サステナブル

記事公開:2022.11.22

地域材を使う|補助金情報や活用事例、SDGsとの関係について解説

eTREE編集室

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地域材の活用を考える企業の方にとって、調達や価格面での不安もあるのではないでしょうか。環境保全や地域林業の活性化などのメリットは想像ができても、安定的に手に入る輸入木材からの転換には躊躇する方もいることでしょう。

今回はそういった不安も踏まえたうえで、地域材を使うことのメリットやSDGsとの関係について、補助金や製品化の事例も含めて解説します。

地域材とは

地域材とは、近い地域から産出された木材のことを言います。現在、国をあげて推進している地域材の利用は、地産地消をなぞらえて「地材地建」とも呼ばれ、地域林業の活性化やSDGs推進に期待が持たれています。

地域材のメリット

国産材や地域材への期待が高まる近年では、各自治体が補助金や助成金施策を積極的に講じるなど、利用が推奨されています。それでは事業者にとって、地域材を利用するメリットにはどんなことがあるのかみてみましょう。

補助金が交付される

国土交通省が実施している「地域型住宅グリーン化事業」では、地域材の使用を推奨している企業グループを選択して住宅を建築することで、補助金が支給されます。また現在、ロシアとウクライナの情勢の影響で、ロシアからの木材の輸入が滞っている状況があり、これを契機に国産材への転換を図る事業者に対する支援も追加されました。

さらに各自治体においても、地域材を使った木造住宅の建築や増改築に対して、補助金や助成金を通じて活用を推奨するところが増えています。

地域の活性化につながる

戦後、植林された木材は、用材としての伐期を迎えているにもかかわらず、その4割程度しか活用されていない状況があります。この理由の一つとしてあげられるのが、林業全体の衰退や高齢化、人材不足などです。また、森林所有者の森林に対する関心も薄れてきており、管理が適切に行われない、伐採後の植林を行わないといった事態も発生しています。

そんな中、2019年4月に制定された「森林経営管理制度」により、個人では管理しきれない山林を市町村主導で整備できる制度がスタートしました。地域材を活用することで林業に活気が戻り、ひいてはその波及効果として地域全体の活性化が期待されます。

参考:経済産業省/地域材の活用を通じたSDGsの推進

サステナブルである

林業の衰退により人工林の管理が滞ることは、山林の荒廃をもたらします。なぜなら健全な森林管理には、植林・間伐・伐採・活用を1サイクルとする循環が欠かせないからです。林業が活性化することは、持続的で健全な森林管理につながるのです。

また製材・加工する場所に近い地域で産出される木材を使用することで、木材の移動にかかる二酸化炭素排出量(ウッドマイレージ)の削減も可能となります。地域材の活用はさまざまな側面から、サステナブルな活動であると言えるでしょう。

地域材のデメリット

事業体にとっても、消費者にとっても、地球環境の面からもメリットの多い地域材の活用ですが、デメリットはあるのでしょうか。結論から言うと地域材そのものにデメリットはありませんが、安定供給の面での課題は否めません。

調達が大変

地域材の調達が大変な理由は、様々な要因が複合的に絡み合っていますが、以下の要因がよく指摘されます。

  • 川上から川下までの情報連携がされていない
  • ある一定品質の材料が大量に要求される

本来、地域材は外国産材と比較して、林業や丸太が身近にあり連携が取りやすく、情報伝達の距離が短いというメリットがあります。にもかかわらず、不自然なまでに地域材の活用が推進されているのは、そのメリットを活かせず、さらには外国産材に劣ってしまう実態があるからといえるでしょう。

そして、その実態のほとんどの原因は川上から川下の情報連携不足によるものです。どの寸法の材料がいつ、どのくらい必要で、どこにあるのかを川上から川下が共有しておけば、木材生産者はどの立木を伐採し、加工業者はどの寸法で製材・乾燥させ、建築士はその用意された材をどの部位に使うのかなど、効率的に地域材を使うことができます。

また、中大規模木造建築物になってくるとJAS材の調達が必須になってきます。JAS材とは日本農林規格が定める基準をクリアした「品質」と「信頼」が担保された木材になります。JAS材は、JAS認定工場から搬出された木材の調達が必要となっていますが、その工場の割合は全体の1割程度にすぎません(製材工場の場合)。そのため、そもそもJAS認定工場の割合も少なく、さらに地域の指定が入ると調達が非常に困難である状況です。

納期が不安定

納期が不安定というのも安定供給面の課題といえます。しかし、前述したとおり川上から川下の情報が共有されていれば、これらの課題は解決可能です。

地域材は短納期を非常に不得意としています。それは在庫をしていない寸法の材料である場合、伐採・搬出・製材・乾燥を経なければならず、その分の時間も伴うため、短納期に対応できないのです。

地域材の補助金情報のご紹介(2022年11月現在)

地域材は活用することでメリットが多いことはお分かりいただけましたでしょうか。ここからは各自治体の具体的な補助金情報や事例についてご紹介します。各自治体の補助金制度は、個人の住宅だけではなく事業体に向けたものもあります。

にぎわい施設で目立つ多摩産材推進事業

東京の多摩地域に存在し、5万ヘクタールにもなる森林は、今まさに伐期を迎えようとしています。この多摩産木材の活用を目的に、公益財団法人東京都農林水産振興財団が設立したのが、多摩産材推進事業です。補助対象経費の1/2以内(上限が5,000万円)を限度に補助金が支給されるもので、多摩産材をPRしやすい民間施設の建築を促進しています。

多摩地区のショッピングモールや駅舎、銀行などで多摩産材を使った建築物を見ることができます。

参考:にぎわい施設で目立つ多摩産材推進事業|公益財団法人東京都農林水産振興財団

天竜材の家百年住居る助成事業

静岡県浜松市では、浜松市内に自ら居住するための新築・増築をする際、森林認証を受けた地元産の天竜材を使用することを条件に、助成を受けられる制度があります。助成金は森林認証材の購入費用の一部で、認証を受けた木材に対しては上限30万円、coc認証を受けた工務店を選択することで追加20万円となっています。

森林認証と組み合わせることで、消費者にとって権威性が分かりやすく、信頼度の高い制度と言えるでしょう。

参考:天竜材の家百年住居る助成事業費補助金|浜松市

北見市地域材利用推進林業等振興対策事業

北海道北見市では、「北見市地域材利用推進林業等振興対策事業」を創設し、地域材の活用と林業・木材産業の振興、広大な森林の整備を進めています。それに伴い、北見市内に事業所を持ち、地域材の活用に積極的な企業や、地域材を用いた施設を建築する計画がある場合は、補助金を申請できます。

2022年6月の時点で令和4年度の募集の受け付けは終了になっていますが、申請期間以外の相談も可能になっているので、計画がある場合は問い合わせをするのが良いでしょう。

参考:北見市地域材利用推進林業等振興対策事業補助金による支援制度|北見市

いしかわの木を活かす民間施設普及拡大事業

石川県では「いしかわ森林環境税」を活用して、民間施設において、地域材を使用して建築する場合や木質化などの改築をする場合の経費を一部、助成しています。県産材が、使用量全体の50%以上を占めている木造建築や、木質化で目に見える部分の施工面積が30㎡以上になる改築などが条件で、補助金額は建物の面積などにより最大750万円です。

金沢港にある「金沢港クルーズターミナル」や金沢市にある「とんぼテラス」などで実例を見ることができます。

参考:いしかわの木を活かす民間施設普及拡大事業|石川県

地域材を活用した事例

国や各自治体などの行政主導で積極的な地域材活用を推進している一方で、企業でも地域材を活用した商品を開発し、実用化されている例もあります。ここからは地域材を使用して生産され、実際に商品化されている事例をご紹介しましょう。

耐震シェルター

愛媛県にある森松建設が開発し商品化している耐震シェルターは、部屋のひとつに補強工事を施すことで耐震性の高いシェルターとして使えるようにするものです。

南海トラフ巨大地震に対する備えとしてシェルターの需要も高くなる中で、県産材の活用と合わせて提案している点がポイントです。最短工事期間が1週間、一部屋70万円からと低価格・短期間で施工できるシェルターとして、一般家庭の寝室や幼稚園などの避難所としてのニーズにも対応しています。

参考:地域材を活用した新商品事例集|愛媛県

CLTパネル工法を採用した飲食店舗

地域材を使用して、耐久性の高い建材へと仕上げる方法として、CLTパネルを使った工法があります。CLTパネルとは、ひき板の方向が層ごとに直交するよう重ねて接着した大型のパネルのことです。他の製法のパネルよりも重量が軽いため地震の力を軽減でき、構造体と下地を兼用しているため工期短縮にもつながる点が特徴です。

平成29年3月に完成したKFC堺百舌鳥店は、全国で初めてCLTパネル工法を採用した飲食店の事例です。

参考:木材建築の可能性を拓くCLT工法

ボールペン

岐阜県に会社を構える株式会社F-STYLEが開発した持ち手が木製のボールペンは、地域材を活用した製品としては、最も消費者の目にふれやすく分かりやすい製品の事例といえるでしょう。岐阜県の家具で知られる銘木材を活用し、木の優しさやぬくもり、香りまでを感じることのできる製品に仕上がっています。

木材の特徴である経年変化を楽しめるのも特徴で、長く愛用することで自分だけのオリジナルな味わいに変化していきます。

参考:株式会社F-STYLE

地域材活用はSDGsの推進に繋がる

地域材の活用は、地域の林業の活性化や周辺産業の復活だけにとどまるものではありません。環境保護の観点からもさまざまなメリットがあげられます。

  • 移動時の二酸化炭素排出を抑制するエコマテリアルとしての側面
  • 都市の木質化による炭素の貯蔵庫としての役割
  • 林業の活性化により、森林の健全な管理が維持される
  • 里山の多様な生物環境が保護される

地域材の活用を進めることは、環境負荷低減と森林保全、そして地域の暮らしを守るという点で、SDGsの推進にも繋がるのです。

まとめ

今回は、地域材を使うことについてさまざまな観点から解説しました。地域材の活用は各自治体や国からの補助もあり、国をあげての取り組みの1つにもなっています。国内に豊富にある森林資源を活用することで、世界情勢の変化や他国の事情に影響されることなく、地産地消の実現にも寄与できます。環境保全やSDGsの推進にも繋がる地域材の活用は、事業体としての信頼性や安心感をアピールできるひとつの指標にもなるのではないでしょうか。

また、森未来では全国の木材事業者とネットワークをもっており、様々な産地の木材調達が可能です。また、eTREEでは補助金情報や業界情報、木材コーディネーターの事例集などを掲載しています。

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