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2025.10.21
森林資源は適切に管理すれば、再生可能な循環資源として活用できます。
しかし、世界的な森林減少や国内の輸入依存といった課題は依然として深刻です。
健全な森林経営と木材利用を両立させるには、木材の循環的な利用サイクルを促進することが欠かせません。
本記事では、持続可能な木材利用の実現に向けて、世界と日本の森林の現状から、木材選択のポイント、そして具体的な活用事例までを解説します。
目次
木材は適切に管理された森林から得られる限りにおいて、再生可能で持続的に利用できる資源であるとされています。
健全な森を育てるためには、ただ木を植えるだけでなく、成長に伴い過密となった森林内の立木の密度を調整するための間伐を行い、人の手によって整備を行う必要があります。
また、木が育てば適切に伐採し、また新たな木を植え、森の若返りを図ることも大切です。
このように、木を「植える・育てる・伐採する・使う・再び植える」という循環的サイクルを継続することが持続可能な木材利用の鍵となります。
参考:持続可能な木材利用|林野庁
参考:国産木材を利用して、日本の森林を元気に保ちましょう|林野庁
私たちが利用する木材は、日本だけでなく世界各地の森林から供給されています。
ここでは、森林の現状について、世界と日本のそれぞれの視点から解説します。
2020年時点で世界の森林面積は約41億haと報告されており、世界の陸地面積の約3割を占めます(国際連合食糧農業機関(FAO)の「世界森林資源評価2020(FRA2020)」より)。
また、世界の森林面積は2010年から2020年にかけて、年平均で約470万ha減少しています。
1990年から2000年の間に森林は年平均780万haのペースで純減していたため、その速度は低下傾向にありますが、減少の緩和は次第に弱まってきているのです。
次に日本の森林の現状を見ていきましょう。
2022年3月末時点における日本の森林面積は約2,502万haです。
森林面積はほぼ横ばいで推移しています。日本の国土の約7割近くを森林が占めており、世界有数の「森林大国」であるとされています。
日本の森林は、人の手が入っていない「自然林」が約5割、人の手によって植林された「人工林」が約4割です。
人工林の多くは、戦後の荒廃した森林の再生を図るために始まりました。
戦後植林された人工林の半数以上は、50年以上の成長を経て、現在、木材の伐採・利用期に達しています。
豊かな森林資源を持つ日本ですが、2023年時点の国内の木材自給率は約43%と、使用する木材の約6割を輸入に頼っている現状があります。
参考:「森林資源の現況」について|林野庁
参考:「令和5年木材需給表」の公表について|林野庁
ここでは、木材活用と地球温暖化防止の関係を解説していきます。
持続可能に管理された森林は、生育の過程で二酸化炭素を吸収し炭素を貯蔵します。
そのような森林から伐採した木材を建築物などに利用することで、炭素を長期的に貯蔵することが可能です。
また、木材は鉄やコンクリートといったほかの資材と比較して、製造・加工時のエネルギー消費量が少ないため、二酸化炭素の排出削減にもつながります。
このように、持続可能な森林経営によって生み出される木材を活用することは、カーボンニュートラルの実現に貢献すると考えられています。
持続可能な木材利用に向けては、利用する木材の背景を知り、選択することが重要になります。
ここでは、サステナブルな木材のポイントとして、次の3つの観点をご紹介します。
「森林認証制度」とは、木材が持続可能に管理された森林から伐採されたものであることを、主に第三者機関が評価し、認証する仕組みのことです。
適正に管理された認証森林から生産された木材は、生産・流通・加工の各工程でラベルを付けるなどして分別・表示されます。
森林認証制度を受けた木材を消費者が選んで購入することで、持続的な森林経営を支援できるようになっています。
森林認証は、森林資源の適切な利用と保護を両立させる重要な仕組みです。
国際基準の代表的な森林認証制度には次の2つがあります。
参考:森林認証材普及促進ガイド|林野庁
参考:主な森林認証の概要|林野庁
そもそも、トレーサビリティとは、「trace(追跡)」+「ability(能力)」から生まれた言葉です。
木材のトレーサビリティは、その木材がいつ、どこで伐採され、どのような流通や加工を経て最終製品になったかを、各工程を記録して追跡可能にする仕組みのことを指します。
こうした記録と追跡を通じて、消費者や事業者は木材の合法性や持続可能性を確認でき、違法伐採の抑制や信頼性向上につながるとされています。
日本では輸入材の利用も多い中、国内で育った木材を活用することは、地域経済の活性化や森林の健全な循環につながります。
また、国産材の活用によって、木材を産地から消費地まで輸送した際の環境負荷を数値化した「ウッドマイレージ」の削減も期待できます。
輸入木材は輸送距離が長くなるため、環境負荷が高くなりがちです。
そのため、国産材を利用することは、日本の豊かな森林資源を有効活用できるだけでなく、環境面でも持続可能な木材活用につながると言えるでしょう。
昨今、世界だけでなく日本国内においても、サステナブルな視点を取り入れた木材活用が進んでいます。
ここでは、持続可能な木材活用の事例について、次の3例を紹介します。
公共施設の木造化は、地域材の活用や環境負荷低減に寄与します。
2010年に「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が制定されたことを受け、全国で公共建築物における木材利用が促進されるようになりました。
公共施設での床面積ベースでの木造率は、法制定時の8.3%から、2019年度には13.8%まで上昇しました。
近年では、全国各地域の庁舎や学校、保育園、博物館、図書館など、幅広い公共施設の木造化が進んでおり、持続可能な社会づくりに貢献しています。
参考:国産木材を利用して、日本の森林を元気に保ちましょう|林野庁
建築物の木造化について、公共施設だけでなく、住宅や商業施設といった一般建築物にも拡大すべく、2021年には「都市(まち)の木造化推進法(脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律)」へと改正されました。
一方で、民間建築物への木材利用は、まだ広く一般的な取り組みには至っていない現状があります。
そこで林野庁では、川下から川上までの関係者が広く参画する官民協議会「ウッド・チェンジ協議会」を設置。
協議会では、民間建築物への木材利用に向けて、課題や解決方法の検討、先進的な取り組み事例の発信など、木材を利用しやすい環境づくりに取り組んでいます。
参考:国産木材を利用して、日本の森林を元気に保ちましょう|林野庁
参考:民間建築物等における木材利用促進に向けた協議会(ウッド・チェンジ協議会)|林野庁
林野庁は2005年度から、木材利用を広めるための国民運動として「木づかい運動」を展開。
木材活用の意義を発信し、暮らしの中に木製品を取り入れることで、日本の森林を健全に育てることを目的としています。
近年は「ウッド・チェンジ」を合言葉に、木材を暮らしに取り入れるだけでなく、前述のように建築物の木造化・木質化を進めるなど、さまざまな取り組みを通じて持続可能な社会の実現を目指しています。
参考:国産木材を利用して、日本の森林を元気に保ちましょう|林野庁
参考:木づかい運動でウッド・チェンジ!|林野庁
持続可能な木材利用は、森林を守り、地球温暖化の防止にもつながる取り組みです。
森林認証やトレーサビリティ、国産材の活用などを通じて、社会全体で木材の循環利用を広げることが大切です。
私たち一人ひとりが適切な木材を選び、暮らしに取り入れることが、未来の森林と持続可能な社会を育てていく力になると言えるでしょう。
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