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記事公開:2022.11.17

木材利用は森林破壊に繋がる?SDGsと森林の関係や達成に向けた企業、自治体の取り組みについて解説

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国際的な共通言語として浸透しているSDGs。

地球環境保全と持続可能な社会の実現に向け、化石資源から再生産可能資源への転換が喫緊の課題の一つとして挙げられるなか、再生産可能な森林資源である木材への期待は日々増すばかりです。

一方で、「木材利用は森林破壊に繋がる」といった国が進めている木材利用と反するような意見も散見されます。

実際はどうなのでしょうか。

そこで本記事では、

  • SDGsと森林や林業との関係性
  • SDGsの目標15「森の豊かさを守ろう」達成のために私達ができること
  • 国内の木材・森林関連企業や自治体のSDGs達成に向けた取り組み

をはじめ、木材利用と森林破壊などにも触れた内容になっています。

SDGsと森林の現状について詳しい知識をつけることで、世界情勢についても理解を深められることでしょう。

SDGsが掲げる「陸の豊かさを守ろう」の達成とは

地表の約3割が森林や草原、砂漠などの陸地です。我々人類は、陸地から食料や水などの生活に必要な資源やそこから生まれる仕事など多くのものを得ています。

陸の豊かさは、人類の生活の豊かさにも直結するということです。

しかし現在、天然資源の減少や生態系の崩壊などが起こり、天然資源の恩恵を受けられなくなることが示唆されています。そのため、SDGsでは目標の1つに「陸の豊かさを守ろう」を掲げており、陸域生態系の保護や回復、持続可能な森林の経営や砂漠化の対処を目標としています。

ターゲット内容
15.12020 年までに、国際協定の下での義務に則って、森林、湿地、山地及び乾燥地をはじめとする陸 域生態系と内陸淡水生態系及びそれらのサービスの保全、回復及び持続可能な利用を確保する。 
15.22020 年までに、あらゆる種類の森林の持続可能な経営の実施を促進し、森林減少を阻止し、劣化 した森林を回復し、世界全体で新規植林及び再植林を大幅に増加させる。 
15.32030 年までに、砂漠化に対処し、砂漠化、干ばつ及び洪水の影響を受けた土地などの劣化した土 地と土壌を回復し、土地劣化に荷担しない世界の達成に尽力する。 
15.42030 年までに持続可能な開発に不可欠な便益をもたらす山地生態系の能力を強化するため、生物 多様性を含む山地生態系の保全を確実に行う。 
15.5自然生息地の劣化を抑制し、生物多様性の損失を阻止し、2020 年までに絶滅危惧種を保護し、また絶滅防止するための緊急かつ意味のある対策を講じる。 
15.6国際合意に基づき、遺伝資源の利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分を推進するとともに、遺伝資源への適切なアクセスを推進する。 
15.7保護の対象となっている動植物種の密猟及び違法取引を撲滅するための緊急対策を講じるととも に、違法な野生生物製品の需要と供給の両面に対処する。
15.82020 年までに、外来種の侵入を防止するとともに、これらの種による陸域・海洋生態系への影響を大幅に減少させるための対策を導入し、さらに優先種の駆除または根絶を行う。
15.92020 年までに、生態系と生物多様性の価値を、国や地方の計画策定、開発プロセス及び貧困削減 のための戦略及び会計に組み込む。 
15.a生物多様性と生態系の保全と持続的な利用のために、あらゆる資金源からの資金の動員及び大幅な増額を行う。 
15.b保全や再植林を含む持続可能な森林経営を推進するため、あらゆるレベルのあらゆる供給源から、 持続可能な森林経営のための資金の調達と開発途上国への十分なインセンティブ付与のための相当 量の資源を動員する。 
15.c持続的な生計機会を追求するために地域コミュニティの能力向上を図る等、保護種の密猟及び違法 な取引に対処するための努力に対する世界的な支援を強化する。 
(引用:日本ユニセフ協会

参考:海の深さと広さ|日本海事広報協会

参考:海の深さと広さ|日本海事広報協会

SDGsと森林・林業・木材産業の関係性

普段私たちは、森林から得られる恩恵を受けて生活をしています。しかし、近年私たちの経済活動によって森林や生態系が脅かされています。ここからは、森林や林業、木材産業の現状やSDGsとの関係性について解説します。

世界の森林からみたSDGs

森林は地球の陸地面積の約3割を占めており、陸域の生物の約8割が生息していると言われています。

豊かな森林は生物の生息以外にも、酸素や土を作り、水を蓄えておく涵養機能もあり、地球上で生命維持活動をしていく我々にとっても欠かせないものです。

しかし、現在では農地への転用が主な理由となって、熱帯雨林から順に森林の減少や劣化が進んでいます。また、世界では先住民を含む16億人が森林で生計を立てています。

このような現状を前に、進行する森林減少の負の連鎖は、多くの人類の貧困や飢餓問題にまで発展するとされており、SDGsに則って森林を守ることは、間接的に複数の開発目標を達成することにもにも寄与するでしょう。

参考:持続可能な開発目標に貢献する森林・林業・木材産業|林野庁

日本の森林の現状

世界的に森林面積が減少するなか、日本の森林面積は過去半世紀にわたり横ばいであり、減少していません。加えて、伐採してはいないものの用材として活用できる木の量、「蓄積量」は天然林、人工林ともに年々増加し続けています。

しかし、一時、日本の山は窮地を迎えた時期がありました。

それが戦後です。

これは復興のため、破壊された家屋や建物を再建するのに大量の木材が必要となり、過度な伐採が進んだことによって山が荒廃していったのです。森林は、落葉や落木が雨水による土壌の侵食や流出を防いだり、根が土砂や岩石を固定し土砂崩壊を防いだりする機能があります。

荒廃した山は、その機能を失い土砂崩れや洪水被害といった形で私たちに襲いかかりました。そして、その対策を講じるために植林活動が盛んに行われるようになります。結果、その時に造林された針葉樹が現在伐期を迎え、積極的な木材利用が推進されるようになったのです。

SDGsと日本の森林・林業・木材産業の課題

日本国土の約7割は、天然林や人工林などの森林であり、国土面積に対する森林面積の割合は世界第16位です。

森林に関連するSDGsの達成は、森林の多面的機能が発揮できるよう適切に整備され、維持していくための土台が整っている必要があります。すなわち、計画的な間伐や再造林等の森林整備を行う事業体の健全経営や担い手の確保といったことも重要です。

しかし、近年では伐採後の再造林が行われていない箇所もあります。この原因としては、一時的なウッドショックがあったものの、慢性的に伐採やその後の育林コストが山元立木価格よりも高く、森林所有者の再造林意欲が低下していることが挙げられます。

そのため、木材・立木価格の適切化や木材需要拡大に向けた施策、再造林の働きかけなど川上から川下まで様々な課題が残されています。

参考:World Bank – Data Indicators令和元年森林・林業白書|林野庁

SDGsにおける木材利用は森林破壊ではない

「SDGsといいつつ、森林を伐採したり山を切り開きソーラーパネルや風車を立てていたりするのは森林破壊なのではないか」と考えている方もいるでしょう。

しかし、SDGsにおける木材利用と森林破壊は全くの別物です。

森林破壊とは、森林が成長するスピード以上の減少が起こるものであり、一方、SDGsにおける木材利用は、森林の状態を観察した上で適正な量や場所を伐採するものです。

そのため、同じ伐採でも森林の維持という観点から見れば、大きく違うことがわかります。

森林破壊の現状と原因

森林破壊は、主に熱帯地域を中心に進行しています。

とくに、2010年から2020年までの10年間で、ブラジルやインドネシア、ミャンマーなどで著しい森林面積の減少が起きています。

主に以下の5つが原因です。

  • 農園や牧場など土地利用への変換
  • 違法伐採
  • 知識不足のために起こる焼畑農業
  • 燃料用木材のための過剰な採取
  • 森林火災による焼失

開発途上国では、仕事を行うために木を切り倒して牧場を作ったり、知識不足のため間違えて草木を焼き払う焼畑農業を行ってしまい、土地の劣化が進んだりしています。

参考:世界で最も包括的な森林資源の分析 新たな形式で発表

日本の森林の現状

現在、日本の森林は十分な手入れが行き届いていない、森林整備が行き届いていない森林が多く見られるようになっています。

戦後、日本では復興のために木材の需要が高まり価格も高騰していました。

そのため、政府はそれまで日本に生息していた広葉樹の天然林を、比較的成長が早く、建築用材として価値の高いスギやヒノキなどの針葉樹へと置き換える対策を行います。そして、建築用材として需要の高まった針葉樹を増やそうと、人工林をさらに拡大していきます。

しかし、昭和30年代に多くの需要に答えるべく木材の輸入自由化が行われ、日本は海外から輸入された木材に勝つことができず、日本の林業は徐々に衰退していきました。

前述したとおり、現在では採算が取れないとして林業の担い手が不足しており、増えすぎた人工林は収穫時期にもかかわらず伐採されないまま、放置されています。

一方で、建築基準法の規制緩和によって構造部にも木材を使いやすくしたり、補助金等の施策によって国産材を積極的に使っていこうといった動きもあったりと、現況を変えていこうとする取り組みも増えています。

SDGsの目標15「陸の豊かさを守ろう」達成のために私達ができること

SDGsで掲げられている17の目標の一つ「陸の豊かさを守ろう」を達成するためには具体的に以下のような方法が挙げられます。

  • 植林活動に参加する
  • 紙製品や木製品などの消費量を減らす
  • 森林保全活動団体へ募金する

後世のためにできることからはじめていきましょう。

植林活動に参加する

森を豊かにする活動として思いつきやすいのが植林ではないでしょうか。

植林は、目的の違いによって大きく以下の2種類に分類されます。

  • 産業植林:木材やパルプ原料などを使用する製品の生産が目的
  • 環境植林:熱帯林の再生や砂漠の緑化、生物多様性の保全が目的

国内・海外での緑化活動を行う「地球緑化センター」は、東京都の三宅島において一泊二日で行われる植林ボランティアの募集を行っています。旅行感覚で楽しみながら植林活動を体験してみましょう。

参考:\参加者募集!/10月開催 三宅島に緑を!植林ボランティア◆東京都・三宅島

紙製品や木製品などの消費量を減らす

木製品はもちろんのこと、会社で使用するコピー用紙や本、家庭の必需品であるトイレットペーパーやティッシュも紙製品であり、原料は木の繊維です。

原料である木は7割以上が、南米やオーストラリアなどから輸入されています。

世界的な法規制や製紙関連業界の取り組みによって、SDGsに配慮した森林管理が進められているものの、紙の原料となる木を植えるための森林破壊は現在も続いています。

森林保全活動団体へ募金する

2012年に林野庁から発表されたデータによると、日本には森林づくり活動を自発的に行う団体は、3060団体いると発表されています。

同じ調査の中で、森林づくり活動における問題点を尋ねたところ、65%の団体が「資金調達」が難しいと答えました。

「森林を守りたいが仕事や学校で忙しく、具体的な対策を実行できない」と悩んでいる方は、森林保全活動団体に募金をして、間接的に森林を守ってみましょう。

参考:森林づくり活動についての実態調査|林野庁

国内の木材・森林関連企業や自治体のSDGs達成に向けた取り組み

日本では、事業を行う上で重要だとされる「三方よし」という考え方があります。

「売り手」「買い手」「世間」のどの方向からも良いと思われる事業を心がけなければならないという言葉です。SDGsは新しいものではありますが、三方よしの考え方がある日本とは親和性が高いと言われています。

ここからは、国内でSDGs達成に向けて取り組んでいる3つの企業と自治体を紹介します。

住友林業株式会社

住友林業では、SDGsが社会へ浸透し理解されることを重要視して活動しています。

そのため、住友林業グループでは外部講師を招き、社員へ向けてSDGsと事業との結びつきを学ぶワークショップや研修を行っています。結果、2020年には国内グループ社員のSDGsの認知度は87%となりました。

また、住友林業の事業発祥である新居浜市ではSDGs推進企業に登録され、市内小中学校の主任教師に対する研修会も行っています。住友林業は、企業内外問わず、SDGsが社会へ浸透することを目指して活動しています。

参考:SDGsへの貢献と重要課題|住友林業

株式会社やましたグリーン

株式会社やましたグリーンは、庭の手入れを行っているいわゆる庭師の会社です。「一本でも多くの植木を救いたい」という思いから、自宅の老朽化による建替や引越しなどで伐採しなければならなくなった木を預かる活動を行っています。

預かった植木は次の貰い手が現れるまで自社の畑で管理することで、無駄な伐採が起きないように日々奮闘中です。また「もらえる植物園」として誰でも手軽に植物をもらえる植物園を運営しており、植物と関わる人口の増加を目指しています。

参考:やましたグリーンのSDGsへの取り組み|株式会社やましたグリーン

株式会社ザイエンス

株式会社ザイエンスは、住宅資材や産業用資材の生産販売から白蟻防除工事まで 木材に関する深い知識と確かな技術を持っている会社です。違法伐採や無計画な伐採を防止するため、持続可能な森林から生産されたもののみを取り扱っています。

また、ザイエンス独自の技術を使った保存処理が行われているため、取り扱っている木材は高い耐久性です。耐用年数を伸ばすことで、長く住み続けられるまちづくりのサポートを行っています。

参考:SDGsへの取り組み|株式会社ザイエンス

岡山県真庭市

真庭市は、古くから林業や製造業が盛んな街ですが、近年では安価な外国材に押され、育てた木が木材として十分に出荷できていませんでした。

そんな中、真庭市では2005年に「真庭市バイオマス利活用計画」を打ち出し、バイオマスの発展による地域の活性化を目指しました。

バイオマスとは「再生可能な、生物由来の有機性資源で化石資源を除いたもの」と定義されたものです。具体的には、レストランでの生ゴミやコンビニ弁当の残飯、製材所で発生する端材などです。

真庭市は「バイオマス集積基地」を建設し、未利用の木材や木材加工時に発生する樹皮の活用を買い取っています。集まった端材や樹皮などは、ほぼ100%が燃料用や製紙用のチップに加工し、現在では木を使い切ることに成功しています。

参考:木を切ることも森林保全に!?“未来杜市”岡山県真庭市の森林資源を生かしたまちづくりとは|株式会社サニーサイドアップ

北海道下川町

下川町では、森林資源の活用として間伐材や木材の加工時に発生する端材を細かく砕き、チップにしたものを原料として町のボイラーを動かしています。現在では11基のボイラーがあり、役場や学校など30箇所に暖房と温水を届けています。

灯油と比較すると年間1900万円の節約となるため、町はボイラー買い替える際の積立と子育て支援費用として折半しています。

持続的な森作りが知られるようになった今では移住者も多く、現在の森林組合では職員35人のうち25人が町外の出身となっています。

参考:森と生きる|朝日新聞DIGITAL

鳥取県日南町

日南町では高齢化が著しく、町の衰退を防ぐために、持続可能なまちづくりが重要視されています。

平成31年には、日南町の主要産業である林業従事者を増やすべく全国の自治体として初めて町立林業アカデミーを開校しました。アカデミーの開校により即戦力の林業従事者の確保につながることで、林業と町の活性化のどちらもが期待されています。

また、令和3年4月には「道の駅SDGs行動宣言」を行い、SDGsの理念を発信する道の駅を目指しています。

参考:鳥取県日南町 第2期SDGs未来都市計画(2022~2024)

まとめ

森林の保護は、SDGsの目標である「陸の豊かさを守ろう」を達成するために切っても切り離せないほど重要です。

企業や自治体も独自の方法で森林や生態系の保護などに取り組んでいます。

私たちの日常の中にもSDGsを達成するために取り組めることがたくさんあります。

森の豊かさを守るために、植林活動に参加したり森林保全活動団体へ募金したりと自分にできるところからはじめていきましょう。

また、森未来ではSDGsに繋がるようなイベントや木材商品も多数取り扱っています。そういった情報や商品のお問い合わせは、ぜひ弊社サイトのeTREEまでお問い合わせください。

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