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記事公開:2025.7.30

触れる、比べるー使い捨てない木材サンプル「森未来文庫」

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当社は、設計・デザイン業務における木材の比較検討や情報共有をスムーズにし、木材の特徴や背景への理解を深めるためのツールとして、文庫本型の木材サンプル集「森未来文庫」の提供をしております。

はじめに:従来の木材サンプルを取り巻く状況

設計、デザインの現場で木材を選定する際、私たちは主にウェブやカタログの写真・データと必要に応じて取り寄せる実物のカットサンプルを利用しております。

写真やデータは、多くの樹種を一覧で比較したり、遠隔地のものも含めて迅速に情報を得るのに便利です。しかし、画面や印刷物では、木材本来の持つ微妙な色合いの深み、光の当たり方で変わる光沢、そして何よりも直接的な手触りや温もり、実際の重さといった、空間の質感を左右する重要な感覚的要素を正確に捉えることは難しいです。

一方、実物のカットサンプルは、確かにその木ならではの色味、手触り、光沢、木目の表情といったリアルな情報をもたらしてくれます。しかし、これらにもいくつかの課題がありました。

  • 比較の難しさと情報不足
    プロジェクトごとに異なる形状やサイズで断片的に集められるため、体系的な比較がしにくいことがあります。また、サンプル片だけでは、その木が持つ本来のストーリーや価値、詳細な特性(例えば、特定の加工への適性など)までを理解するのは難しいです。
  • 管理の煩雑さと非効率性
    多数のプロジェクトで様々なカットサンプルを入手・保管するうちに、管理が煩雑になり、いざという時に必要なものが見つからない、といった経験はないでしょうか。また、その都度サンプルを手配する時間や手間も無視できません。
  • 持続可能性への配慮
    その場限りの利用で役割を終え、廃棄されてしまうサンプルも少なくありませんでした。そのポテンシャルを十分に発揮されないまま捨てられてしまうのは、資源を大切にしたいという想いとは異なる状況ではないでしょうか。

このように、従来の方法では、木材の持つ多面的な情報を効率よく、かつ深く理解し、またクライアントと共有するには限界があったかと思います。

『森未来文庫』制作ストーリー: 手のひらで森と未来を繋ぐ

建築やデザインの現場で使われる、木材サンプル。
プロジェクトに必要不可欠な一方、多くが一度きりの役割を終え、捨て去られていく現実がありました。木材が本来持つストーリーや価値を十分に伝えられないまま、使い捨てられてしまうのは、私たちの目指すべき未来とは異なります。

永く手元に置き、繰り返し触れてもらうことで、木への理解と愛着を深めてほしい、という想いを込めて開発したのが、文庫本型の木材サンプル集「森未来文庫」です。
まるで本のように木材の知識や価値を保管でき、デスクに置いても美しいデザイン。

この文庫が、創造力を刺激するとともに、長く大切に活用されることで、資源を無駄にしない工夫のひとつとなれば幸いです。

森未来文庫とは? – 触れる体験と情報が、手のひらに。

『森未来文庫』は、実際に「触れて、比べられる」ことを重視した、樹種の比較サンプルです。

本物の木材(素地)+ 集約された情報

厳選された樹種10種と加工処理6種のサンプルを用意しております(2025年7月現在)。

リアルな質感や木目を確認できるだけでなく、その木材の主な産地、特性、ヤング係数、気乾比重、収縮率、曲げ強度、硬さ、腐食耐久といった主要スペックが直接記載されています。これにより、手に取ったその場で、感覚的な情報と客観的なデータを照らし合わせることが可能です。

加工処理サンプルでは、例えば防腐・防蟻性能を高めたもの、リユース材の風合いを活かしたもの、難燃性を付与したものなど、現代の建築・デザインニーズに応える多様な技術に触れることができます。これらのサンプルにも、それぞれの処理方法や期待される効果、適した用途などの情報が付随されています。

・樹種10種
  ①スギ
  ②ヒノキ
  ③スプルース
  ④ウエスタンレッドシダー
  ⑤ケヤキ
  ⑥クリ
  ⑦ヤマザクラ
  ⑧ホワイトオーク
  ⑨タモ
  ⑩ブラックウォールナット

 ・加工処理6種
  ⑪AZN乾式注入処理材
  ⑫杉足場板
  ⑬もえんげんⓇ
  ⑭コシイ・スーパーサーモ
  ⑮きえすぎくん
  ⑯LINA WOOD

文庫本型デザイン

手に取りやすく、保管・参照しやすい形状です。知的な佇まいも持ち合わせています。
サイズは高さ148mm、幅105mm、奥行20mmとなっており、高さ・幅は文庫本と同サイズです。※多少の個体差あり

比較しやすい統一規格

それぞれの特徴を把握し、客観的な比較検討をサポートします。
実際の樹種・加工処理材で作成し、特徴・主要スペックなどを本体に記載しております。

例)樹種「スギ」

なぜ、「触れる+比較」サンプルが設計・デザインの初期段階を変えるのか?

森未来文庫がもたらす「触れる」体験と「その場で比較検討できる情報」は、特にプロジェクトの初期段階において大きなメリットをもたらします。

設計・選定業務の効率化

サンプル手配・管理の手間を軽減し、厳選されたセットで迷わせない提案が可能に。打ち合わせ前の準備時間を短縮し、「適切・適量」な選択肢からスムーズな意思決定をサポートします。

スムーズな初期コミュニケーション

クライアントに実際に触れてもらいながら、スペックも参考に「この木はこういう特徴があって…」と具体的に説明することで、初期段階のイメージ共有や方向性決定がスムーズに進みます。

効率的な知識習得

主要な樹種・加工法が厳選され、かつ重要な情報がサンプル本体に集約されているため、ポイントを押さえた知識習得が効率的に行えます。

森未来文庫の位置づけと活用シーン

『森未来文庫』は、設計・デザインの初期段階で「どのような素材を選ぶか」という重要な意思決定を、効率的かつ的確に行うための基盤を提供します。

また、活用シーンとしては、

  • 施主との初期打ち合わせ:質感と情報を同時に確認しながら、素材の方向性を共有。
  • デザイン検討:設計初期段階での素材感の比較検討、モックアップ作成の参考に。
  • 社内レビュー:チーム内でのイメージ共有や、木材知識向上のための教材として。
  • ショールーム・相談カウンター:来訪者への説明ツール、常設サンプルとして。
  • 研修資料:木材の基礎知識を学ぶための教材として。
  • インテリア:デザイン性や素材感を活かし、空間に自然の温もりを添えるアイテムとして。

 などが挙げられます。

まとめ

『森未来文庫』は、木材選定のスタートラインを明確にし、設計・デザインプロセスをより豊かに、確かなものにするためのツールです。そして、木という素材への理解を深め、長く大切に使ってもらうことで、資源を無駄にしない工夫のひとつとなれば幸いです。

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