART2「違和感を無視しない、自分が是としているものと反しない」はこちら

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