森と建築を考える第七回開催レポート「木造とは2 ~軸組工法~」

2022年9月01日

東京(森未来セミナールーム)

9月1日(木)18時~

アトリエフルカワ一級建築士事務所/森未来共催「森と建築を一緒に考える」第七回セミナーを開催しました。

第七回のテーマは「木造とは2 ~軸組工法~」でした。

在来軸組工法とは。明治政府になった時、日本の伝統的な工法は古い、西洋に追いつくべき、と考えられました。大工の知恵が沢山詰まり、培った素晴らしい伝統工法は切り捨てられ、これからの日本建築として西洋的な考え方の在来軸組工法が作られました。

日本は地震が多いです。伝統工法の場合は建物自体が動いて倒壊を免れていました。現在の建築基準法は基礎を固く作り、建物をかためて作るルールになりました。ですが、実際のところ、改めて伝統工法も評価され始めています。

たとえば、伝統工法は力を伝える点が多く計算が複雑になり、20年前のパソコンでは構造解析が難しく、対応できませんでした。パソコンの能力が上がったことで、揺れた際にどの道に力が伝わったか、計算ができるようになってきています。

それでも今は在来軸組工法のルールに従わなくてはいけません。12分の1の以上の角度に変形したら、壊れたものとみなされます。伝統工法は12分の1以上変形しても倒壊しません。

壁と床の作り方が、在来軸組工法でどう変わってきたか見ていきましょう。

まずは在来軸組工法での壁を考えます。                            昔は胴縁を打ち、壁を作っていました。木材のサイズが揃っておらず、未乾燥のグリーン材だったからです。柱のサイズが揃っていないとフリクが生じるので、胴縁15mm厚の中で微調整をして垂直で平らな壁を作る、これが大工さんの技術でした。今は乾燥技術が進歩し、加工機械で寸法精度が担保されたので、胴縁が無くても平らな面ができ、石膏ボードを直貼りできるようになりました。

床では根太組から、根太レス工法になっています。厚みのあるベニアが一面に敷かれますので、作業効率も上がります。昔、根太の転ばしをしていたのは基礎と軸組の精度が低く、根太で調整しないと水平な床にならなかったからです。

ところで、胴縁・根太が無いことは、直貼りは太鼓の様な作りになり、音の反響の大きい家となってしまいます。胴縁・根太が無いのは、合理性だけを考え、人の住む空間としては、疑問の湧く作りになっているのが現状です。                                     胴縁・根太が無くなったのは工業化され管理された木材が現場に入りやすくなり、大工の手間が合理化されたからです。

また、リフォームでは骨組みがまっすぐとは限らず、胴縁と根太組で水平と垂直を作る技術が必要になります。これからは中古住宅活用の時代なので、胴縁と根太組の技術がある大工さんが貴重になります。

昔の木材の弱点は形態安定性が無かったことです。それを住む人達の空間にふさわしいように作ってくれたのが、大工さんでした。現在は乾燥技術も進歩しプレカットによる加工精度もあがったことで、木材の形態安定性が増し、大工さんの技術を磨く場が減っています。工場から運ばれた窓をはめ、プレカットを組み立て、直貼りをすれば、出来上がってしまう家になっています。

昔は、天然乾燥をしてきた人達は形態安定性が弱く、生産性の不利益となっていましたが、森と人が離れているこの関係を大工さんが繋ぎ止めてくれていました。現在では割れ・変形のない乾燥ができているプレカットがありますが、木材、森のことを振り返ることが逆に難しくなっているのではないでしょうか。木造建築は手間をかけない方向に偏っています。森と家を繋いでくれる大工さんの存在は重要です。

これからの木材を使っている住宅業界は、新築中心から中古リフォームに変わっていきます。木材供給側は構造材一本では無く羽目板や仕上げ材を作っていくことにシフトしていきます。地域の羽目板なども使え、中古市場に資産価値が出てきて、木材や森が動き始めます。木材を使ってもらえる市場として中古市場は確立されていくでしょう。しかし、水平と垂直に板が張れなかったら残念ですよね。その時に大工の技術が見直されるのです。

建築士法の改定により、設計した建物の書類を保管する期間が15年に変更となり、さらに建築士は構造図を保管することになりました。その保管図面にはプレカット図面もあり、図面には設計事務所では無く、建築士の名前が必ず明記され、建物に不備が出た際、保管図面を見て、建築士がすべての責任を負うことになります。

そして設計士は無垢材は強度が分からないため、集成材を使うことが多くなっています。集成材へのバイアスがかかることは、地域の木材の活用には繋がりません。設計士がいかに森を愛しているかが問われています。

これからの住宅産業を考え、どのような木を育てるべきか考えなくてはなりません。材はストックしていかなくてはいけません。そのためラミナ材にするフローを作れば、保管に便利になります。ですが本来は各地域に合ったフローを考えていくべきです。地域によって集成材の方が良いのか、製材がよいのかどうか、考えるのは設計士しかいません。

各地に足を運び、足で調べるしかありません。そこで役に立とうと奮闘しているのが、森未来です。(と言っていただけました)。                                   各地のアドバイザーシステムが立ち上がり始めており、森未来は適材適所をビジネスにしています。足で稼いで会い、深く話をすることで、信頼ができます。足で稼ぐことです。

次回、第八回のテーマは「木造とは3 ~非住宅とこれからの木造~」です。            木材建築は防耐火の規制も整備され、大規模なものが実現可能となっています。          住宅の枠を超えた木材活用としても期待されているこれからの木造建築について考えます。     また「木育」についても触れたいと思います。                         セミナー後はBBQを開催します!

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