銘木の紹介|日光杉とは?

eTREE編集室

今回は、杉の銘木の紹介として「日光杉」を紹介します。日光杉は、生育する日光地域の自然的環境はもちろんですが、日本におけるほかの杉の銘木と比べ、より地域の歴史や人の営みとの結びつきが深い杉であると言えます。今回は、日光杉の特徴や魅力をご紹介します。

日光杉の産地

まず日光杉が生育する日光地域はどのような地域なのか、地理的特徴と自然的特徴に分けてご紹介します。

地理的特徴

日光杉は、現在の日光市、鹿沼市のおおよそ2市にまたがるエリアで生育、産出された杉を指します。この日光林業地は県土面積の1/10を占めており、栃木県最大の林業地となっています。

この地域は古くは奈良時代から平安時代初期の人物とされる勝道上人が開いた日光連山、特にその主峰である男体山を信仰対象とする山岳信仰の盛んな地域でした。

江戸時代に徳川家康および徳川家光などの江戸幕府の初期の将軍によって徳川家の廟地(先祖の霊を祀る場所)となると、1617年に日光東照宮が建立、その後1636年に江戸幕府によって五街道のひとつ日光街道が整備されました。

なお、この日光街道は、五街道のうち東海道に次いで整備された道で、それだけ日光が当時から政治的にも重要な土地になっていたことがうかがえます。

自然的特徴

日光地域の気候は内陸式気候に分類され、比較的雨が多く、一日および年間における気温差が大きいとされています。

年間降水量は1,800から2,000mm程度で、6月から9月にかけての降水に集中する一方、冬季の降水は少なくなっており、夏は暑くて湿気が多く冬は寒くて乾燥し、比較的雪は少ないとされます。

なお、杉はこのような太平洋側の気候に適した形状に変化していったものを「表杉」、日本海側の多雪地域の気候に適した形状に変化していったものを「裏杉」とよび、裏杉は雪による重圧を避けられるよう、葉が狭く枝が上方に向かって伸びていくのに対し、表杉は葉が広く、枝が水平方向に伸び、裏杉に比べると幹が細くなる傾向があるとされています。

日光杉の歴史

日光杉は、すでに述べたように自然的環境だけでなくその歴史とも大変結びつきが強い銘木です。ここでは、日光杉の歴史として、日光東照宮と日光杉並木、そして日光における林業の歴史について紹介します。

日光東照宮と日光杉並木

日光東照宮は1617年に、徳川家康を祀る神社として、2代将軍徳川秀忠により建てられました。現在そのほとんどの建築物などが、 国宝や重要文化財に指定され、1999年には世界遺産にも登録されています。

そしてその日光東照宮へ至る3つの街道に植えられたのが、日光杉並木です。これは、徳川家康、秀忠、家光の三代にわたって将軍家に仕えた松平正綱が、家康の死後、20年あまりの歳月をかけて杉を植樹し、日光東照宮の参道並木として寄進したことに始まり、江戸時代には幕府の日光奉行の元で手厚く保護されていました。

もともとこの地には杉が多く生えており、その地の気候に適した杉を植えるのが適当と考えられたこと、また杉がご神木として崇められていたことなどが植樹にあたり杉が選ばれた理由だと言われています。

日光杉並木の杉

樹齢400年にもなるこの日光杉並木の杉は、日光東照宮林務部などによって今も厳格に保護され、その木材が一般に出回ることはほとんどありません。しかし、台風や雷などの天災、また老齢化や環境の変化などにより、やむを得ず出てしまう枯損木を有効活用する意味で、伐採された日光杉並木の杉が製品として加工されることがあります。

これはごくごく限られた量なので、日光杉並木由来の杉は大変希少で、銘木中の銘木と言うことができるでしょう。

森未来では、この日光杉並木を原料とした杉も取り扱っていますので、気になる方は、ぜひご参考ください。

日光スギ特集

日光における林業と生産

日光における林業は主に

  • 杉が多かったこと
  • 日光杉並木という優れた人工林の見本が近くにあったこと
  • 水運を活かして消費地江戸に木材を運搬しやすい条件だったこと

などによって発展してきたといわれ、現在でも栃木県最大の林業地として有名です。

日光の林業によって生産される杉用材は、JAS基準を上回るような優良建築材として評価されています。

JAS基準についてはこちら
JAS材とは?|補助金を含むメリットや活用事例を解説

また、杉の葉を利用した「杉線香」が地元の特産となっており、こちらも江戸時代末期の1864年に生まれたとされています。このように、日光における杉は古くから今にかけて、生活と文化に密着した樹種なのです。

参考:とちぎの伝統工芸品|杉線香

日光杉の特徴

最後に、木材としての日光杉の特徴をみていきましょう。

木材としての特徴

日光杉並木由来の杉は、樹齢400年にも至るものです。その木肌は柔らかく、細かい木目と浮き立つような力強い木目が共存し、薄桃色でつやのある見た目が特徴的です。また、脂分が多く朽ちづらい性質をもつとされています。

一方、日光林業地域において産出される杉の木材は、雪害も少ないことから通直に育ち、中心の偏りや、円の歪み(あて材)が少ない特徴を持つとされています。

木材の用途

日光杉並木の杉は、大変希少な銘木であり、木目を生かした一枚板のテーブルや家具、また加工されて装飾品工芸品などに利用されています。

一方で、日光林業地の杉は、通直で偏りが少ないことから、優良な建築用材として用いられるのはもちろん、やわらかく、つやのある美しい見た目から、家具や建具、造作材として幅広く利用されています。

なお、日光地域における木材加工の歴史も日光東照宮の建立と縁深く、その当時全国から木工職人が集められ、当地に根付いたことがきっかけに今でもその伝統と技術を受け継ぎ、日光は木材加工の技術が大変高い地域であると言われています。

まとめ

日光杉は、日光杉並木由来の杉であっても、日光林業地由来の杉であっても、銘木としての流通量などに差こそあるものの、どちらも地域の自然や文化、歴史などに基づいた大変価値のある木材です。

皆様もぜひ、日光杉に触れて、その歴史や自然の息吹を感じてみて下さい。

また、森未来では日光杉をはじめ様々な木材を取り扱っております。

気になる方は、ぜひ、お問い合わせください。

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