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2025.6.10
2025年4月より施行される建築基準法の改正において、「4号特例」の縮小が行われます。
4号特例とは、一般的な木造住宅における建築確認の審査を一部省略する制度のことです。
今回の縮小の背景には、省エネ基準適合の義務化などがあります。
それでは、具体的にどのような点が変更されるのでしょうか。本記事では、4号特例の縮小による具体的な変更内容や各方面への影響について詳しく解説します。
目次
「4号特例」とは、建築基準法第6条の4に基づく審査省略制度のことです。
建築確認の対象となる木造住宅等の小規模建築物(建築基準法第6条第1項第4号に該当する建築物)において、建築士が設計を行う場合は、構造関係規定等の審査を省略することができます。
「建築確認」とは、建築主が建築物を建てる前に、その建物が建築基準法や各市町村の条例などに適合しているかどうかを確認する手続きのことです。
参考:2025年4月(予定)から4号特例が変わります|国土交通省
現行の建築基準法では、建築物の規模や構造などによって1号〜4号に分類されています。4号特例の対象となる「4号建築物」とは、前述の建築基準法第6条第1項第4号において、以下の通りです。
すなわち、現行の基準では、一般的な2階建て以下の木造住宅のほとんどが4号特例の対象となります。
参考:建築確認・検査の対象となる建築物の規模等の見直し|国土交通省
4号特例は1983年に導入されました。
当時は経済政策の一環として新築住宅の着工が積極的に推進されており、建築行政の迅速化と小規模事業者の手続き負担の軽減を目的とした制度でした。
新築住宅の着工数が急増する中、審査を担当する人員が不足していたため、建築確認審査を省略することで、大幅な効率化が図られた経緯があります。
審査が省略されるからといって、建築物に必要な耐震性や安全性を軽視してよいわけではありません。
4号特例はあくまで、建築士が構造規定などを適切に計算・設計することを前提に、建築確認の審査を省略できる制度です。
2025年4月施行の改正建築基準法により、これまでの4号特例が見直され、木造2階建て住宅などでも構造の審査が必須となります。
ここでは、4号特例縮小の主な背景について、下記の2つを紹介します。
4号特例縮小の主な理由は、2022年6月に公布された『脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律』により、住宅を含むすべての建築物が原則として、省エネ基準に適合することが義務付けられたためです。
現行の4号特例では、多くの住宅が建築確認を免除されているため、省エネ基準への適合を確認できません。
今回の義務化に伴い、特例の対象範囲を見直す必要が生じたことが背景にあります。
参考:2025年4月(予定)から4号特例が変わります|国土交通省
断熱性能の向上や太陽光発電設備の設置など、省エネ性能を高めるにつれて、建築物の重量は増す傾向があります。
しかし、建築物の重量化は、地震や台風などの自然災害時に倒壊のリスクを高める要因にもなります。
こうした住宅の重量化に対応できる構造を確保するため、安全性を確実に担保する審査プロセスが求められます。建築物が重量化しても、木造住宅を安心して取得できるよう、4号特例の見直しが行われることになりました。
今回の4号特例の縮小による変更内容は、主に3つあります。ここでは次の3つの内容について解説します。
建築基準法の改正により、2025年4月より、建築物の分類が変わります。
4号特例の対象であった4号建築物は廃止となり、「新2号建築物」と「新3号建築物」に分類されます。
改正後の新2号建築物、新3号建築物の定義は、以下の通りです。
参考:2025年4月(予定)から4号特例が変わります|国土交通省
4号特例の縮小に伴い、「建築確認・審査」および「審査省略制度」の適用範囲が変更されます。
改正後、第2号建築物に該当する建物は、建築(新築・増築・改築・移転)に加え、大規模な修繕や模様替えを行う場合には、全ての地域で建築確認・検査が必要となります。
また、審査省略制度の対象外となります。
一方、第3号建築物に該当する建物は、都市計画区域等内に建築する場合に限り、建築確認と検査が必要です。審査省略制度については、引き続き適用されます。
新2号建築物は、建築基準法令のすべての規定が審査・検査の対象となるため、建築確認・検査において、構造関係規定なども審査・検査の対象となります。
そのため、確認申請時には、確認申請書・図書に加え、構造関係規定および省エネ関連の図書の提出が新たに必要となります。
一方、新3号建築物については、現行の4号建築物と同様に、一部の図書の省略が継続されます。
今回の4号特例の縮小によって、どのような影響が考えられるでしょうか。ここでは、ハウスメーカーやリフォーム業者のほか、施主への影響について、次の4つの事例を解説します。
4号特例の縮小により、多くの木造住宅で建築確認審査に伴う業務の増加が予想されます。構造計算に加え、省エネ関連の計算も必要となるため、設計者の負担が増えると考えられるでしょう。
また、今回の改正に伴い、建築確認申請手数料の引き上げが予定されています。
さらに、省エネ基準適合の義務化により、建築物エネルギー消費性能適合性判定の手数料が新たに設定されるため、設計費や建築費の上昇は避けられない見込みです。
4号特例の縮小により、提出すべき図書の作成にかかる手間が増え、審査項目の追加によって工期がこれまでより長くなる可能性があります。
さらに、これまで「7日以内」だった確認審査の法定審査期間が、新2号建築物に該当する場合、「35日以内」に延長されます。
実際に審査にかかる期間は、審査機関の混雑状況によって異なりますが、各自治体は工事の着手までに十分な時間的余裕をもって申請するよう呼びかけているため、注意が必要です。
参考:2025年4月から4号特例が変わります(建築基準法等の改正)|長崎県
審査項目の増加や提出図書の作成に伴い、人件費の増加が見込まれます。
さらに、新たな規定に適合するための追加工事や必要な建築資材の増加が見込まれるため、住宅価格の上昇は避けられない見通しです。
4号特例の縮小には、デメリットだけでなくメリットもあります。
施主にとっては、構造や耐震性能の向上により、住宅の安全性が高まることが期待できます。
これまで省略されていた確認申請時の審査が実施されることで、住宅の品質が確保されるため、長期的には安心して住める家づくりにつながると言えるでしょう。
今回は、2025年4月から施行される4号特例の縮小について詳しく解説してきました。
4号特例の縮小により、住宅の省エネ化や安全性の向上が期待される一方で、コストの上昇や設計者の負担増といった影響も見込まれます。
ハウスメーカーやリフォーム業者に加え、2025年4月以降に住宅の新築や改修を検討している施主は、変更内容を正しく理解し、余裕をもったスケジュールで計画を進めることが重要です。
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