SE構法とは|高い耐震性と開放的な空間を実現!特徴を解説

eTREE編集室

SE構法は、木造住宅などに用いられる比較的新しい建築構法の一つで、優れた耐震性と自由度の高い空間設計を両立することができます。
地震大国とも称される日本において、耐震性の高い木造住宅を実現する技術は非常に重要です。

本記事では、SE構法の主な特徴やメリット・デメリットのほか、SE構法を導入するための登録制度について解説します。

SE構法とは「自由な空間デザインと高い耐震性能を両立する木造建築技術」

「SE構法」とは、注文住宅などの木造建築に用いられる構法の一つで、高い耐震性と自由度の高い空間設計を両立できる技術です。

SE構法は、「地震に強い木造住宅をつくること」を目的に開発されました。
一定の強度が保証された構造用集成材を使用し、柱や梁を独自に開発された金物で緊結することで、高い耐震性を実現しています。

また、SE構法の「SE」は「Safety Engineering(安全工学)」の略であり、最高水準の強度を確認する「構造計算」を必ず行う点も特徴です。

SE構法で建てられた住宅は、耐力壁を最小限に抑えられるため、間取りの自由度が高く、開放的な空間設計が可能になります。

参考:SE構法とは|株式会社エヌ・シー・エヌ

SE構法の特徴

ここでは、SE構法の主な特徴について、次の3つの観点から解説します。

  • SE構法が開発された経緯
  • 木造でラーメン構造を実現
  • 認定された工務店が施工

SE構法が開発された経緯

「地震大国」とも称される日本は、世界的に見ても大規模地震の発生件数が非常に多い国です。
国土交通省の「河川データブック2024」によると、世界で発生するマグニチュード6以上の地震のおよそ2割が、日本周辺で発生しているとされています。

実際、2011年から2023年の間に世界で発生したマグニチュード6以上の地震のうち、日本で発生したものは全体の約16%を占めています。

このように地震が多発する日本の特性に対応するため、SE構法は開発されました。特に、1995年に発生した阪神・淡路大震災では、多くの木造家屋が倒壊し、甚大な被害が生じました。

この教訓を受け、同様の被害を防ぐことを目的として、SE構法は地震に強い木造建築技術として誕生したのです。

参考:河川データブック2024(2-2-3 世界のマグニチュード6以上の震源分布)|国土交通省

木造でラーメン構造を実現

SE構法は、日本の木造住宅において初めて「ラーメン構造」を実現した工法です。

ラーメン構造とは、柱と梁を剛接合(一体化した接合)で組み上げたフレーム構造を指し、高い耐震性と安定性が特徴です。

これまでの木造建築では、軸組工法(在来工法)や枠組壁工法(2×4工法)が主流であり、ラーメン構造は主に鉄筋コンクリート造や鉄骨造のマンション、ビルなどで採用されるのが一般的でした。

ラーメン構造には、強度計算が可能な均質な部材が必要とされますが、天然木材は品質にばらつきがあるため、木造での実現は困難とされてきました。

しかし近年、構造用集成材の性能向上により、木材でも安定した品質が確保できるようになり、木造建築でもラーメン構造を実現することが可能となったのです。

認定された工務店が施工

SE構法は、建築基準法第68条の26の大臣認定を受けた特殊な工法であり、一定の知識と技術を持っていなければ、設計・施工ができません。

そのため、開発元である株式会社エヌ・シー・エヌから「SE構法登録施工店」の登録を受けることで、SE構法を施工することができます。

登録制度や登録施工店になるための具体的な手続きは、後述の項目で解説します。

SE構法のメリット

SE構法は耐震性の高さや間取りの自由度の高さだけでなく、費用対効果の面でもメリットがあります。

ここでは、木造住宅にSE構法を採用する代表的なメリットについて、次の3点を紹介します。

  • 耐震性、断熱性能が高い
  • 間取りの自由度が高く、開放感のある空間を実現
  • 費用対効果が高い

耐震性、断熱性能が高い

SE構法は、耐震性と断熱性を向上させやすい工法です。

一定の強度が保証された構造用集成材を、独自に開発された金物で緊結した「ラーメン構造」と耐力壁を組み合わせることで、優れた耐震性を持ちます。

また、SE構法では、RC造(鉄筋コンクリート造)や鉄骨造のビルと同様に、木造住宅であっても一棟ごとに緻密な構造計算を行います。
加えて実際に発生した地震のデータをもとにした実測シミュレーションを実施することが可能です。

さらに、SE構法で使用される耐力壁には構造用合板が採用されており、従来のような筋交い(柱と柱の間に斜めに入れる補強材)を用いない構造のため、壁内への断熱材の充填がしやすくなっています。

このような構造により、住宅全体を断熱材で包み込む「外断熱工法」も採用しやすく、高い断熱性能を実現することができます。

間取りの自由度が高く、開放感のある空間を実現

SE構法は、ラーメン構造と耐力壁を組み合わせることで、従来の木造住宅に比べて壁や柱の数を減らすことが可能です。

その結果、間取りの自由度が高まり、大空間や大開口、吹き抜けなど、開放感のある空間設計も実現できます。

費用対効果が高い

SE構法による建築は、基本的に「SE構法登録施工店」として認定された工務店に依頼することになります。

全国に支店を展開する大手ハウスメーカーと比べると、地元密着型で技術力の高い工務店は、広告宣伝や営業にかかるコストを抑えやすいです。

そのため、結果として費用対効果の高い住まいづくりが実現できるとされています。

SE構法のデメリット

SE構法には様々なメリットがある一方で、技術面やコスト面でいくつか注意したい点があります。ここでは、SE構法の代表的なデメリットとなる点を3つ紹介します。

  • 施工できる業者が限られている
  • 歴史が浅く、補強方法が未確立
  • 一般的な住宅建築工法よりもコストがかかる

施工できる業者が限られている

前述したように、SE構法は「SE構法登録施工店」の認定を受けた工務店のみ施工することが可能です。

この登録制度は、SE構法の高い技術力を有する証明になる一方で、施工できる業者が限られてしまうというデメリットにもつながりかねません。

SE構法登録施工店は、株式会社エヌ・シー・エヌのウェブサイトの「工務店検索」で調べることができます。

歴史が浅く、補強方法が未確立

SE構法は、前述のとおり阪神・淡路大震災を契機に開発され、1997年に建設大臣の認定を受けた比較的新しい木造建築構法です。

そのため、他の一般的な木造住宅の工法と比べると、まだ歴史が浅いという特徴があります。

従来から広く用いられている在来工法(軸組工法)では、住宅の老朽化に伴う耐震補強の方法が確立されており、多くの実績があります。

一方、SE構法は導入からの年数が浅いため、補強方法に関する標準的な手法がまだ確立されていないという点が、デメリットになりかねません。

一般的な住宅建築工法よりもコストがかかる

SE構法は、高い耐震性と品質を実現する一方で、在来工法に比べて建設費用が高くなる傾向があります。

これは、精度の高い基礎工事や構造計算の実施に加え、構造用集成材や接合部に使用する専用金物など、特別な資材や工程が必要となるためです。

その結果、一般的な木造住宅と比べてコストがかかるとされています。

「SE構法登録施工店制度」の概要

SE構法を導入するには、開発元である株式会社エヌ・シー・エヌが定めた「SE構法登録施工店制度」に基づき、認定を受ける必要があります。
登録施工店となるには、まず「SE構法技術研修会」に参加し、SE構法に関する知識を習得します。

研修修了後、所定の試験に合格することで、「SE構法施工管理技士資格」を得ることが可能です。
この資格は、SE構法における設計・施工基準や手続きに関する正確な知識を有する管理者に対して与えられるものです。

SE構法を施工するには、最低1名のSE構法施工管理技士が在籍していることが必須要件となっています。

参考:導入フロー|株式会社エヌ・シー・エヌ

制度を踏まえたSE構法導入のステップ

次に、SE構法登録施工店制度に基づく、SE構法導入のステップを紹介します。

SE構法を導入するには、まず、SE構法の使用権を得るための「SE構法実施基本契約」と、資材の取引に関する「SE構法取引基本契約」を締結する必要があります。

その後、「SE構法技術研修会」を受講し、所定の試験に合格することで、「SE構法施工管理技士資格」を取得することが可能です。
この資格を有するスタッフが1名以上在籍していることを条件に、SE構法登録施工店としての認定を受けることができます。

まとめ

独自の技術開発によって、高い耐震性と断熱性に加え、開放感のある自由度の高い間取りを実現できるSE構法は、近年注目を集めている建築工法の一つです。

費用対効果に優れ、多くのメリットを持つ工法ですが、補強方法の未確立やコスト面といったデメリットについても、十分に理解しておくことが重要です。

世界的に見ても地震が多い日本において、安全性と高い品質を兼ね備えたSE構法は、今後さらに発展が期待される木造建築技術と言えるでしょう。

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