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剪定や間伐で発生する「伐採木」の処理に困っている方も多いのではないでしょうか。しかしその一方で、さまざまな活用法で無駄にしない取り組みも始まっています。持続的に木材調達を行う方法の一つとして注目されているからです。
そこで、今回は伐採木について、処分だけではない活用方法や、入手方法も紹介します。伐採木の処分をしたい方、活用に向けて入手したい方に向けても、参考になれば幸いです。
目次
伐採木とは、主伐、間伐、除伐などによって発生した木材のことを指します。それぞれの手法には、下記のような違いがあります。
主伐:木材生産の目的で行う伐採
間伐:成長に応じて樹木の一部を伐採し、森林内の密度を調整するために行われる伐採
除伐:育成している木の妨げとなる木や形の悪い木を取り除くために行う伐採
その他にも、一般家庭や果物農家、公園などで剪定の一環として伐採した木も伐採木と呼ばれます。
参考:間伐とは?|林野庁
林業においては主伐はもちろん木材として利用されますが、間伐で発生する木材も、そのままの形で足場丸太にしたり、家具や外構へと加工されたりと活用が進んでいます。
一方で、一般家庭で発生する伐採木は活用されず、廃棄処分されることもあります。では、活用予定のない伐採木はどのように処分されているのでしょうか。
一般的に家庭で発生する伐採木は、可燃ゴミとして自治体が収集することがほとんどです。太さと長さに一定の決まりを設け、ある程度の大きさの束にして収集所に出す、というのがルールとなっていることが多いでしょう。
ですが、最近になって資源物として収集する自治体も出てきています。資源として収集された伐採木は、機械で粉砕されチップになります。チップにすることで、発酵しやすく堆肥として活用できるだけでなく、燃料や家畜の敷き材としても利用が可能です。
リサイクル業者が引き取りをしている品目の中に、伐採木や木くずとよばれるものがあります。引き取った伐採木や木くずは、リサイクル業者によって粉砕器で細かいチップ状に加工し、公園などのマルチング材や堆肥の原料として再利用されています。
引き取る際に、内容物を細かく分類しているリサイクル業者が多く、内容によって引き取り料金が異なります。竹や笹、木の根などが混入すると処理料金が高くなるだけでなく、引き取り自体を受け付けない業者もあるので注意が必要です。
一般家庭で剪定などの際に出る伐採木は、樹種や大きさによっては、薪やDIY用の木材として需要があります。そのため、フリマアプリなどを利用して欲しい人に売却することも可能です。売却の際は、薪にしやすい大きさに加工したり、乾燥させたり、樹種を明記したりなどの工夫をして出品すると売却すると良いでしょう。
伐採木は原木買い取り、伐採などを行う業者に買い取ってもらえることがあります。業者に依頼するメリットは、1本からでも伐採や剪定も含めて行ってくれるところです。
特に、クヌギやコナラなどの樹種は薪としての再利用価値が高く、比較的高価で買い取っているケースが多いといえます。現場で伐採から買い取りまで依頼するよりも、伐採したものを業者の土場まで持ち込む方が、買い取り価格が高い傾向にあります。
伐採木は現在、以下のような形で活用されています。
それぞれの具体的な活用事例を紹介します。
ビールを始めとして飲料を販売するアサヒグループでは、広島県庄原市と三次市に「アサヒの森」という山林を保有しています。このアサヒの森から発生する間伐材は、地元の原木工場や製材工場を経て、建築資材として活用されています。
国立競技場やアサヒグループのオフィスの内装などにも使われている他、アサヒの森の中でフォレストハウスやバイオトイレなどとしても活用事例があります。
平成13年4月に施行された「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律」(いわゆる「グリーン購入法」)によって、特定調達品目として、公共事業分野でパーティクルボードやファイバーボードが指定されています。
パーティクルボードやファイバーボードは、製材所などで出る端材や間伐材などを木材チップにしたり、繊維状にほぐしたりした上で、接着剤を配合してボード状にした建築資材です。
接着剤を使用しているため、水や湿気に弱いというデメリットはあるものの、材質が均一になり反りや割れ、狂いが少なく、厚さや大きさを自由に加工できるメリットなどがあるため、屋内で使用される家具や屋根の下地材として活用されています。
形や大きさがそろわない伐採木の活用方法としてバイオマス燃料としての利用があります。端材や間伐材、樹皮などを粉砕して固めたものが木質ペレットと呼ばれる固形燃料です。
木質ペレットなどのバイオマス燃料が燃焼する時にはCO2が発生するものの、木が生育する中でCO2を吸収するため、大気中のCO2の増減が起きないといわれています。
2050年までにカーボンニュートラルを実現するという国の目標に向けて、木質ペレットの活用はますます注目されるでしょう。
山林でおこなわれる伐採は、もともと森林の適正な管理のために行われていました。下草が枯れて足元の見通しが良くなる冬に伐採を行うことで、陽の光が地面に入るようになり、新しい木が育つように管理します。そして伐採した木は、薪や木炭にして燃料として活用してきたのです。つまり、薪や木炭としての利用は、伐採木の活用方法としての原点といえます。
近年、適正な伐採が行われず大径化したコナラやミズナラなどで、カジノナガキクイムシがナラ菌を媒介して起こる「ナラ枯れ」被害が問題となっています。大径化する前に適正に伐採し薪や木炭として活用する、昔からの営みが問題解決のために必要なのかもしれません。
伐採木は、工作用の木材や文房具の材料としても活用されています。木材の大きさや種類によって、例えば太い丸太はベンチやいすに、細い丸太は道や階段を作るほか、輪切りにしてコースターを作ることもできます。また、枝を鉛筆にしたり、枝から出ている小枝を鼻に見立てた人形にしたりするのも子どもたちに人気の活用方法でしょう。
伐採木を木製ノベルティアイテムに加工・製作する企業もあります。ノベルティアイテムや販促品を伐採木にすることで、環境保護につながるだけでなく、企業の環境に対する姿勢もアピールできます。
伐採木を活用するには、まず入手するところから始める必要があります。剪定や間伐で発生する伐採木はどのように手に入れられるのでしょうか。
全国の森林組合では販売事業を行っているところがあります。販売事業では、建築用の木材だけでなく苗木や林業用の資材、しいたけ栽培のためのホダ木や木から生産される梱包用品など、木にまつわるさまざまな商品を取り扱っています。
薪用の木材は、地域によっては原木のまま販売されていますが、割って乾燥も終えた状態で販売されているところもあります。しいたけ栽培でも利用できるナラの木材は、他の樹種と比較して価格が高い傾向にあります。
果物を栽培する農家の方や山林所有者の方は、定期的な剪定や間伐で、伐採木を大量に処分することがあります。近所に住んでいて懇意にしているなどの場合は、交渉することで、無償でもらえる可能性もあるでしょう。
また処分する代わりに、無料配布をしている場合もあるかもしれません。ですが、農家や山林所有者から譲り受ける場合は、必ず所有者の許可が必要です。所有者の方が自分で活用する場合もあるため、無理な交渉はしないのがマナーといえるでしょう。
ダムや河川敷に樹木が生い茂ると、洪水時に流れをせき止めたり、大きな災害に結びついたりすることがあるため、自治体では定期的にダムや河川敷の周りに繁茂している樹木を伐採しています。
伐採した木は、河川敷や周辺の公園などで無償配布されることがあります。これは、伐採や剪定で発生した木を希望者に無償提供することでリサイクルを促進する取り組みのひとつです。
無償配布は大きな河川の周辺で行われることが多く、国土交通省や各自治体のホームページなどで無償配布について情報発信されます。過去には、宮城県や茨城県、長野県、新潟県、愛知県などでも配布していた実績があります。
適切な森林管理や、カーボンニュートラルの気運の高まりから、伐採木を活用しようとする動きが活発化しています。
これまで可燃ゴミとして処分していた自治体などでは、資源物として回収・粉砕して堆肥などに加工する取り組みを始めています。
公園や山林、河川敷、一般家庭でも定期的に剪定や間伐をすることで、適切な管理を行えるだけでなく、災害にも強い環境を整えることが可能です。
環境整備に必要な伐採で発生する伐採木を、薪やバイオマス燃料、DIY用木材などの幅広い用途で、活用していく必要があるといえるでしょう。
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