銘木の紹介|吉野杉とは?

eTREE編集室

今回は、杉の銘木の紹介として「吉野杉」を紹介します。吉野杉は、天竜杉、尾鷲桧と並ぶ、人工林における日本三大美林に数えられるとても有名な木材です。日本で最も古い林業地であるとされ、代々美しい木材を産出する技術が培われてきました。今回は、そんな吉野杉の魅力をご紹介します。

吉野杉の産地

さて、吉野杉が生産される「吉野」とは、どのような土地なのでしょうか。この章では、吉野杉のふるさと、吉野について、地勢的特徴自然的特徴に分けてご紹介します。地勢的特徴は、人やモノの流れ、すなわち文化的交流や物流に大きな影響を与え、自然的特徴は杉の成長や木材の品質に大きな影響を与えるとされています。

地勢的特徴

吉野杉は、奈良県の中南部を東西に流れる吉野川の上流にある川上村、東吉野村、黒滝村の3村にまたがる「吉野林業地域」から産出される木材をさします。

この地域は平安時代の古くから熊野三山や高野山、吉野山・大峰山への参詣、またその後の参勤交代や伊勢参りなどによる人の往来が盛んであり、また吉野川を活かして消費地である大阪や京都へ木材を運搬しやすいという水運にも長けた特徴を持ちます。

自然的特徴

吉野林業地域は標高1780mの大普賢岳を頂点とする山々に囲まれた山岳地帯で、県土の約12%を占めるとされています。大きな山に囲まれているため、年間雨量は2,000mm以上あるものの台風の被害は比較的少なく、年平均気温は14℃、冬季の積雪は30cm以下と、林木の生育に適した気候的特徴を有します。

また、秩父古生層の水成岩の風化した埴壌土であり、適度な粘性と透水性をもち栄養豊富であることも、良質な木材産出の大きなキーポイントとなっています。

吉野林業の特徴

銘木と呼ばれる吉野杉ですが、それらを生み出す吉野林業とは、どのような特徴を持つのでしょうか。吉野林業の歴史や、施業方法について、紹介していきます。

吉野林業の歴史

吉野林業の歴史は、約500年前の安土桃山時代まで遡ります。

1500年ごろ、この地を領有した豊臣秀吉が、大阪城や伏見城、その他城郭や神社仏閣に吉野の木を使うようになり、資源を持続的に産出する観点から植林が始まったとされています。

その後当地が徳川幕府のものとなった江戸時代には、商売の地大阪において吉野杉は大径木はもちろん小径木や間伐材であっても様々に活用され商品となったことで発展し、吉野川を使って多くの木材が搬出、流通しました。

また、江戸時代中期になると、年輪幅が緻密で節の少ない吉野杉は酒樽の材料として最適となり、大阪に留まらず兵庫の灘や京都の伏見などにも木材が運ばれ、これらの地域の酒造りとともに、さらに発展していきました。

極端な密植

一般的な林業では、1haあたりに苗木を3,000本植えるのが目安といわれています。 しかし吉野林業では、1haあたり8,000〜12,000本と、通常の二倍、三倍もの密度で苗木を植えます。これにより、苗木は横に太るのではなく光を求めて上へ上へと成長が促され、幹の上部と下部で太さがあまり変わらない通直な木材が生産されます。

また、高密度で植樹することにより林内が暗くなり、幹の下部に生える枝を自然に枯死させることにより、節のない美しい木材となります。

多間伐・長伐期

木がある程度の高さに成長したら、密度を調整するために間伐を行いますが、吉野林業ではこの間伐を弱度に、そして高頻度で行うことで、当初の密度から約30年もかけて1haあたり約3,000本という密度に徐々に徐々に下げていきます。

このように、弱度の間伐を繰り返し長い期間繰り返すことで、幹の成長がゆっくりとなり、年輪幅の細かい、緻密で締まった材が育まれていきます。

磨き丸太

吉野林業では、磨き丸太の生産も行われています。

磨き丸太とは、杉や桧といった木の樹皮をはいで磨きをかけて作られた建材のことで、銘木として床の間の装飾的な柱である「床柱」に主に使用され、大変商品価値の高い材です。吉野における磨き丸太生産は、江戸時代に京都より職人を招いて洗い丸太を生産したのが始まりであると言われており、日本最古の京都北山に次ぐ歴史を誇ります。

特に磨き丸太の一種である絞り丸太は、天然由来のものは偶発的にしかできず安定供給が難しいため、吉野では生きた木に人工的にこの絞りの模様を入れていく技術が発展しました。生育途中の杉の木の中からとくに通直で枝のない無節の木を選んで、長い時間をかけて人工的に絞りを入れていく技術は大変高度で手間がかかるので、この磨き丸太の生産技術もまた、吉野林業の特徴のひとつと言えるでしょう。

吉野杉の特徴

さて、このように高い技術によって生み出された吉野杉は、木材として以下のような特徴を持っています。

  • 木材としての強さ
  • 美しさ
  • 色味、ツヤ

①木材としての強さ

吉野杉はゆっくり時間をかけて成長するので、年輪幅が緻密でよく詰まった木材が生産されます。そのため、一般的な杉材に比べて強くたわみにくいという性質があります。

②美しさ

吉野杉は極端に密植して生育過程で自然に枝葉が枯れ落ちるように育てるため、酒樽として最適な、節が少なくまっすぐな木材が育ちます。そのため、木目が直線的で、意匠的にとてもすっきりと美しい特徴があります。

③色見、つや

吉野杉はほかの杉材に比べて心材の赤みがほのかにピンク色を呈するといわれ、上品でつやがあることから古くから内装材として好んで使われてきました。またその外側の辺材も白く美しく、清潔感があることから、高級割りばしなどにも加工されています。

吉野杉の用途

続いては、用途についてです。

①高級建築用材、茶室などの高級内装材

年輪幅が緻密で、通直、そして節が少ない吉野杉は、建築用材としてはもちろん、その見た目の美しさを活かし、茶室などの高級内装材や床材など、化粧材として多く用いられます。

②家具や日用品

近年では、木材としての美しさをいかし、スツールや時計、食器やテーブルウェアなども盛んに生産されています。また、緻密で滑らかな肌触りを活かして、木育玩具なども開発されています。

③割りばし

吉野の割りばしは、明治のはじめに吉野杉で作る酒樽の材料の端材が捨てられるのを惜しんで考案されたとされ、今でも当地の基幹産業になっており、奈良県は国産割りばしの生産量全国トップを誇ります。吉野杉の割りばしは、美しく清潔感があり、香りもよいことから高級品としてホテルや旅館、また贈り物にも用いられています。

まとめ

吉野杉は、長い歴史に裏付けされた高い技術により産出された、大変美しく価値の高い木材です。

多くの職人が手塩にかけて育てた吉野杉の魅力にぜひ触れてみて下さい。

また、森未来では吉野杉や磨き丸太をはじめ様々な木材を取り扱っています。気になる方は、ぜひ、お問合わせください。


磨き丸太特集

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