サステナブル

記事公開:2022.10.20

木材はエシカルな素材なのか

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最近、クライアントから
「エシカルな素材を提案してほしい」
「サステナブルな素材を提案してほしい」
などの要望をいただくことがございます。
ちょっと違和感を感じることもありますので、木材とエシカル・サステナブルについて考えてみたいと思います。

エシカルとは

最近多用されている「エシカル」というキーワード。 エシカルファッションなどはよく聞きますね。
Wikipediaには、

エシカル(ethical)とは、「倫理的」「道徳上」という意味の形容詞である。つまり、「法律などの縛りがなくても、みんなが正しい、公平だ、と思っていること」を示す。近年は、英語圏を中心に倫理的活動を「エシカル(ethical)○○○○」と表現し、エシカル「倫理的=環境保全や社会貢献」という意味合いが強くなっている。

と記載されております。

要約すると、エシカル=倫理的/環境保全/社会貢献ということのようです。
エシカルファッションのほかに、以下のようなワードがすでに生まれているようです。
● エシカルジュエリー
● エシカルヒーロー
● エシカルハッカー
● エシカルインベストメント
● エシカルビューティー
● エシカルトラベル

すでに「エシカル」というキーワードがバズワード化しているかのようですね。 木材業界にもエシカル流行の波が届いたということでしょうか。

さて、本題です。 木材はエシカルなのか?
倫理的/環境保全/社会貢献という観点からすると、二つ返事で 「エシカルです」 とは言い切れない部分が多いと思います。

倫理的

エシカルファッションやエシカルジュエリーでは、素材自体の環境影響度と共に、生産者に対して適切な利益が配分されているかといった、フェアトレードの概念も含まれております。
一方国産材はどうなのかというと、そもそもそれ以前の話しで、トレーサビリティが追えないため、フェアトレードか否か、確認すること自体が難しいです。

木材流通については、以前のブログでも触れています。
▷「なぜ木材の価格は不透明なのか?」

また、下記の通り日本では、素材生産費や流通コストがかかり過ぎで、山主の手元に残る収益がほとんどありません(1立方メートルあたり、3,580円)。
この少ない収益を補填するために、多額の補助金が支払われております。
これが倫理的に正しいかどうかは議論を呼ぶところです。

環境保全

林業においての環境保全というと、水源涵養機能、土砂崩れ防止機能などが思い浮かびます。

確かに、手入れのしない人工林よりも、間伐をし、光が入り、下草の生えた植生豊かな森林の方が、環境的には良さそうです。しかし、これらの施業も補助金によって支えられている側面もございます。また、皆伐(主伐)した際は、植林をしなくては植生を守ることはできませんが、植林をする費用対効果が見込めず、植林されないケースがございます。

補助金の有無は置いておいて、間伐材を使うこと、植林を前提とした主伐材を使うことは、環境保全に貢献していると考えて良さそうです。

エシカルと似たような言葉に「サステナブル」という言葉があります。日本語で言うと「持続可能性」という意味です。間伐すること、植林することは森林の持続可能性に貢献しておりますが、それが補助金なしでは成り立たないのであれば、本当の意味でサステナブルとは言えません。簡単に解決できる問題ではありませんが、今後はこの辺も考えなくてはなりません。

社会貢献

社会貢献というと、林野庁の提唱する「森林の有する多面的機能」が思い浮かびます。

この中の、地球環境保全 = CO2の吸収源に期待されている方も多いのではないでしょうか。ご存じのように、木材はカーボンニュートラルの素材なので、木材を使うこと自体は、地球温暖化に悪影響を与えません。

CO2を多く吸収するのは、5~20年生の林齢が若い森林や、適切に管理された森林といわれています。とするならば、間伐し森林の成長を育むことや、主伐し植林することはCO2の吸収に貢献していると言えます。
また、近年では、森林セラピーやレクリエーションの観点からも注目されております。

これは大いに期待できると思いますが、木材の利用と森林でのレクリエーションは直接結びつきません。

さいごに

冒頭の「エシカルな素材を提案してほしい」という依頼をいただいた際に抱いた違和感を紐解いていくと、色々な課題が浮かび上がってきました。
木材という素材自体は、カーボンニュートラルかつ、炭素を固定できるので、環境に良い素材と言えます。
もう一歩踏み込んで、エシカルという観点から見ると、使っている木材が間伐材なのか、もし主伐材だとしたら、ちゃんと植林されているのかを判別することは難しいです。
例によって、課題感だけ共有して終わりそうな流れですが、私たちは評論家ではないので、現状の中でもある筋道を立てて実行していかなくてはなりません。
では、森未来の考えるエシカルな木材とは何なのか?

改めて考えてみたいと思います。
私たちも思考している最中ですので、ご意見いただけますと幸いです。

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