森と建築を考える第五回開催レポート「プレカットと生産・流通」

2022年8月06日

東京(森未来セミナールーム)

8月6日(土)16時~                              

アトリエフルカワ一級建築士事務所/森未来共催「森と建築を考える」第五回セミナーを開催しました。

第五回のテーマは「プレカットと生産・流通」でした。

プレカットとは、木造住宅の木部工事において、施工前にあらかじめ部材のカットや接合部加工を施しておくことをいいます。大工職人がカンナやノミを使い、現場の手加工から生まれる建築ではなく、工場で機械加工された部材を現場で組み立てていく建築になります。こうして建築される方法を「プレカット工法」といい、今では木造住宅の90%以上がこの工法です。

今回のセミナーでは、このプレカットについて詳しく勉強させていただきました。

プレカット会社は基本的に川下、すなわち建築に近い領域になりますが、木材流通、素材調達など川中、川上にも跨って大規模に事業展開している会社もあります。

プレカット加工技術は当初、大工不足の対応策として開発されました。その後、さらに大工人数の減少に歯止めが効かず、2000年から2015年にかけて45%も減少しました。そんな中、対応策として開発されたプレカットは、住宅の工業化もあり、みるみるシェアを拡大していきます。

プレカットが拡大していくことで、ノミやカンナなど、かつて主流であった手刻み加工の現場は息を潜め、いまではその技術を見る機会すらなくなり始めています。手刻み加工は若手大工を育てる絶好の機会とされていましたが、その成長過程すら少なくなった現代では、若手大工の新規参入が困難になり、今後も減少の一途を辿るとされています。

また、セミナーでは大工の待遇についてもセミナーでは触れられました。

腕利きの大工の日当は概ね2万5千円で経費持ち。仮に200日働いたとすると年間500万円の収入になります。一方、年収600万円のサラリーマンの場合、会社の経費を含めると通常年収の2倍、すなわち、年収600万円のサラリーマンには給与も含め1200万円もの経費がかかるとされています。

このように福利厚生等の経費を考慮すると、サラリーマンと比較して金銭的な負担割合が大きい大工を、積極的に希望する人は増えることはないとのことでした。

最後に、プレカット業界の現状とその課題について言及されました。

プレカットのデータは各社披露することなく、”独自の技術”と銘を打って競合に太刀打ちします。料理店でいうところの秘伝のスパイスやタレといった、他店に真似できない優位性を武器に商売をしているといった具合です。

セミナーでは、このような閉鎖的な利益主義により、国内でBIM化やCDEXMAなどのプレカット設計情報の合理化が図れないことが、日本の課題であると指摘しました。

特に、プレカットが必須である非住宅木造建築の推進が図られる中では、この課題はより深刻度を増していく可能性があるとのことでした。

セミナーの様子

今回のセミナーでは、技術進歩によって伝統技術が淘汰されていく現状を知るきっかけとなるものでした。プレカット、手刻み、どちらが良いというわけでなく、継承させていきたい技術があるのであれば、その理由や方法について深く考えていく必要があると感じました。

次回、折返しとなる第六回のテーマは「木造とは1 〜伝統と現代〜」です。

木造を支えてきた伝統工法と呼ばれる伝統的な考え方について取り上げていきます。今回の内容も深く関係してきそうなテーマなので、ぜひ、紐付けて理解できるようにしたいです。