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2025.7.3
エリートツリーは、育ちが早く、花粉が少ないなどのメリットを持つ優れた樹木です。
木材として使いやすく、環境にも優しいため、林業のコスト削減や地球温暖化対策の点で注目されています。
この記事では、エリートツリーの定義やメリット、デメリットなどについて分かりやすく解説します。
目次
エリートツリーとは、特に優れた成長特性を備えた樹木のことです。
各地で選抜された精英樹(第1世代)の中でも、特に優れたものを交配した苗木の中から選ばれた、第2世代以降の精英樹の総称です。
林木育種事業として60年以上にわたって進められてきた研究により、成長速度が早く、花粉が少ないなどの特長を持つ樹木が開発されました。
一般的な樹木よりも早く成長し、二酸化炭素の吸収量が多いため、地球温暖化対策としての効果が期待されます。
開発は、優良な特性を持つ精英樹を選抜し、人工交配やクローン技術によって改良を重ねる手法で行われてきました。
こうした取り組みは、森林資源の安定供給や環境保全に貢献しています。
特定母樹は、エリートツリーの中でも特に優良な性質を備え、農林水産大臣から認定された個体を指します。
たとえば、以下のような基準が設けられています。
このような条件を満たした樹木は、花粉の抑制や林業の生産性向上に役立つ存在です。2022年3月末の時点では、456種類が特定母樹として選ばれています。
参考:特定母樹:林野庁
エリートツリーは、成長速度が早く、花粉量が少ないなど、さまざまな特性を持つ樹木です。
これらの特長により、森林維持のコスト削減や快適な生活環境の実現、地球温暖化対策への貢献が期待されています。以下では、具体的なメリットについて詳しく解説します。
エリートツリーの最大のメリットは、成長速度が早いことです。
標準的な樹木と比べて、およそ1.5倍の速さで成長するため、伐採可能な時期が早まり、林業の生産サイクルを短縮できます。これにより、造林にかかる手間や費用が減ります。
特に初期成長が早いことで、植える木の本数を減らしたり、下刈り回数を削減したり、初期にかかるコストを削減できるのです。早期に収穫できるため、高品質な木材の供給が安定し、市場流通量の増加にも役立ちます。
林業従事者の作業負担が軽減されることで、労働環境の改善にもつながるという効果も見込まれています。人手不足が深刻な林業の世界では、森林維持コストの削減につながるエリートツリーが注目されているのです。
エリートツリーの中には、花粉の発生量を大幅に抑えた品種が存在します。
これらの樹木は、従来のスギやヒノキに比べて、花粉の放出が半分以下に抑えられており、花粉症の症状を和らげることが期待されています。
以前に比べると日本では花粉症に悩む人が増えており、個人の問題ではなく社会的な問題です。
そのため、林野庁は花粉の少ない苗木の開発と普及を推進し、エリートツリーの導入を通じて、より快適な居住環境の形成を目指しています。
地域の健康福祉にもつながるこの取り組みは、住民からの支持も高まりつつあります。
エリートツリーは、一般的な品種に比べて成長が早いため、同じ期間でより多くの二酸化炭素(CO₂)を吸収できます。具体的には、CO₂吸収量は一般的な樹木の約1.5倍とされ、地球温暖化対策の一助として注目されています。
また、伐採と再植林のサイクルが短くなることで、森林の更新が活発に行われ、生態系への配慮をしながらも炭素固定の効率が高まります。こうした高性能な樹木の活用は、脱炭素社会の実現に向けて国内外で重要視されている分野の一つです。
エリートツリーは、成長の早さだけでなく、材質にも優れている点が大きな特長です。幹の通直性が高く、伐採後に得られる木材の剛性も、従来の品種と比べて同等以上であることが確認されています。
通直性とは、木材を縦方向に切ったときに年輪がどれくらい平行に通っているかを指す概念です。見た目としては木目がまっすぐで、狂いが少ない状態といえます。
そのため、建築材や家具材などとしても十分に利用価値があり、加工や流通の面でも安定した性能を発揮できるでしょう。品質と供給の両面で信頼性の高い素材であり、長期的な木材利用の基盤として期待されています。
エリートツリーは成長が早く、環境への貢献が期待される一方で、価格の高さや入手の難しさ、森林の多様性への影響といった課題も指摘されています。これらのデメリットを理解し、適切な導入と管理を行うことが、持続可能な森林経営の実現には不可欠です。
希少性や生産体制の整備不足から、苗木の価格が高く、一般の林業者にとっては入手が難しい状況が続いています。特に母樹本数が少ないことや採穂園の整備が進んでいないことが供給の制約となっています。
日常的にエリートツリーを活用し、その恩恵を受けるには、まだ時間がかかるでしょう。エリートツリーの普及には、苗木の生産体制を強化し、価格の低減と供給の安定化を図ることが必要です。
エリートツリーは、同一の遺伝子を持つクローン苗が多く利用されるため、森林内の遺伝的多様性が低下する恐れがあるのではないかと懸念されています。
遺伝的な均一性は、病虫害や気候変動などの環境ストレスに対する森林の耐性を弱める可能性があり、生態系全体のバランスにも影響を及ぼすことがあるためです。
特に単一品種の大規模な植林は、特定の病害虫の蔓延や、他の植物や動物の生息環境の喪失につながる可能性が否定できません。持続可能な森林経営を実現するためには、多様な樹種や遺伝的背景を考慮した計画的な植林が求められます。
一方で、同一遺伝子を持ったエリートツリーを植林する弊害について、林木育種センター育種部育種第一課課長の栗田学氏は次のように述べています。
採種園の設計にあたっては、採種園を構成するクローンの血縁関係にも配慮した設計となるよう技術指導も行っています。そのようにして整備され、遺伝的に多様な系統で構成された採種穂園から山行き苗木が生産されるため、エリートツリー由来の苗木によって生産された山も、病虫害や環境変化に対する柔軟性に配慮された作りとなります。
懸念されることはさまざまですが、環境に対する配慮はなされています。
スギ、ヒノキにおけるエリートツリーの選抜基準は次の通りです。
評価項目 | 選抜基準 |
成長量 | 次代検定林において材積量が5段階評価で4以上(上位31%以上) |
材質(剛性) | 次代検定林において著しく劣っていない |
通直性 | 曲がりが全くないか、若しくは曲がりがあっても採材に支障がない |
雄花着生性 | 候補木周辺の林齢の近い一般的なスギ・ヒノキの平均値未満 |
自然着花による雄花調査 | 総合指数が隣接林分の平均値以下 |
ジベレリン処理による雄花調査 | 総合指数の平均値が4.0未満 |
上記に当てはまるエリートツリーとして、令和5年度末までに、スギ686系統、ヒノキ315系統、カラマツ140系統、トドマツ50系統、グイマツ4系統の合計1,195系統が認定されています。
北海道から九州までのエリートツリーの一覧は、こちらよりご確認いただけます。
エリートツリーは、成長の早さや花粉の少なさなど、林業や暮らしに役立つ特長をもつ木です。木材の安定供給や、地球温暖化対策への効果も期待されています。
ただし、現状はまだ苗木が高価だったり、自然の多様性を損なう可能性もあったりと、使い方には注意が必要です。これからの森林づくりでは、地域の特性や環境への影響をふまえた上で、バランスのとれた活用が求められます。
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