eTREE TALK

2020.9.17

[eTREE TALK vol.4] 木の魅力を一本まるごと 東京の森から都市へ届ける

Text by Shinmirai

人と植物が共存するここちよい空間デザインを行うparkERsと、林業だけでなく、様々な方法で森や木の付加価値づくりを行う東京チェンソーズ。パートナーとしてともに仕事をするなかで新しい空間デザイン、新しい林業の形を実現してきました。parkERsから片平様と児玉様、東京チェンソーズから青木様をゲストにお迎えし、取り組みについてお話しいただいたeTREE TALK vol.4のトークセッションを、ダイジェスト版でお届けします。

  初めに、parkERs様、東京チェンソーズ様それぞれの取り組みについてお話しいただきました。

片平: 私たちが所属しているパーク・コーポレーションの空間事業部parkERsでは、「日常に公園のここちよさを。」を理念として空間デザインを設計しています。公園はそれぞれが散歩や読書など違うことをしますが、皆が笑顔になって帰っていく場所です。そんな公園の良さを日常に取り入れたい。そんな思いで空間を創っています。

parkERsの特徴は、設計の段階からプランツコーディネーターが携わることです。ただかっこいいだけではなく、植物がよく育つことも重視します。空間を創って終わりではなく、その先の豊かな時間を作りたい。そのために、引き渡してからもメンテナンスに入ります。

青木: 東京チェンソーズでは、東京の西にある檜原村の森をフィールドとしています。林業は一般の方に何をしているのかわかりにくい業界だと思うので、一般の方向けの情報発信にも力を入れています。また、FSC認証FMとCoC両方取っているのは東京で弊社のみです。

弊社の特徴として、「一本まるごと使いきる」というビジョンを掲げて取り組んでいます。丸太は建築材料に使えますが、例えば4mでも2500円ほどにしかなりません。そのうえ、形の悪いものや枝葉は全て山に捨てられてしまいます。そこで、丸太の木材価格を上げるのではなく、今まで山で捨てられてしまっていた枝葉や皮までを使い切る事で林業を盛り上げていこうと考えています。

今回、育林・素材生産を担当する吉田と、加工・工房管理を担当する関谷の二人と一緒に参加させていただきます。

吉田・関谷: よろしくお願いします。

図面では表せないものを、現場にある素材でつくっていく

  parkERs様と東京チェンソーズ様がパートナーとして取り組まれた実際の事例とともに、制作の流れや思いをお聞きしました。

自然素材を多く取り入れたparkERs新オフィス ※parkERs様ホームページより引用

児玉: 去年の11月に引っ越しをしたparkERsの新オフィスでは、檜原村の東京チェンソーズさんの木材をたくさん使用したことで、二酸化炭素の削減に貢献しているとして港区の認証(※)をいただきました。

みなとモデル二酸化炭素固定認証制度

港区で建築物等に使用された国産木材量に相当する二酸化炭素固定量を認証する制度。二酸化炭素固定量の増加と国内の森林整備の促進による二酸化炭素吸収量の増加を目指し、地球温暖化防止を図る。
>> みなと森と水ネットワーク会議 – みなとモデル二酸化炭素固定認証制度
>>> parkERsオフィスが「みなとモデル二酸化炭素固定認証制度」に認定されました

丸太を二つ重ねて机にしたり、チップの上にそのまま座ったり。
まさに公園のように、ミーティングやランチなどで自然と人が集まるエリア

片平: parkERsでは手足の感触や五感をとても大事にしています。現代では文明の利器が発達した半面、手足の感覚や記憶力は昔よりも衰えていると思います。例えば、山道を歩いているときはリラックスしているようですが、実は足の裏の感触を感じながら一番集中しているんですね。そこで、オフィスにもあえて不安定さを設けることで集中につながるのではないかと考え、設計に取り入れました。自然素材にこだわり、木の感触を感じながら仕事することで脳を活性化させることができると考えています。

また、普段から社内研修会を開催するなどして、施工や営業も含めたメンバー全体で素材を見る力を養っています。山や材木屋さんに立ち寄らせていただき、実際に木と触れ合ったり、お話を聞かせていただいたりすることで、木の魅力がどこにあるのか、どうすればそれを引き出せるかをアイデアとして自分の中にストックしていきます。クライアントとの打ち合わせでもその場で面白い素材を提案できると、興味を持っていただけることが多いです。

新オフィスの大テーブルの制作過程もまさにそうだったのですが、作るものが決まってから材を探すのではなく、魅力のある木材や石などの素材を自分の中にストックしておき、素材から発想することを大切にしています。

parkERs official note
>>>【木の素材感を生かした大テーブル】空間に合わせて素材を選ぶのではなく、素材を生かした空間を作る
>>>素材からクリエイティブな発想を養う〜“アクリル”の知られざる魅力とは?〜
>>>都市と自然のつながりを感じさせるサステナブルな展示。伊勢丹新宿店「Museum Cube」ができるまで

耐久性よりも質感を楽しむことを優先し、悪くなったら森に返してまた山から持ってくる。床に映る不均等で繊細な影がとても美しい。「この時は直径6センチ以上の太い枝はないかとお話をいただいて、作業道の近くにはなかったので山の奥に入って担いで出してきたことを覚えています」と、関谷さん

児玉: 図面では表せないものを、このような現場にある自然のもので作っていくことにワクワクしています。実際に組み立てるときは細かい調整が必要となるので、協力パートナーの会社の方と一緒に、私たち設計陣も立ち会いながら制作することも多々あります。

浅野: 自然物を使うと製作が大変なので、設計しても制作側に拒否されてしまうことがよくあると聞くのですが、parkERsのデザイナーさんは突破力がありますね。

にかく断らない。山の全てが在庫

青木: 林業会社の側も、このようなオーダーメイドの注文がきたときに、できない理由探しをしてしまうことがよくあると思います。私たちはとにかく断らないことを前提に考えます。山に生えている状態から在庫ですから、コミュニケーションをしっかりとって、まずはやってみるという姿勢を貫きます。

関谷: parkERsさんの案件では、曲がった枝をほしいとお話をいただいたこともありました。山で何枚かこのような写真を撮ってお送りしたところ、生きた木の写真が送られてくるなんてと大変驚かれました。そのときは最終的に施主様にも山に来ていただき、選んでいただきました。青木も申していた通り、山に生えている状態から私たちの在庫です。インフラを整備し、いつでも必要な時に必要なものを取れるようにしています。

浅野: こうした材は本来、林業では市場価値のない雑木とされているものですよね。

児玉: 無理難題をお願いしても、必ず実現に向けて動いてくださるのが東京チェンソーズさんだなと思っています。この時の枝は、自然が好きなご家族を想定したマンションのモデルルームに使用し、喜んでいただけました。

照明 自然の枝が複雑な影を作り出す
自然の枝を枠に入れることでアートに

浅野: 山に生えている状態から在庫ということですが、価格設定はどのように決めているのでしょうか。

青木: 東京チェンソーズでは樹皮、枝、根っこに近く木目が非常にきれいな「ねばり」など木の全部位を掲載した「一本まるごとカタログ」をつくっており、価格設定をしています。オンラインストアにも価格を載せているのでご覧になっていただければと思います。その価格をベースにし、オーダーメイドのものは個別に価格設定をしています。

東京チェンソーズオンラインストア

東京チェンソーズオンラインストア
>>>https://www.chainsaws-store.jp/

「一本まるごとカタログ」画像をクリックしてご覧いただけます

山で生きた木と出会い、魅力を都市に届ける

児玉: 東京チェーンソーズさんには、今度御神木をいただくんですよね。

吉田: はい。おととしの台風で倒れてしまった樹齢200年ほどの杉です。幹の部分は市場で販売し、根の部分を数十センチ輪切りにして乾燥させていたのですが、片平さんがいらっしゃったときにお見せしたところ、ぜひ使いたいとおっしゃっていただいて。

片平: 御神木は立っているうちは見て楽しむことしかできませんが、倒れてしまったことで、みんなで使える御神木に生まれ変わります。薄くスライスし何ピースかにカットしてから組み合わせて、みんなが集まれる大きなテーブルにしようと思い、今東京チェーンソーズさんに加工をお願いしているところです。

お客様にこの写真をお見せしたときは、圧倒されていただけました。半分は不安感もあったのかもしれませんが(笑)、本物の素材、無垢材を見ていただくとやはり魅了されていただけることが多いです。建材としての板を見るのと、森の木を見るのとでは感情が全然違う。今使ってるテーブルと森の木は一緒で、どこでどう生えていたか、どんな環境で生き育っていたのかを伝えていきたいです。経年変化に対しても、劣化と捉えることもできますが、木の歴史に思いを馳せ、木に愛着を持てば違う見え方をします。例えば木が割れてしまった時も、捨てるという選択肢だけでなく、そこに金接ぎなど新たなデザインをどう作っていくか、お客様と一緒に考えていけたほうが楽しいと思うんです。そこを提案していけるようになりたい。

  最後に、ゲストの皆様から一言。

関谷: 私は木材加工をしているので、木を切ってみないと分からない表情、普段から加工をしているからこそわかる表情を伝えていき、それを活用してくれる方が増えたらいいなと思っております。

児玉: 木材は数十年に一度取り換えるものだと思うのですが、もっと短いスパンで森の素材を都心に届ける提案を続けていきたいと考えています。山と都市が同じ東京だと知ることで、都市生活者に季節感など生活の中の気付きをもたらせたらいいなと思います

吉田: 素材から発想してデザインに落とし込んでいく、というお話に大変共感しました。素材屋さんは世の中にたくさんあるのでしょうが、そのなかでも私たちは林業をしており、毎日山に入って作業しています。そこで感じることをparkERsさんやparkERsさんのお客様に伝えていくことが自分たちの存在意義だと改めて感じました。それが一本まるごと事業を広めることにもつながると思います

片平: 木材や植物をもっと当たり前の存在に感じてほしいと思います。一般のお客様にもかみ砕いて楽しく学んでいただけるよう、私自身も専門的な知識が深いわけではないので皆さんのお話を伺いながら掘り下げていけたらなと思います。

青木: 私たちは素材屋さんであり、どうしても自社だけでは発想が乏しい面があります。parKERsさんのような異業種の方とお付き合いして学ばせていただき、いろんな人の発想で山の素材を生かしていけたらいいなと思います。山の素材を活かすことができれば、枝の皮を剥く作業などを地域のおじさんたちに手伝ってもらい、地域がどんどん盛り上がっていく。戦後植えられた木がきちんと使われ、適切な管理が行き届くようになり、森が豊かになっていく。そういった仕組みを作っていき、いろんな方の発想で森を活かしていければと思っています。今後ともよろしくお願いします。

ゲスト: ありがとうございました。

浅野: 本日はありがとうございました。


■ゲスト
・株式会社パーク・コーポレーション 空間デザイン事業部 parkERs(パーカーズ)
>>>URL:https://www.park-ers.com/

空間デザイナー / 片平麻衣子

大阪芸術大学デザイン学科を卒業後、店舗における企画、デザイン、設計、施工を学んだ経験を経て、視覚的にではなく「体感」として空間を感じて欲しいという想いからパーク・コーポレーションに入社。parkERsの空間デザイナーとして、自社店舗、マンションやオフィスなど数百件に及ぶ空間デザインを手がける。代表作「東京2020 オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた台東区の取り組み『江戸ルネサンス 伝統と文化が薫るおもてなし』」が第29回緑の環境プラン大賞「おもてなしの庭」大賞受賞。 「LAVA Internationalオフィス(2018)」他。

プランツコーディネーター / 児玉絵実

農学部を卒業後、切り花や造園、観葉植物、生産とあらゆる角度から植物に携わる経験を経て、現在室内から外構までグリーンに関する幅広い植栽デザインを担当。植物と人との関係を園芸療法士の立場からもご提案し、「人と植物が気持ちよく生活できる空間」をご提供するために、企画から施工までお客様にとってベストな植物選びを心がけています。

・株式会社 東京チェンソーズ
>>>URL:https://tokyo-chainsaws.jp

代表取締役 / 青木亮輔

大阪府此花区出身。東京農業大学林学科卒。1年間の会社勤めの後、「地下足袋を履いた仕事がしたい」「後継者不足の林業なら自分にも活躍の場があるのでは」と、林業の世界へ。内閣府規制改革推進会議農林WG専門委員。檜原村木材産業協同組合代表理事。檜原村林業研究グループ「やまびこ会」役員。(一社)TOKYOWOOD普及協会理事。ツリークライミング®ジャパン公認ファシリテーター。日本グッドトイ委員会公認おもちゃコンサルタント。東京未来ビジョン懇談会メンバー。1976年生まれ。

進行:株式会社森未来 代表取締役 / 浅野純平
※敬称略