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2025.6.13
日本は世界有数の森林大国であり、日本人は古代から森と共に暮らしてきました。
長い歴史の中で森林を伐採し、木材を利用してきましたが、全国的な山林の荒廃をきっかけに、次第に森林を保護・育成する再生可能な利用方法である「育成林業」が広まっていきました。
本記事では、日本における育成林業の歴史を振り返るとともに、今後の持続可能な森林と林業の在り方について解説します。
目次
「育成林業」とは、簡単に言えば、植林して育てた木を収穫する林業のことを指します。
これに対し、人工的に造林せず、天然林を伐採して木材を得る林業は「採取林業」と呼ばれることがあります。
育成林業の大きな特徴は、資源の持続性を考慮しながら森林を管理し、次世代へと引き継ぐ持続可能な森林を育てることにあります。
日本は、国土の約7割を森林が占める「森林大国」です。国土面積に対する森林の割合を示す「森林率」は、世界トップクラスを誇ります。
日本の森林は、その成り立ちによって大きく「人工林(育成林)」と「天然林」の2種類に分類されます。
人工林は、日本の森林面積の約4割を占め、主に木材生産を目的として、人の手で種をまいたり苗木を植えたりして育てられた森林です。
間伐などの手入れ(育成作業)が行われるため、「育成林」とも呼ばれます。
日本の人工林のほとんどは針葉樹林です。
一方天然林は、日本の森林の約半分を占め、自然の力によって形成された森林です。
日本の天然林には広葉樹林が多く見られます。
詳しくは下記の記事でも解説しております。
日本では、これまでの歴史の中で、どのように森林を利用してきたのでしょうか。
ここでは、森林荒廃への対策として芽生えた育成林業の取り組みについて、歴史を振り返りながら見ていきましょう。
日本では、これまで長い歴史の中で、天然林を活用する「採取利用」が繰り返されてきました。
採取が続くことで森林は徐々に荒廃しますが、中世までは天然更新の力によって回復し、木材の利用が可能となりました。
しかし、戦国時代になると、武将たちによる城の建築や大規模な建築物の造営が活発化し
江戸・京都・大坂などの都市部では木材の需要が急増。
その結果、全国的に森林の荒廃が深刻化していきました。
17世紀初頭ごろから、森林の過度な伐採を抑制・禁止する政策が実施されるようになり、次第に「採取利用」から「育成林業」へと移行していきました。
戦争による木材消費の拡大
昭和10年代以降、戦争の拡大に伴い、軍需物資として大量の木材が消費されるようになりました。
戦後も、日本の復興のために大量の木材が必要となり、森林の荒廃が一層進みました。
さらに、昭和20〜30年代には、全国各地で台風などの大規模な災害が相次ぎ、早急な森林再生の必要性が強く叫ばれました。
荒廃した森林の再生を早急に図るため、政府は造林補助事業を治山事業や林業事業と併せ、公共事業に組み入れました。
さらに、人工林の伐採後に森林再生が遅れている跡地の解消を重点に置き、政府主導で森林再生の推進に取り組みました。
昭和25年(1950年)には「造林臨時措置法」が制定されたほか、特に建築用材としての需要が期待されたスギやヒノキなどの針葉樹の植林が進められました。
針葉樹の植林が推進された結果、現在の日本ではスギを中心とした人工林が広がっています。
人工林の樹種別面積では、スギが約45%、ヒノキが約25%を占めています。
また、特に昭和30年(1955年)頃に植栽された樹木は、50年以上の成長を経て、現在、木材の伐採・利用期に達しています。
日本全体の森林蓄積面積は約54億㎡にのぼり、特に人工林の蓄積量は過去50年で約6倍に増加しました。
今日の日本の人工林は、伐採・利用・植林の循環が求められる時期にあると言えるでしょう。
現在の日本の森林は、森づくりの区分によって、主に「育成単層林」「育成複層林と天然生林」「里山林」に分けられます。
ここからは、それぞれの森林区分と林業の関わりについて見ていきましょう。
「育成単層林」とは、森林を構成する樹木のすべて、または大部分を一度伐採した後、一斉に植林することで、年齢や高さがほぼそろった樹木からなる森林のことです。
育成単層林の多くは、スギやヒノキを中心とした針葉樹の人工林であり、林業の中心となっているのも育成単層林です。主に建築材や家具材として利用されるほか、国産木材を安定供給するための森林資源としても活用されています。
齢や高さの異なる樹木から構成される森林のことです。
また、「天然生林」とは、主に自然の力によって成立・維持される森林を指します。
育成複層林や天然生林は、災害防止、自然保全、環境形成などの公共的な機能を持っています。
「里山林」とは、集落の近くにあり、薪炭用の木材採取や山菜採り、落ち葉を肥料として利用するなど、地域住民の生活に活用される森林のことです。また、チップや燃料として利用される曲がり木や小径木が多いのも特徴です。
主にクヌギやコナラを中心とした落葉広葉樹の二次林や、アカマツの二次林などが多く見られます。
これまでは、日本の育成林業の歴史を中心に振り返ってきました。
今後、持続可能な森林を育て、林業を継続していくためには、各地域の森林をゾーニングし、それぞれの状況に応じた保全と管理を行うことが重要です。
ここからは、今後の育成林業の在り方について、次の3つの切り口で解説していきます。
森林は、木材の供給だけでなく、水源の涵養や国土の保全など、多面的な機能を持っています。
これらの機能を将来にわたって十分に発揮させるためには、植栽や間伐などの適切な森林整備を行い、健全な森林を育成することが必要です。
森林整備においては、各地域の森林の現状や自然条件、ニーズなどを踏まえ、将来の望ましい森林の姿をイメージしながら、計画的に進めることが重要です。
また、森林から木材を伐採し、それを利用することで、「植える→育てる→使う→植える」というサイクルが機能し、森林整備の継続にもつながります。
現在は、スギやヒノキを中心とした針葉樹の育成単層林で主に林業が行われていますが、樹種構成のアンバランスさが課題となってきました。
今後はニーズに応じて、針葉樹と広葉樹が混交する育成複層林の割合を増やす森林整備も進められる予定です。
資源を循環利用する森林から、公益的機能を重視した森林へと誘導することで、将来的な森林管理コストの低減にも寄与すると考えられています。
林業は、長い年月をかけて森林を育成し、木材として販売する産業です。植樹、伐採、森林調査などの作業は依然として多くが人力に依存しており、林業従事者の高齢化や担い手不足が深刻な課題となっています。
一方、近年はGNSS(全地球航法衛星システム)をはじめとするICT技術やドローンの導入など、先端技術の発展により、林業の作業はますます便利で効率的になっています。
持続可能な林業を実現するためには、これらの技術を活用した省力化とコスト削減が今後の重要な鍵となるでしょう。
日本の森林は、戦後から長い年月をかけて育林が行われ、現在は主伐期を迎えています。将来的に持続可能な林業を経営していくためには、今後どのような森林を育てていくのかという長期的なビジョンを持つことが重要です。
地域や森林の状況に応じた保全と管理を行い、先端技術も積極的に活用しながら、ニーズに合わせて持続的に森林を活用していくことが求められます。
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