林業における樹皮剥ぎの基本と最新技術 | 作業手順から動物被害対策まで徹底解説

eTREE編集室

林業や木材利用の現場において「樹皮剥ぎ」は、木材の品質を大きく左右する重要な工程です。
適切に剥皮された丸太は乾燥が進みやすく、虫害や腐朽のリスクも抑えられます。

一方で、クマやシカによる「樹皮剥ぎ被害」も各地で問題となっており、人為的な作業との違いを正しく理解することが欠かせません。

本記事では、林業における樹皮剥ぎの基本的な意味から、道具・作業手順、安全管理、動物被害の見分け方と対策までを体系的に整理します。

樹皮剥ぎとは「丸太の外層を取り除く工程」

林業における樹皮剥ぎとは、伐採後の丸太から樹皮を取り除き、木材として利用しやすい状態に整える作業を指します。木材の品質管理や流通を成立させるための基礎工程です。

樹皮が付いたままの丸太は内部の水分が抜けにくく、乾燥ムラが生じやすくなります。その結果、反りや割れが発生し、製材後の歩留まりが低下するおそれがあります。
また、樹皮の裏側は木材害虫が産卵しやすい環境でもあり、虫害リスクを高める要因にもなります。

クマやシカが樹皮を剥ぐ行動も「樹皮剥ぎ」と呼ばれますが、こちらは採食や行動習性によるもので、人間が行う剥皮作業とは目的も方法もまったく異なります。

参考:第5回「原木の皮むき」| 吉野中央木材(株)
参考:実験から木材の性質を学ぶ・考える「木造建築材料(乾燥)(強度)」 | 岐阜県立森林文化アカデミー
参考:材木を買うということ | 大竹工房

林業における丸太の樹皮剥ぎの目的

丸太の樹皮剥ぎは単なる下処理ではなく、木材の価値を左右する工程です。乾燥品質の確保、加工効率の向上、虫害防止など、複数の目的が重なっています。ここでは主に2点に分けて整理します。

  • 木材乾燥と品質の向上
  • 運搬・加工工程の効率化

木材乾燥と品質の向上

樹皮剥ぎが重要とされる最大の理由は、木材乾燥の質を安定させられる点です。樹皮が残った状態では水分の抜け方に偏りが生じ、内部応力の不均衡から反りや割れが起こりやすくなります。

あらかじめ剥皮しておくことで、丸太全体から均一に水分が放出され、寸法安定性が高まります。
結果として、製材後の加工精度が向上し、用途の幅も広がります。これは構造材・造作材を問わず共通するメリットです。

乾燥不良による品質低下は後工程で取り返しがつかないため、初期段階での樹皮剥ぎが木材価値を左右すると言えるでしょう。

参考:実験から木材の性質を学ぶ・考える「木造建築材料(乾燥)(強度)」 | 岐阜県立森林文化アカデミー

運搬・加工工程の効率化

樹皮を除去することは、運搬や製材工程の効率化にも直結します。樹皮には泥や砂が付着しやすく、そのまま加工すると刃物の摩耗や破損を招きやすくなります。

事前に剥皮された丸太は摩擦が減り、集材・搬出時の扱いやすさが向上します。製材所においても、機械トラブルの減少や作業時間の短縮につながり、全体工程がスムーズになります。

このように、現場だけでなく川下工程まで含めて考えると、樹皮剥ぎはコスト削減と安定操業を支える作業だと分かります。

参考:実験から木材の性質を学ぶ・考える「木造建築材料(乾燥)(強度)」 | 岐阜県立森林文化アカデミー

樹皮剥ぎに使用する道具と方法

樹皮剥ぎの方法は、大きく手工具による作業と機械による剥皮に分かれます。
現場規模や丸太径、求められる精度によって適切な手法は異なります。それぞれの特徴を理解して使い分けることが重要です。

  • 手工具による樹皮剥ぎ
  • 機械による剥皮

手工具による樹皮剥ぎ

手工具による樹皮剥ぎは、細径木や精度を重視する場面で有効な方法です。皮剥ぎ鎌や専用ナイフを用い、樹皮と形成層の境目を意識しながら作業します。

作業効率と安全性を左右するのは、刃の角度と身体の姿勢です。
刃を立てすぎると木部を傷つけやすく、寝かせすぎると剥皮が進みません。

新人作業者はまず「刃の向きを一定に保つ」ことを意識すると、安定した作業につながります。
時間はかかりますが、状態を確認しながら進められる点が手工具の強みです。

参考:木の仕事の第一歩、皮むき作業。使う工具もいろいろ。 | 遊暮銘々
参考:【丸太の皮むき】ナタ1本でむく方法と、機械をつかってむく方法。 | きこりやろう
参考:製材した丸太でベンチを作る | M’sの小箱

機械による剥皮

機械による剥皮は、大量処理が求められる現場や木材加工施設で多用されています。ローラー式や回転刃式などがあり、一定品質での高速処理が可能です。

最大の利点は、作業者が立った姿勢で作業できるため、身体への負担が軽減される点です。処理能力が高く、安定供給を求められる場合には不可欠な手段と言えます。
一方で、導入コストや設置場所の制約があるため、現場規模に応じた選択が必要です。

参考:丸太はつり機(ウッドバーカー)とは【工具の特徴・選び方解説】 | VOLTECHNO

樹皮剥ぎ作業の手順と安全管理

樹皮剥ぎは刃物を扱う作業であり、手順と安全管理の徹底が不可欠です。基本動作を守ることで、事故リスクと品質低下の両方を防げます。

  • 基本の作業手順とコツ
  • 安全装備と現場でのリスク管理

基本の作業手順とコツ

作業はまず樹皮に切れ目を入れ、木の繊維方向に沿って剥ぎ進めます。逆方向に力をかけると、刃の跳ね返りや不要な欠けが起こりやすくなります。
丸太が動かないよう、楔や保持具で確実に固定することも重要です。特に斜面作業では、固定不足が重大事故につながります。
常に刃先の向きを意識し、自身の身体や周囲に向かない動線を保つことが、基本であり最大の安全対策になります。

参考:杉の皮でカゴ作り! その1「 伐採と下処理前半ー杉の鬼皮削ぎ」 | 山の小リス
参考:【丸太の皮むき】ナタ1本でむく方法と、機械をつかってむく方法。 | きこりやろう

安全装備と現場でのリスク管理

樹皮剥ぎ作業では、防護衣・手袋・フェイスガードなどの着用が欠かせません。足場の安定確保も含め、装備の不備は事故の直接要因になります。
また、補助者との距離感を保ち、互いの死角を作らない作業配置が重要です。声かけや合図のルールを決めておくと、ヒューマンエラーを減らせます。
ヒヤリハット事例を共有し、現場全体で注意点を可視化する取り組みも効果的です。

参考:林業における労働災害防止対策 | 青梅労働基準監督署

動物による樹皮剥ぎと理由

動物による樹皮剥ぎは、人為的な剥皮作業とは根本的に異なります。
主に採食行動が目的であり、痕跡から原因動物を判別できます。被害を正しく理解することが、適切な対策につながります。

  • クマによる樹皮剥ぎ(クマハギ)
  • シカによる樹皮剥ぎ(シカハギ)

参考:エリアが拡大する樹皮剥ぎの被害について | Green Cop
参考:森林研究所たより クマ剥ぎ被害対策について(林業にいがた2013年5月号記事) | 新潟県森林研究所

クマによる樹皮剥ぎ(クマハギ)

クマによる樹皮剥ぎは、形成層を食べる採食行動が中心で、春から初夏に多く見られます。縦に長く深い爪痕が特徴で、マーキングや爪研ぎが重なる場合もあります。
被害対策としては、誘引源となる果樹や残渣の撤去が基本です。必要に応じて電気柵を併用し、侵入自体を防ぐ管理が求められます。

参考:クマ剥ぎ被害の軽減技術 | 石川県林業試験場

シカによる樹皮剥ぎ(シカハギ)

シカによる樹皮剥ぎは、冬季の餌不足時に発生しやすく、高さ1m前後を水平に広く剥ぐのが特徴です。若木への被害が多く、成長阻害や枯死につながります。
防護ネットや忌避剤、視覚的対策を組み合わせ、区画単位で管理することが最も効果的とされています。

参考:シカによる樹皮剥ぎを減らすために | ぎふ森林研究情報

まとめ

丸太の樹皮剥ぎは、木材の品質や乾燥効率、加工の安全性を支える重要な工程です。
一方で、クマやシカによる樹皮剥ぎは目的も特徴も異なり、混同せずに判断する必要があります。

現場技術の向上と適切な動物対策を組み合わせることで、森林施業の損失を抑え、持続的な森林経営につなげることが可能になります。

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