森林環境譲与税とは?非課税基準や徴収の仕組みをわかりやすく解説

eTREE編集室

日本には、国土の約3分の2を占める森林が存在しており、国土環境・国民生活の安全を維持するため、日々整備が進められています。

しかし、所有者や境界不明の森林や森林整備の担い手不足といった課題があり、整備が難しくなっていることをご存じでしょうか。

そこで課題解決のために登場するのが「森林環境譲与税」です。本記事では「森林環境譲与税」についてわかりやすく解説します。また、税金の徴収方法や非課税基準などを詳しくご紹介します。

森林環境譲与税とは?

森林環境譲与税とは、森林整備・管理の課題解決に充てられる税金のことです。例えば、次のような目的で税金を用います。

  • 森林の整備に関する施策(間伐といった森林整備・管理)
  • 森林の整備の促進に関する施策(人材育成・担い手確保・木材利用の促進など)

この税金は、パリ協定の下に定められている我が国の温室効果ガス排出削減目標の達成や、災害防止のために必要な森林整備などに必要な財源を安定して得るために、令和元年(2019年)に創設され、すでに国から県市町村へと譲与が開始されています。

出典:森林環境税及び森林環境譲与税|林野庁

【2022年版】都道府県別の譲与額ランキング

森林環境贈与税の分額は、以下の条件をもとに客観的な基準で按分して金額が決定します。

  • 私有林人工林面積
  • 林業就業者数
  • 人口

参考として、令和4年(2022年)最新の都道府県別の譲与額ランキング上位5都道府県を整理しました。

【都道府県ランキング】

順位都道府県合計譲与額(千円)
1北海道3,785,185
2東京都1,892,778
3高知県1,693,556
4岐阜県1,665,004
5兵庫県1,568,870

参考:令和4年度 森林環境譲与税 譲与額(都道府県別)|林野庁

森林環境税とは?

森林環境譲与税と一緒に理解しておきたいのが令和6年度から徴収が開始される「森林環境税」です。

対象者

森林環境税と森林環境譲与税は、対象者の概念が異なります。

  • 森林環境税:国民から税金として「徴収」
  • 森林環境譲与税:都道府県・市町村に税金を「譲与」

森林環境税は、国内に住所を有する個人全員から徴収されます。所得税・住民税などを支払う納税者全員が対象であることから、会社員・個人事業主を問わず課税されるのが特徴です。

非課税基準

森林環境税は、以下に示す条件に当てはまる人のみ非課税基準を満たします。

  • 生活保護を受けている人
  • 障害者、未成年者、寡婦、ひとり親のうち年間所得金額が135万円を超えない人
  • 前年の合計所得金額が、政令で定める金額以下である人

参考:森林環境税及び森林環境譲与税に関する法律 第二章 第四条

徴収額と徴収方法【均等割】

森林環境税は、1人当たり年額1,000円が徴収されます。環境関連の税金は、今まで「個人住民税均等割」による道府県民税で年額1,000円、市町村民税で年額3,000円を徴収されていましたが、そこに上乗せする形で森林環境税がかかります。一方、森林環境譲与税は、都道府県・市町村に譲与される税金です。徴収される税金ではありません。

森林環境譲与税が必要となった理由

森林環境譲与税が必要になったのは、以下に示す2つの理由で森林経営管理・整備が不十分となっていることが原因です。

  • 林業の担い手が不足している
  • 所有者不明な土地による経営管理や整備の難しさ

詳しく見ていきましょう。

林業の担い手が不足している

現在、森林整備・管理を行う林業関係者の担い手が大幅に不足しています。

出典:令和4年度 森林・林業白書|林野庁

現在の林業従事者は、若年者層の増加が見られる一方、高齢化の波が押し寄せており、トータル的に業界全体の従事者数が減少しています。

担い手不足が進行すると、森林を整備・管理する人材が減少し、災害による倒木、生活地域への植物侵食、国産木材の生産不足といった問題から国土環境・国民生活の安全維持ができなくなります。そのため、不足する担い手を確保し、課題解決を急ぐために森林環境譲与税が創設されました。

所有者不明な土地による森林管理や整備の難しさ

日本の森林の約6割は私有地であり、その多くのエリアで林業が営まれています。しかし、私有地のうち約3割が所有者不明の森林という状況です。

所有者不明の土地は、権利の問題から所有者以外触れることができません。所有者不明な土地がネックポイントとなり、森林を活かした事業を展開できない状況です。この状況を問題視し、国が「所有者不明森林等に係る特例措置」を制定しました。

この特例措置は、森林管理者が不明だった場合において管理者の代わりに、市町村が主体となって適切な経営管理を行えるというものです。国内に残る所有者不明の森林の管理に介入できることから、森林環境譲与税を整備拡大費用のために使うことができます。

森林環境譲与税の使い道|3事例

森林環境譲与税を利用した事例は数多くあります。ここでは、各都道府県や自治体が森林環境譲与税の利用事例を5つ紹介します。

  • 地域林政アドバイザー
  • モデル林の整備と市民参加型の植林体験|静岡県三島市
  • 公共施設における木材の使用|神奈川県川崎市

それぞれの事例内容を詳しく見ていきましょう。

事例①地域林政アドバイザー

林野庁では、森林・林業の知識や経験をもつ人材として、森林経営や伐採等に関わる「地域林政アドバイザー」を雇用して活動を進めています。

例えば岩手県紫波町では、私有林・人工林の整備を進めるために、元県職員の地域林政アドバイザーの指導のもと、町が所有する森林資源や施業履歴の整理・図化を実施しています。

他にも、林野庁では、数多くの事例が公開されています。全国地域で地域林政アドバイザーが活動しているので、ぜひ参考にしてみてください。

参考:地域林政アドバイザーの取組事例集|林野庁

事例②モデル林の整備と市民参加型の植林体験|静岡県三島市

静岡県三島市では、手入れが遅れている人工林のうち林業駅営に不向きな林分を環境林に指定し、市町村自らが手入れを行って広葉樹林化を進め、、市民参加型の植林体験のモデル林を準備しています。

市民森林への興味をもってもらうことはもちろん、森林整備としても効果的な取り組みです。長期的にわたる環境への取り組みとして、数多くの地域で植林体験が実施されています。

参考:森林環境譲与税の取組事例集

事例③公共施設における木材の使用|神奈川県川崎市

神奈川県川崎市では、神奈川県が掲げた取り組みである「平成31年4月 神奈川県内の市町村における森林環境譲与税を活用した木材利用に関するガイドライン」をもとに、市内の建築物に対し、木材の利用を促進させる方針を公開しました。国産木材を活用し、公益性と公共性の高い施設を対象に木造化・内装木質化等を行うことで、脱炭素社会の実現だけでなく、市民が木材と触れ合い学ぶ機会を創出することを目的としています。

参考:平成31年4月 神奈川県内の市町村における森林環境譲与税を活用した木材利用に関するガイドライン

まとめ

森林環境譲与税そして森林環境税は、国土の森林環境を維持するために必要な税金の徴収・譲与の取り組みです。減少しつつある林業従事者の担い手不足を解消するきっかけになるほか、環境対策として温室効果ガス排出削減としても効果を期待できます。

また、日本国内では、頻発する災害への対応や森林所有者不明の土地が多いことなど、早急に解決すべき問題が山積みです。そして、その対策として効果を発揮するのが、森林環境譲与税です。森林整備への取り組みとして、譲与税により今後どういった変化が見込まれるのか、動向を追ってみてはいかがでしょうか。

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