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2025.6.4
暖炉やストーブ、焚き火など、さまざまな用途がある薪。近年はアウトドアブームや薪ストーブの普及により、薪の需要が高まりつつあります。
本記事では、薪に適した木や具体的な作り方といった、薪の基礎知識に加え、国内の薪生産現場や消費者の視点から、薪を取り巻く課題についても解説します。
目次
薪とは、伐採した木や枝から作る固形燃料のことで、木質燃料の一種です。主に広葉樹や針葉樹の木材が使われます。広葉樹は密度が高く、火持ちが良い一方、針葉樹は密度が低いため、早く燃え尽きる傾向が特徴です。
薪の使い道はさまざまで、暖炉やストーブといった暖房、焚き火、調理のほか、蒸気機関の熱源や窯業など、一部で工業的な用途にも利用されています。アウトドアシーンでは、キャンプやバーベキューの燃料としても重宝されます。
木材の中には、薪に適している木と適していない木があります。ここでは、薪に適している木の特徴と具体的な樹種について解説していきます。
薪に適した木の特徴として最も重視されるのは、十分に乾燥していることです。伐採直後の生木には約50%の水分が含まれており、薪として使用するには、水分含有量を20%以下まで乾燥させることが理想とされています。
燃焼時、薪に含まれる水分は熱によって蒸発します。そのため、乾燥が不十分な薪は効率よく燃えず、暖まりにくくなるだけでなく、燃やすと「クレオソート」と呼ばれる煤(すす)が発生しやすくなり、火災の原因にもなりかねません。
薪としてよく使われるのは、広葉樹の木材です。中でも、どんぐりの木の代表格であるコナラは、堅く比重が高い性質を持ち、薪炭材として広く利用されています。このほか、ミズナラやカシ、ケヤキといった樹種は火持ちが良く、優れた薪として重宝されています。
ここでは、薪に適していない木の特徴と具体的な樹種をご紹介します。
前述のとおり、どのような樹種でも、水分を多く含み、十分に乾燥していない状態の木材は薪に適していません。生木から薪を作る場合は、最低でも半年以上、可能であれば1年以上は乾燥させる必要があります。
また、塩分を含む木や腐敗が進んだ状態の木も燃焼効率が悪いため、薪としては不向きです。
樹木の中には、薪や焚き火で絶対に燃やしてはいけない代表的な樹種が2つあります。
一つ目は、園芸用の木としてよく知られる「キョウチクトウ(夾竹桃)」です。ここの木には「オレアンドリン」という強い毒素が含まれており、燃やすと有毒ガスが発生します。キョウチクトウの毒は、中毒症状がすぐに現れるため、特に注意が必要です。
二つ目は、キャンプ場などでも見かけることがある「ヤマウルシ」です。ヤマウルシには「ウルシオール」という有毒物質が含まれており、燃やすことでウルシオールを含んだ煙が発生します。この煙を吸い込むと、アレルギー反応によって呼吸困難を引き起こす危険性があります。
は既製品を入手するほか、自分で作ることも可能です。ここでは、具体的な薪の作り方について、次の4つの工程をご紹介します。
まずは薪に適した原木を用意します。原木は、森林業者や森林組合から有料で入手することが可能です。原木の状態は、サイズが大きく重量もあるため、事前に輸送手段や費用をしっかり確認しておくことが大切です。
入手した原木は、枝を切り落とし、幹を一定の長さに切断する「玉切り」と呼ばれる作業を行います。玉切りには、一般的にチェーンソーやのこぎりを使用します。
玉切りでは、丸太の長さをできるだけ揃え、切り口が直角になるよう作業することがおすすめです。また、怪我のリスクを避けるためにも、玉切りは必ず平らな場所で行うようにしましょう。
玉切りした丸太は、なるべく早めに「薪割り」を行うことがおすすめです。丸太の状態で長期間放置すると、木が硬くなって割れにくくなるだけでなく、カビや腐食が進む原因にもなりかねません。
薪割りに使う道具としては、斧のほか、油圧を利用したエンジン式や電動式の薪割り機などもあります。
「乾燥」は、薪作りにおいて最も重要な工程です。薪の含水率を下げるためには、日当たりが良く風通しの良い場所で、しっかりと乾燥させることが大切です。薪に風が直接あたるように、できるだけ壁を作らず、地面からの湿気を防ぐために、保存場所の下部には空間を設けておくと良いでしょう。
薪に適した条件下での乾燥期間の目安は、針葉樹でおよそ3か月から半年、広葉樹では半年から1年ほどが一般的です。
日本国内における薪の主な生産地には、長野県、北海道、鹿児島県などがあります。これまで薪の生産量は、化石燃料の普及に伴って長期的に減少してきました。
しかし近年では、キャンプなどのアウトドアブームに加え、薪ストーブの販売台数の増加や、ピザ窯・パン窯用での利用といった需要の高まりを背景に、薪の生産量は増加傾向で推移しています。
2022年の生産量は約92,000層積立方メートル(㎥)で、2012年と比較すると約1.5倍に増加しました。なお、薪の生産量の単位である「1層積㎥」は、約0.625㎥に相当します。
参考:令和3年度広葉樹を活用した成長産業化支援対策(特用林産物(薪)に関する情報の収集・分析・提供)|日本特用林産振興会
近年、再び需要が高まりつつある薪ですが、生産現場だけでなく、消費者サイドにもさまざまな課題があるのが現状です。ここでは、次の2つの視点での課題を解説します。
薪生産現場を取り巻く主な課題は、労働者の不足と高齢化です。
そもそも現在の地方都市や山村では、地域産業の衰退により、求人自体が少なくなっています。さらに薪の生産現場では、作業が危険で労力も大きいにもかかわらず、収入がそれに見合わないという現状があります。また、地域の林業経験者の高齢化に伴い、技能の継承が難しくなっていることも課題です。こうした要因が重なることで、生産現場では複合的な問題が生じています。
加えて、薪を単体で生産することの難しさや、物流コストの高さといった構造的な問題もあり、近年の薪の需要の高まる一方で、生産現場では多くの課題を抱えているのが現状です。
アウトドアブームや薪ストーブの普及により、薪の利用は消費者の間で広がりつつありますが、利用者側の課題も少なくありません。
特に都市部の住宅地における薪ストーブの使用では、煙や臭いが原因で、近隣住民とのトラブルに発展するケースも報告されています。また、火の扱いに関する知識が十分でないユーザーも多く、十分に火が起きていない状態で薪を継ぎ足すことで、過剰な煙が発生することもあります。
そのため、薪ストーブの正しい使用方法だけでなく、火の扱いに関するユーザーへの教育も、今後の大きな課題と言えるでしょう。
木質燃料の一種である薪は、暖炉やストーブ、焚き火や調理など、さまざまなシーンで使用されます。広葉樹や針葉樹を問わず、薪に適した樹種は多くありますが、十分に乾燥した状態の薪を使用することが最も大切です。
近年アウトドアブームなどを背景に、需要が高まりつつある薪ですが、今後のさらなる普及に向けては、生産現場だけでなく消費者側を取り巻く課題の解決が不可欠となるでしょう。
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