熱に強い木材とは?具体的な樹種から活用事例まで詳しく紹介

eTREE編集室

木材は、他の素材と比べて熱を伝えにくい「断熱性」に優れた素材であり、住まいや家具、さらには高温環境下でも快適さを支える役割を果たしています。

本記事では、熱に強い木材の基礎知識から、樹種ごとの特徴、さらには加工技術による耐熱性の向上方法や実際の活用事例までを詳しく解説します。

木材の断熱性

「木には温かみがある」とよく言われますが、それには科学的な理由があります。

ここでは、木材が持つ熱を伝えにくい性質について、次の3つの観点から解説します。

  • 木材の熱伝導率が低い理由
  • 他素材との熱伝導率の比較
  • 樹種による断熱性能の違い

木材の熱伝導率が低い理由

木材は断熱性が高く、熱が伝わりにくい、つまり「熱伝導率が低い」という性質を持っています。

その理由は、木材の内部構造にあります。

木材は植物であり、細胞の集合体である点が特徴です。これらの細胞には、細胞壁に囲まれた無数の空隙(くうげき)があり、その中に多くの空気が含まれています。

これが、木材の熱伝導率が低い主な要因といえるでしょう。空気の粒子は密度が低く、対流が起こりにくいため、熱を効率よく伝えることができません。

さらに、木材は他の素材と比べて「かさ比重」が小さいという特徴もあります。

かさ比重とは、体積に対する質量の割合を示すもので、数値が大きいほど密度が高く、熱が伝わりやすくなります。

木材はこの比重が小さく、内部に空隙が多いため、熱が伝わりにくい素材と言えるのです。

他素材との熱伝導率の比較

木材の断熱性を理解するうえで、他の一般的な素材と比較することは有効です。

例えば、木材の熱伝導率は鉄のおよそ500分の1とされており、その断熱効果は住宅用の断熱材にも匹敵すると言われています。

この特性を活かした身近な例として、鍋やフライパンなどの調理器具の取っ手や柄が挙げられます。鉄やステンレスは熱を伝えやすく、短時間で非常に熱くなってしまうため、熱を遮る役割として木製の取っ手が採用されることが多いのです。

樹種による断熱性能の違い

木材の断熱性能は、前述のとおり、内部に多くの空気を含むほど高くなります。断熱性の目安となる「かさ比重」が小さい樹種ほど空隙が多く、それだけ空気を多く含んでいるため、一般的に軽い木材ほど断熱性に優れているといえるでしょう。

国産材の中で最もかさ比重が小さいのは「桐(キリ)」です。桐箪笥がよく知られていますが、古くから衣類を収納するタンスや、貴重品を保管する金庫の内装材としても活用されてきました。

これは、桐が他の木材と比べて熱を伝えにくく、万が一火災が起きた際にも内部が高温になりにくいため、中身が守られる可能性が高いとされているためです。

熱に強い木材の種類と特徴

熱に強い木材にはいくつかの共通点があります。

ここでは、次のように「広葉樹」と「針葉樹」に分けて、それぞれの特徴と代表的な樹種を紹介します。

  • 広葉樹
  • 針葉樹

広葉樹

広葉樹は一般的に針葉樹よりも硬く、耐久性や耐熱性に優れているとされています。

そのため、高温環境となるサウナや薪ストーブまわりでの使用にも適した樹種が多く見られます。

中でも代表的な広葉樹3種の特徴は次の通りです。

  • ケヤキ:美しい木目を持ち、特に強度と耐久性に優れているため、建築材や家具材として重宝されてきた
  • ナラ:硬くて重い性質を持ち、耐熱性も高いことから、薪ストーブの炉材として使用されることも多い
  • クリ:独特の風合いと重厚感が魅力で、耐火性にも優れており、建築材や家具など幅広い用途で用いられている

針葉樹

針葉樹は、広葉樹と比較して成長が早く、安価で入手しやすいというメリットがあります。中でも代表的な針葉樹3種の特徴は次の通りです。

  • ヒノキ:美しい木目と芳香が特徴で、サウナや浴室といった高温多湿な環境においても優れた耐久性がある
  • スギ:軽くて加工しやすい性質であり、断熱性に優れる

木材の耐熱性を高める加工方法

木材の自然の状態のままでもある程度の耐熱性がありますが、さらに性能を高めるためには木材の加工技術が効果的です。ここでは、次の代表的な加工方法をご紹介します。

  • サーモウッド(熱処理)加工
  • 難燃処理

サーモウッド(熱処理)加工

サーモウッド(熱処理)加工は、サウナ文化の本場として知られるフィンランドで発展してきた木材の加工技術のひとつです。

日本では「熱処理」と呼ばれることもあり、化学物質を使用しないことから、環境にやさしい加工方法として評価されています。

この加工は、「乾燥」「熱処理」「冷却・調湿」の3段階に分けて行われます。処理を施すことで、木材内部の水分量が減少し、空気層が増加。

これにより断熱性がさらに高まります。加えて、耐久性の向上や寸法の安定化といった効果も得られるため、屋外や高温環境での利用にも適しています。

難燃処理

難燃処理は、主に木材中に難燃薬剤を注入することで、木材を燃えにくくする加工方法のひとつです。難燃薬剤として用いられる主な薬剤としては、ホウ素系、リン酸系、ハロゲン系が挙げられます。

特に公共建築物における木材の利用促進が期待される中で、特に建築基準や安全性が求められる現場では、重要な対策の一つとも言えるでしょう。

熱に強い木材の具体的な活用例

熱に強い木材は、住宅から公共施設まで幅広い分野で利用されています。

ここでは熱に強い木材の具体的な活用事例として、次の3つの事例を解説します

  • 建物・内装
  • 屋外・ウッドデッキ
  • キッチン・サウナなどの高温環境

建築・内装

室内空間の快適性を高めるうえで、断熱性に優れた木材の活用は非常に有効です。中でも注目されているのが、「CLT(Cross Laminated Timber)」と呼ばれる建材です。

これは、木材の繊維方向を直交させて複数枚を積層・接着した「直行集成板」で、大規模な木造建築物を中心に利用が拡大しています。

CLTは、断熱性に加えて、耐火性や耐熱性にも優れているのが特長です。

これにより、冬は室内の暖かさを保ち、夏は外気の熱を遮るといった、快適な温熱環境の実現に寄与します。そのため、外壁や床、屋根などの構造部材としても最適な素材と言えるでしょう。

屋外施設・ウッドデッキ

雨風や紫外線、温度変化にさらされる屋外施設やウッドデッキなどでも、耐熱性の優れた木材が活躍します。特に天然木の中では、「ハードウッド」と呼ばれる種類の木材が適しているとされています。

主な代表例としては、ウリン(アイアンウッド)やイペなどの樹種です。

キッチン・サウナなどの高温環境

熱がこもりやすい高温環境であるキッチンやサウナでは、熱に強い木材の性能が存分に活かされます。

中でもサウナにおいては、木材の断熱性と保湿性がとりわけ重要な要素となります。サウナ室内の熱を効率よく保ち、快適な温度環境を維持するためには、断熱材と保温材の両方の役割を果たす、適切な木材を選ぶことが欠かせません。

まとめ

木材が「温かみのある素材」とされる理由には、断熱性や耐熱性といった科学的な特性も関わっています。

木材は空気を多く含む構造によって、熱を伝えにくい性質があり、樹種ごとの性質のほか、加工方法によってもその性能はさらに高めることが可能です。

こうした木材の特性は、住宅や公共施設といった代表的な建築物だけでなく、サウナやウッドデッキなどの高温環境でも活かされています。目的や用途に応じて、適切な木材を選ぶことが重要となるでしょう。

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