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2025.10.18
森林は、木材の供給だけでなく、生物多様性の保全など、私たちの暮らしを支える多面的な役割を担っています。
しかし、一度伐採や利用が行われた森林を放置すると、その機能を十分に発揮できなくなる恐れがあります。そこで重要となるのが「森林の更新」です。
森林の更新には自然の力を活かす方法と、植栽による方法があり、それぞれに特徴や課題があります。
本記事では、森林の更新方法とその選択基準、そして持続可能な森林管理に向けた取り組みについて解説します。
目次
森林は、生物多様性の保全や環境の維持、土砂災害の防止、さらには林産物の生産など、多面的な機能を持ち、私たちの生活と深く関わっています。
こうした森林の多様な機能を維持するためには、伐採や利用のあとに生じた跡地を、確実に再び森林として戻すことが必要です。
一度人間の手が入った森林は、そのまま放置しておくと元の状態を維持することが難しくなるため、継続的な管理が求められます。
そのため、森林の利用目的に応じて、適切な更新方法を検討することが重要です。
森林の更新方法としては、主に次の2つの方法があります。ここでは2つの方法について詳しく解説していきます。
「天然更新」とは、森林の伐採後に植栽を行わず、自然に落ちた種子(天然下種)や切株から萌芽を育てて樹木を定着させる方法です。
自然の力を活かして森林を更新する手法であることが特徴です。
更新に用いる樹種によっては、植栽やその後の手入れにかかる費用を一部抑えられるため、コスト負担を軽減できる場合があります。
しかし、自然任せの方法であるため、森林の成長を予測しにくく、森林が成熟し、木々が十分に成長した状態を把握しにくいというデメリットもあります。
「人工造林」とは、苗畑などで人の手によって一定期間育てた苗木を森林に植栽し、更新する方法です。
天然更新と比較すると、スギ、ヒノキ、マツなどの主要な樹種の場合には、成長の予測がしやすいこと、施業体系が確立していることといったメリットが挙げられます。
一方で、植栽や植栽した後の手入れに費用がかかるため、木材の収穫に至るまでの経費をあらかじめ考慮しておく必要があります。
森林の更新方法としては、主に人工造林と天然更新と2つの方法がありますが、気候、地形、土壌といった自然条件などに応じて、適切な更新方法を選択する必要があります。
ここでは、それぞれの更新方法の選択と判断基準について、岐阜県の事例を参考に解説します。
人工造林は、植栽なしでは適切な更新が難しい森林や、多面的な機能を維持するために植栽が適している森林で行われます。
また、木材などの生産機能が期待され、将来的に育成単層林として維持する森林でも実施されます。
さらに、1ヘクタールを超える人工林の伐採跡地では、原則として人工造林による更新が必要です。
植栽に用いる苗木は、成長が良好な樹木や、花粉症対策として少花粉スギなどを積極的に選定することが求められます。
天然更新の成否は、森林を取り巻く自然環境によって大きく左右されます。
天然更新は、前世代の稚樹の生育状況や母樹の有無、森林の現況、気候・地形・土壌などの自然条件、そして林業技術の体系を踏まえて行われます。
つまり、主に自然の力を活かすことで、適切に森林を更新できる場所で実施することが条件です。
また、天然更新を行う期間は、伐採が終了した年度の翌年度の初日から起算して5年を経過する日までと定められています。
森林を更新する際は、自然条件だけでなく、その森林の役割や目的に応じて適切な方法を選ぶ必要があります。
たとえば、スギやヒノキなど針葉樹を対象とした木材生産を目的とする場合には、人工造林による更新が基本とされます。
人工造林では植栽や管理が計画的に行いやすく、木材の収穫まで安定した管理が可能です。
一方で、天然更新は種子散布や萌芽など自然の仕組みに依存するため、計画通りに進まないことも少なくありません。
そのため、木材を安定的に確保したい場合には、人工造林が確実な方法といえます。
反対に、収穫を主目的とせず、森林の多面的機能の維持を重視する場合には、天然更新も有力な選択肢となるでしょう。
前述の通り、収穫を目的とした森林で天然更新を行うには、さまざまな課題があります。
スギやヒノキは天然更新が難しく、特に生態系として成熟段階に達する前の40〜50年生の人工林では、自然の理に適っていないと言えます。
また、日本の森林はササや低木層が豊富なため、伐採後にはササやススキが繁茂することも多く、根絶も容易ではありません。
さらに、種子生産には豊凶現象があり、例えばブナなどは豊作が数年に一度しかなく、更新の機会が限られます。
加えて、天然更新では樹種を選べないため、短命の陽樹ばかりが生える可能性もあります。
つまり、人工林で天然更新が可能となるのは、若齢期に広葉樹の稚樹が定着しているなどの特殊な条件下に限られてしまうのです。
森林での伐採の実態や、伐採後の森林の更新状況を把握することは、森林を適切に管理・利用していくうえで大切です。
ここでは、適正な森林施業の確保に向けた具体的な取り組みとして、次の2例を紹介します。
森林所有者などが伐採を行う際には、事前に市町村長へ伐採と伐採後の造林計画を届け出ることが義務付けられています。
林野庁は、適正な伐採と更新を一層確保するため、2022年9月に「伐採造林届出制度」を見直しました。
これにより、伐採造林届の提出時には、権利関係や境界関係を確認できる書類の添付が統一的に求められることとなり、2023年5月から適用が始まっています。
林野庁では、無断伐採の未然防止を図るため、2022年6月より、衛星画像を活用して伐採状況をインターネット上で把握する「伐採把握システム」について、全都道府県・市町村への提供を開始しました。
伐採把握システムは複数提供されているため、各自治体の状況や伐採地情報の用途に応じて選択することが推奨されています。
参考:伐採造林届出の効果的運用に向けた各種伐採把握システム利用の手引き|林野庁
森林は環境保全や木材生産など多面的な機能を持ち、伐採後には確実な更新が必要です。
更新方法には、自然の力で再生する「天然更新」と、人の手で植栽する「人工造林」があり、自然条件や目的に応じて選択することが求められます。
木材生産を目的に行う森林の更新では、計画的で管理が容易な人工造林が基本となり、天然更新はまだまだ課題も多い状況です。
林野庁は、伐採造林届出制度の見直しや衛星画像による伐採監視を進め、適正な森林施業の確保を図っています。
持続可能な森林経営の実現に向けて、森林の確実な更新と適切な管理が求められています。
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