林業の現場と政策をつなぐ「森林総合監理士(フォレスター)」とは?

eTREE編集室

日本の森林を守り、次世代へ引き継ぐためには、地域の実情に合わせた計画的な森林経営が欠かせません。

その中心的な役割を担うのが「森林総合監理士(フォレスター)」です。

本記事では、フォレスターの具体的な業務内容や資格試験のほか、活動事例などについて詳しく解説します。

森林総合監理士(フォレスター)とは「森林の未来を設計し、守り、活かす専門家」

「森林総合監理士(フォレスター)」とは、地域の森林・林業関係者と連携しながら、森林の整備・保全と林業の成長産業化に向けた取り組みをリードする専門家のことです。

森林・林業に関する専門的かつ高度な知識や技術、現場経験を活かして、長期的・広域的な視点から地域の森林づくりの全体像を示す役割を持ちます。

具体的には、市町村森林整備計画の策定といった、市町村行政を技術的に支援します。

フォレスターとして登録されるためには、国家試験である「林業普及指導員資格試験」の試験区分「地域森林総合監理」に合格することが必要です。

参考:森林総合監理士(フォレスター)|林野庁
参考:森林総合監理士(フォレスター)とは|北海道森林管理局

フォレスターの主な業務

2025年3月末時点で、フォレスターの登録者数は1,914人です。

そのうち約7割を都道府県職員が占め、そのほかは市町村職員、民間、林野庁職員の内訳となっています。
フォレスターの主な業務は下記です。

  • 構想(マスタープラン)の作成
    地域の自然環境や社会・経済の状況を踏まえて、森林整備や林業、木材産業をどのように進めていくかを考え、長期的で広い視点から地域の構想(マスタープラン)を作成する。
  • 合意形成
    森林所有者、森林組合、素材生産業者、木材加工業者、行政関係者などといった、地域の森林・林業関係者と住民の間で、構想についての合意形成を図る。
  • 構想の実現
    構想の実現に向けて、地域や国の制度・予算などを活用しながら、具体的な取り組みを進める。

参考:森林総合監理士(フォレスター)|林野庁

フォレスターが必要とされる背景

2011年に策定された「森林・林業基本計画」では、日本の森林・林業の再生に向け、施業の集約化や路網整備、人材育成などの基本方針が示されました。

計画を実現するためには、地域の森林づくりや林業・木材産業の将来像を描き、関係者と連携しながら取り組みを進める専門の技術者が必要です。

そこで林野庁は、専門知識と現場経験を持ち、広い視野で地域の森林を支える「森林総合監理士(フォレスター)」の育成と登録制度を設け、森林・林業の発展を目指しています。

参考:森林総合監理士(フォレスター)とは|北海道森林管理局

フォレスターの登録と公開

ここでは、森林総合監理士の登録制度と公開事項について解説していきます。

  • 登録制度
  • 公開事項

登録制度

市町村や地域の林業関係者への技術支援を的確に行えるよう、2014年度からフォレスターの登録情報を公開しています。

活動するためには、前述の通り、規定の国家試験に合格し、登録される必要があります。

公開する目的は、その活動を分かりやすく可視化し、国や都道府県の監理士同士が連携できる体制を整えるためです。
これにより、日本の森林や林業の健全な発展に役立てていきます。

公開事項

林野庁は、試験合格者が提出した届出書より、氏名、連絡先、活動可能地域、支援分野、活動実績報告書について、本人が了承した事項を公開します。

なお、登録番号と氏名を非公開としている場合は掲載されていません。
登録者の一覧表は、林野庁のホームページで確認することができます。

参考:森林総合監理士登録公開一覧|林野庁

フォレスターの資格試験

ここでは、フォレスターとして登録されるために必要な「林業普及指導員資格試験」の「地域森林総合監理区分」について、次の3つの観点から解説していきます。

  • 試験の概要
  • 試験の内容
  • 試験対策のポイント

試験の概要

「林業普及指導員資格試験」は、年に1回実施されます。

受付期間はおよそ4月上旬から5月上旬、筆記試験日は7月下旬、口述試験日は10月下旬から11月下旬頃の実施です。筆記試験に合格した場合、口述試験を受けることができます。

実施年度によって具体的なスケジュールは異なるため、最新の情報は林野庁の受験案内を確認するようにしましょう。

受験資格としては、実務経験が必要とされます。学歴などによって、必要な実務経験が定められているため注意が必要です。

合格発表は口述試験の実施から1か月以内に公表され、合格者には合格証書が交付されます。「地域森林総合監理区分」における直近3年間の合格者数は次の通りです。

年度受験申請者数合格者数
令和4年度404人49人
令和5年度369人112人
令和6年度354人228人

参考:受験案内|林野庁

試験の内容

前述の通り、試験は筆記試験と口述試験が行われ、筆記試験に合格した人が口述試験を受けることが可能です。

試験内容は、主に林業の基礎知識や専門知識、林業普及指導員としての能力が試されます。筆記試験は2日間かけて実施されます。

  • 筆記試験(1日目)
    ・「一般基礎」(択一式):林業一般、普及方法
    ・「専門」(択一式):「森林経営」「施業技術」「林産」の3分野から1分野を選択
    ・「専門」(小論文):専門(択一式)で選択した分野に関する問題
  • 筆記試験(2日目)
    ・「総合専門(適正)」(択一式):森林の総合的で基本的な知識
    ・「総合専門(問題解決)」(択一式・記述式):森林の総合的知識、森林づくりなどの構想を提示できる能力

試験対策のポイント

林野庁のホームページに過去問題が掲載されているため、試験対策として活用することができます。

また、育成やフォローアップのため、林野庁では、毎年度「森林総合監理士(フォレスター)基本テキスト」を改訂・公表しています。
こちらも林野庁のホームページで見ることが可能です。

参考:林業普及指導員資格試験情報|林野庁
参考:森林総合監理士(フォレスター)|林野庁

フォレスターの活動事例

ここでは、フォレスターの具体的な活動事例について見ていきましょう。

国有林野事業では、森林管理署などと都道府県のフォレスターが協力して「技術的援助チーム」をつくり、民有林で働く人材の育成を支援しています。

あわせて、地域の林業関係者が連携しやすくなるよう促し、「市町村森林整備計画」の作成や実行、森林経営管理制度の運用などを支援しています。

また、林野庁では、都道府県に所属するフォレスターの活動事例集をホームページで公開。

事例集では、都道府県の活動テーマごとにレポートが掲載されており、具体的な取り組みのポイントや地域の課題、今後の展開について知ることができます。

参考:民有林への貢献|林野庁
参考:森林総合監理士(フォレスター)|林野庁

地域独自の森林監理士制度

岐阜県では、森林の管理や経営に関する専門知識を持ち、市町村の林務行政を支援したり、民有林の経営に助言したりする「岐阜県地域森林監理士」という独自の人材を育成・認定しています。

県の認定試験に合格することで、岐阜県地域森林監理士として認定され、所定の台帳に登録・公開されます。2025年6月19日時点での登録者数は38人です。

岐阜県では、県内の市町村や林業事業体などが岐阜県地域森林監理士を活用する場合、経費の一部を支援しています。

参考:岐阜県地域森林監理士|岐阜県

まとめ

フォレスターは、専門的な技術と地域をつなぐ調整力を兼ね備えた、これからの森林経営に欠かせない存在です。

国の登録制度によりその活動が可視化され、都道府県や市町村、民間との連携が広がっています。

さらに、岐阜県のように地域独自の制度も生まれ、現場に根ざした支援体制が強化されています。

森林の未来を見据え、地域に寄り添いながら持続可能な林業を支えるフォレスターの役割は、今後ますます重要になっていくでしょう。

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