
商品紹介
2025.11.20
木を伐り出し、運び、再び植えるという林業のサイクルを支えるのが林業機械です。
人手不足や高齢化が進むなかで、作業の効率化と安全性の両立を担う高性能林業機械の導入が全国的に広がっています。
現場作業の自動化や遠隔操作技術も発展し、少人数でも高品質な森林整備が可能になってきました。
この記事では、林業機械の基礎知識から代表的な種類、導入のメリット、そして展示会で見られる最新トレンドまで詳しく紹介します。
目次
林業機械とは、伐採・集材・造林・整備など、森林作業を安全かつ効率的に行うための専用重機の総称です。
代表的な機種には伐倒・枝払い・玉切り・集積をするハーベスタ、集材をするフォワーダなどがあります。
従来の人力中心の作業と比べ、作業時間を大幅に短縮できる点が特徴です。
日本では昭和60年代から高性能林業機械の導入が始まり、令和3年度の全国の保有台数は約1万台となりました。
労働力不足や高齢化が進む現場では、こうした機械化の波が森林整備の持続性を左右する重要な要素となっています。
参考:高性能林業機械とは | 林野庁
参考:林業機械の現在地【前編】 自動化・機械化はどこまで進んでいる? | FOREST JOURNAL
林業では、伐採から搬出、造林まで工程ごとに異なる機械が用いられます。
ここでは、それぞれの作業に適した代表的な機械と役割を紹介します。
木を切り倒し、枝を払い、丸太に切り分ける工程では「フェラーバンチャ」「ハーベスタ」「プロセッサ」などが中心的な役割を担います。
特にハーベスタは、伐倒・枝払い・玉切りを一台で行える多工程機として知られ、効率性と安全性の両立を実現しています。
自動制御による高精度な伐採が可能で、傾斜地や狭い作業エリアでも安定した作業を行える点が強みです。伐採の合理化には欠かせない存在といえるでしょう。
参考:高性能林業機械とは | 林野庁
参考:高性能 林業機械とは | 林野庁
伐倒した木材を集めて搬出する工程では、「スキッダ」「フォワーダ」「タワーヤーダ」「スイングヤーダ」などが活躍します。
スキッダは丸太の一端を吊り上げて土場まで集める機械で、伐開された林地内で使用されます。
フォワーダはクレーンを使って丸太を荷台に積み込み、木材を安全に運搬する自走式機械です。
タワーヤーダはワイヤーを使って山の斜面から木材を引き上げる仕組みで、急傾斜地の集材作業に適しています。
地形条件や作業規模に合わせて最適な組み合わせを選ぶことで、作業効率をさらに高められます。
伐採後の再造林や、若木を守る下刈りの工程では、「地拵え機」「植付け機」「下刈り機」などが使用されます。
これらの機械は人手の届きにくい山間部での作業を支え、効率的な森林再生を可能にします。
日本では、油圧ショベルを改造して林業向けに転用するケースも多く、地形や植生に合わせた現場適応型の工夫が進化しています。
林業機械の導入は、作業効率の向上だけでなく、安全性・品質・人材確保といった多方面で大きな効果をもたらします。
それぞれ解説します。
林業機械を活用することで、伐採や搬出のスピードが飛躍的に向上します。
従来数日かかっていた作業が、わずか数時間で完了することも珍しくありません。
また、重機による遠隔操作や自動制御システムの導入により、危険な手作業を減らし、作業者の安全確保にもつながります。
全産業の約10倍の労災が発生している林業において、機械化は働く人を守る大きな手段となっているのです。
参考:林業を支える高性能林業機械 | 林野庁
参考:林業労働災害の現況 | 林野庁
機械化により、熟練者と初心者の作業品質の差を小さくできます。
どの作業者が操作しても一定の精度で作業を進められるため、品質の均一化が図れるのです。
作業時間の短縮により人件費が削減され、結果的にトータルコストの抑制につながります。長期的な経営安定化を目指す上でも、機械導入は有効な投資です。
「危険できつい」といった旧来の林業イメージを変えることも、機械化の大きな意義です。最新技術を取り入れた現場は、デジタル機器に慣れた若い世代にとっても魅力的に映ります。
ICTやAIを活用した作業支援システムの導入が進むことで、林業が選ばれる一次産業へと変わりつつあります。
林業機械の導入・運用には多くのメリットがある一方で、コストや技術、人材など、複数の課題が存在します。
それぞれ解説します。
高性能林業機械は1台あたり数千万円に及ぶ場合もあり、導入コストが大きなハードルとなります。
さらに、部品交換や整備を行うメンテナンス費用、現場間の運搬コストも無視できません。特に海外製の大型機は輸送費がかさみやすく、長期利用を見据えたコスト計画が欠かせません。
参考: 新車・中古重機・建機・林業機械・フォークリフトの販売・買取・レンタル・メンテナンスの富士岡山運搬機株式会社
日本の森林は急傾斜地など作業しにくい場所が多く、大型機械がそのままでは使えない場合があります。
また、地質や樹種によっても適応機種が異なるため、現場調査や試験導入が必要です。
機械化が進む一方で、今なお人の手に頼る作業も多く残っています。
高性能林業機械の操作には専門的な知識と経験が求められます。しかし、技術を持つ人材が地域に十分にいないのが現状です。
整備スキルを持つ人材の確保も課題であり、教育体制の整備や技能継承が急務となっています。
国や自治体は、林業の機械化を後押しするための補助制度や支援策を数多く設けています。
それぞれ解説します。
農林水産省では「林業・木材産業成長産業化促進対策交付金」「林業・木材産業循環成長対策交付金」などを通じて、高性能林業機械の導入や林業の活性化を支援しています。
補助金を活用すれば、機械購入の費用負担を軽減でき、地域単位での導入も可能です。
制度をうまく活用することで、資金面のハードルを下げつつ機械化を進められます。
機械購入に不安がある場合は、リース制度を利用して一定期間試験的に導入する方法もあります。
導入効果を検証しながら段階的に設備を整えることで、リスクを抑えた取り組みが可能になります。
リース料の数%を補助金としてサポートされる制度もあり、中小規模の事業者にも現実的な選択肢です。
一部の地域では、森林組合や自治体が中心となり、高性能機械を共同で所有・管理する取り組みが広がっています。
複数の事業者が順番に使用することでコストを分担でき、導入への心理的ハードルも低下します。
相談窓口を活用することで、最適な利用方法を見つけられるでしょう。
全国では、現場の工夫と最新技術を組み合わせた機械活用の事例が増えています。
それぞれ解説します。
静岡県のフォレストテクニック株式会社では、遠隔操作対応のフォワーダとグラップルを組み合わせ、省人化と安全性の両立を実現しました。
通信制御による遠隔運転技術は、作業者が危険区域に立ち入らずに済む仕組みです。
林業のスマート化を象徴する取り組みとして注目されています。
参考:令和6年度 高性能林業機械を活用した効率的な作業システム事例集 | 林野庁
島根県の伸和産業株式会社では、「ロージンググラップル」を導入し、木材の積み込み・移動を効率化しました。
従来の手作業工程を短縮し、省力化と作業効率の向上を実現しました。
現場の声を反映した改良も重ねられており、地方発の技術革新として評価されています。
参考:令和6年度 高性能林業機械を活用した効率的な作業システム事例集 | 林野庁
造林地での下刈り作業を機械化するため、軽量型機械の試験運用を行っています。
これにより、作業者の身体的負担を軽減しつつ、再造林の効率を大幅に高めています。
トータルの人工数は従来より34〜55%削減され、大幅に作業を効率化できました。
参考:令和6年度 高性能林業機械を活用した効率的な作業システム事例集 | 林野庁
国内外のメーカーが最新技術を投入し、よりスマートで持続可能な林業機械の開発を進めています。
それぞれ解説します。
コマツ、日立建機といった国内メーカーは、林業専用機の開発を加速させています。
油圧ショベルをベースに林業仕様へ改造した機種や、GPS搭載の国産ハーベスタなどが代表例です。
また、地域ごとにメンテナンスを担うディーラー網の整備も進み、現場サポート体制が充実しています。日本の地形に適した小型高機能モデルの開発も増加中です。
参考:社説/林業機械の開発 建機メーカーの役割に期待 | 日刊工業新聞 電子版
北欧のPONSSEやJohn Deere Forestry、Komatsu Forestなどは、世界の林業機械市場をリードしています。
自動制御技術や燃費効率の高さが強みで、ICTやAIを活用したオペレーション支援システムも実装済み。
ただし、日本の急峻な地形では運搬やコスト面の課題もあります。それでも、海外技術を日本仕様に改良する取り組みは着実に進展しています。
林業機械の最新技術を体感できる展示会や実演イベントは、業界の動向をつかむ絶好の機会です。
それぞれ解説します。
全国規模で開催される日本最大級の林業機械展示会です。
ICT・AIを活用したスマート林業機器のデモンストレーションや、メーカーによる最新モデルの試乗も行われます。
行政・研究機関・事業者が一堂に集まり、技術や情報を共有する場として注目されています。
北海道や九州など、地形条件の異なる地域ごとに開催される展示会も増えています。
実際の山林で行われるデモンストレーションでは、機械の走行性や安全性能を間近で確認できます。
導入を検討する中小事業者にとっても、貴重な相談・体験の機会となっています。
林業機械の導入は、単なる効率化ではなく、地域社会の未来を支える基盤整備でもあります。
作業の安全性を高め、若手が働きやすい環境を整え、森林資源を持続的に活かしていく要となるのが機械化です。
今後は、国・自治体・民間が連携し、技術・資金・人材を結びつける仕組みづくりがますます重要になるでしょう。
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