森と建築を考える第九回開催レポート「架構と設計」

2022年10月06日

東京(森未来セミナールーム)

10月6日(木)19時~

アトリエフルカワ一級建築士事務所/森未来共催「森と建築を一緒に考える」第九回セミナーを開催しました。

第九回のテーマは「架構と設計」でした。

架構とは建築物を構成する骨組みのことで、単に構造と表現することもあります。風雨や日差しといった外部環境から身を守り、そこでの活動を支える空間が建築物の本質である以上、活動領域に制限を持たせる屋根と、それを力学的に成立させる架構は建築物にとって非常に重要な要素といえます。

また、架構は屋根を成立させるという構法的な役割だけでなく、空間を構成する意匠的要素においても重要な役割を担います。たとえば大空間を大断面材の露しで表現した架構には”力強さ”、張弦梁の下弦材を露しに、上弦材は下地材で隠す表現をした架構には”軽やかさ”といった、その空間の性格が反映されるといっても過言ではありません。

今回は、そんな木造建築構造・空間意匠を考える上で非常に重要な要素となる架構について、具体的な設計図を例にしながら学べるセミナーとなりました。

第9回講義風景

今回のセミナーの幕開けは、「日本は木造建築の大先進国」という心躍る言葉からでした。東大寺を例に、日本では古くから木造でスパンを飛ばす建築技術があり、さらには15mの丸太が採れるにもかかわらず、そのスパンは6間、すなわち10.92mが限界であると当時の職人は経験的に知っていた可能性があるとのことでした。

他にも日本三名橋に数えられる山口県の錦帯橋もとりあげ、木造アーチ構造の詳しい解説などもあり、日本の伝統技術が誇らしくなるような内容でした。

一方で、古川さんは現代の木造非住宅設計について警鐘を鳴らしました。そこには日本の森林を理解しない上で木造非住宅を推進しようとする風潮、そして、構造上明らかに成立しないような設計が横行しているなど、少し耳が痛くなるような実態についてでした。

日本の急峻な山では丸太の搬出上4m材の方が都合がよく、6m材の搬出は困難であるケースが多いです。また、6m材は製品にするための製材、乾燥といった搬出条件以外の理由においても避けられる素材になっています。

講義資料より

そういった素材生産の状況を踏まえると、木造非住宅であってもできるだけ4m以内の材料で設計するという工夫が重要となってきます。また、JASの機械等級区分に準じた木材がどの程度供給できるのか、節有りなど化粧として避けられる木材をどのように活用していくのかといった図面上では分からない部分にまで気を配ることが森を考えた建築であるといえます。

さらに、木造非住宅での建築費用については設計士の腕次第とし、長尺物を極力抑えた設計をすれば予算に納まる可能性も高いとのことでした。そのためには、もちろん意匠だけでなく構造、木材素材生産についての理解が伴いますが、現段階ではそういった設計士の存在は稀であり、今後増やしていくことが重要だと締めくくりました。

今回のセミナーは、題目でもある「森と建築を一緒に考える」の本質に触れた内容であると感じました。次回、最終回のテーマは「銘木と役物」です。

初夏に始まった本セミナーも残り1回となり寂しい気持ちがフツフツと湧いている今日このごろ。肌寒くなってきましたが最後まで乗り切っていきましょう。