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2025.6.12
日本では古くから、竹は生活用品や建築資材、工芸品などに幅広く利用されてきました。
日本人にとって身近な存在である竹ですが、近年では消費量の減少に伴い、適切な管理が行き届かない放置竹林が増加し、自然環境や社会への悪影響が深刻化しています。
本記事では、日本の竹林が直面する現状を解説するとともに、放置竹林の有効活用に取り組むビジネス事例を紹介します。
目次
竹(タケ)は、イネ科タケ亜科に属する多年生植物で、草や木とも異なる生態を持っています。
竹は地下茎によって繁殖し、毎年地下茎の節にある芽からタケノコが発生します。他の植物と比べても、成長が非常に早いことが特徴です。タケノコは発生からわずか半年ほどで立派な若竹に育ちます。
竹の構造において、樹木の幹に相当する部分は「稈(かん)」と呼ばれ、節があり内部は空洞です。
また、竹の成長において重要な役割を果たす地下茎は、横にどんどん伸びて、地中に張り巡らされます。1年で最大5メートル伸びた記録もあるほどで、竹の繁殖力の高さを物語っています。
日本に生育するタケ亜科の植物は、約130種類ほどに分類されます。
ここでは、日本で見られる代表的な種について、下記3種類を紹介します。
マダケは古くから日本に自生していたと考えられている竹の一種で、稈は高さ20メートル、直径15センチにも達する大型種です。節の環(わ)は二重で、モウソウチクやハチクと比べて、葉が大きいことが特徴です。
マダケの稈は曲げや弾力性に優れているため、竹細工や伝統工芸品の素材、さらには建築材料など、さまざまな用途で活用されています。
モウソウチクは中国原産の竹で、日本には江戸時代に伝わったと考えられています。国内で最も大きな竹であり、稈の高さは20メートル、直径は20センチに達します。節の環は一重で、材質は硬く肉厚なのが特徴です。
花器や細工物の一部に使われるほか、春に採れるタケノコは生鮮食品としても重宝されています。
ハチクはマダケと同様に、日本に古くから自生していたと考えられています。
稈は高さ20メートル、直径15センチに達し、耐寒性があることが特徴です。節の環は二重で、形態はマダケとよく似ていますが、成熟すると表皮全体が白っぽく見える点が異なります。
材質は柔らかく、細く割りやすいため、茶せんや提灯、簾(すだれ)などに活用されています。
2022年3月末現在、日本の森林面積は約2,500万ヘクタールで、国土の約3分の2を占めます。そのうち竹林の面積は約17.5万ヘクタールで、森林全体の約0.7%にあたります。
2012年には約16万ヘクタールであり、この10年ほどで竹林面積は緩やかに増加傾向にあると言えるでしょう。国内の竹林は、主に九州や中国地方を中心とした西日本に多く分布しています。
日本の竹林は、竹かごや造園・建築資材、さらには食用のタケノコの生産として利用され、人の手によって長く維持・管理されてきました。
しかし、昭和40年代から50年代にかけて、竹材やタケノコの輸入量の増加、プラスチック製品の普及などの影響を受け、国内の竹林の利用機会は減少し、次第に「放置竹林」が増えていきました。
現在もきちんと管理されている竹林はありますが、放置竹林の増加によって、繁殖した竹が周りの森林に侵入している様子が各地で見られるようになっています。
竹は繁殖力や生命力が非常に強い植物です。放置された竹林によって引き起こされる荒廃や拡大は「竹害(ちくがい)」と呼ばれ、自然環境や社会にさまざまな悪影響を及ぼしています。
ここでは、放置竹林がもたらす、下記3つの影響について解説します。
放置された竹林が山や森林に侵食することで、動植物の生態系にも悪影響を及ぼします。
竹は上へと高く伸びる性質があり、林床に十分な光が届かなくなるため、森林に成育する植物の成長が阻害されてしまいます。さらに、竹の地下茎が広範囲に広がることで、樹木の根を圧迫し、スギやヒノキなどが枯死する原因にもなりかねません。
通常、山や森林では、広葉樹などの樹木が根を深く張り、地下に水を蓄えることで地盤をしっかりと支えています。
一方、竹は地表から30センチほどの浅い場所に地下茎を張り巡らせるため、竹林の侵食によって山の地盤が弱まるおそれがあります。また、竹は自らに水を蓄える性質があるため、山の保水力の低下にもつながりかねません。
そのため、豪雨などで土壌が緩んだ際には、斜面崩壊や土砂災害を引き起こす危険性があります。
放置された竹林が田畑に隣接している場合、竹の地下茎が侵入し、農作物の栽培を妨げる原因になります。
さらに、人の手が入らない放置竹林は、シカやイノシシといった野生動物の住処となりやすく、近隣の田畑を荒らされる獣害も少なくありません。
また、竹が住宅地に侵入することで、倒れた竹が車の進路を塞いだり、住宅に被害を及ぼしたりするほか、地域全体の景観を損ねるおそれもあります。
荒れた竹林をそのままにしておくと、分布の拡大がさらに進行します。日本各地で放置竹林が問題となる中、自治体レベルで対策に取り組む地域も出てくるようになりました。
ここでは、放置竹林に対する主な対策として、下記3つの方法を解説します。
竹林は、竹を伐採した後にも多くの新竹が次々と生えてきます。そのため、最も一般的な対策は、継続的な伐採の実施です。
一般的な人工林で行われる「刈払い」と同様に、竹林でも新竹を刈り取る作業を行います。ただし、竹は地上部だけを刈り取るだけでは地下茎が残るため、翌年には再び竹が生えてきます。
実際には刈払いを年に2回、7年間継続したケースでは、ほぼすべての竹を駆除することができたという報告もありました。このように、竹は繰り返し刈ることで、徐々に弱らせることが可能です。
林野庁のほか、自治体によっては竹林の伐採や整備に活用できる補助金制度を設けている場合もあるため、一度確認してみるとよいでしょう。
伐採に加えて、除草剤を活用した駆除方法もあります。竹を枯死させる除草剤としては、グリホサート系除草剤と塩素酸系除草剤が登録されています。
除草剤の使用方法は、竹稈、または切り株1本ずつに除草剤を注入する方法と、竹林の土壌に散布する方法の2種類です。
ただし、除草剤を使用する際は、周辺環境への悪影響が懸念されるため、正しい知識と使い方を十分に確認することが重要です。
そのほかの方法として、地中に遮蔽物を埋設し、竹の地下茎の侵入を防ぐ手段があります。
遮蔽物には、コンクリート板やトタン、ポリカ波板、農業用の畦板などが利用可能です。埋設の深さは50センチほどで効果があるとされていますが、現地の状況に応じて、使用する資材や規格を選ぶことが望ましいでしょう。
竹の地下茎の先端は尖っており、わずかな隙間があれば侵入してしまいます。そのため、遮蔽物の継ぎ目や底辺部は、しっかりと密着させる必要があります。ただし、遮蔽物の設置だけで侵入を完全に防ぐことは難しいため、施工後も定期的な見回りや刈払いなどの管理が欠かせません。
深刻化する放置竹林を資源として活用するため、企業によってさまざまな取り組みが行われています。ここでは、放置竹林を活用した特徴的なビジネス事例について、下記3つをご紹介します。
LOCAL BAMBOO株式会社(宮崎県延岡市)は、地元・延岡市の放置竹林問題の解決に向けて、市内に自生するモウソウチクを活用した、国産100%の「延岡メンマ」を販売しています。地域の農家から幼竹を買い取り、製造・加工は延岡市内の事業者に委託するなど、地域と連携した取り組みが特徴です。
また、「延岡の山林を救うメンマ」というメッセージ性を込めて、パスタの具材やトースト、アイスクリームに添えるといった新たな食べ方も提案。ANAの国際線ファーストクラスの機内食にも採用されるなど、話題性と実績を兼ね備えたヒット商品となりました。
大和フロンティア株式会社(宮崎県都城市)は、深刻化する放置竹林の有効活用と飼料自給率の向上を目指し、竹を飼料・肥料として再生利用する次世代飼肥料「笹サイレージ」を開発しました。日本初の取り組みとして、牛や豚への飼料利用に注目が集まっています。
笹サイレージは、伐採した竹を粉砕してパウダー状にし、そこへ微量の糖蜜と乳酸菌を加え、加水して製造。牛や豚に与えることで、従来の飼料と比べても、旨味成分や肉質の向上が期待されるほか、農業用の有機肥料としても活用されています。
中越パルプ工業株式会社(東京都千代田区、富山県高岡市)は、日本で唯一、国産の竹100%を原料とした「竹紙」を生産・販売しています。日本でも最大の竹林面積を誇る鹿児島県に工場を持つ同社は、1998年より国産竹の有効活用に取り組み始めました。
竹紙は、ノートや封筒、カレンダー、紙袋など、幅広い用途に活用されています。印刷の際は独特の風合いが美しく、紙自体にコシがあるため、書き味も抜群です。
日本人にとって身近にある竹林ですが、繁殖力が非常に強い植物のため、適切な管理が欠かせません。放置竹林の増加は、動植物の生態系にとどまらず、私たちの生活や農業にも悪影響をおよぼす恐れがあります。
近年では、継続的な伐採といった対策に加え、放置竹林を新たな資源として活用する取り組みも活発になっており、持続可能な竹林の在り方が注目されています。
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