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2025.12.23
宅地の境界ぎりぎりに立つ高木や、電線に枝がかかりはじめた樹木、台風被害で傾いた危険木など、通常の伐倒では対応が難しいケースは少なくありません。こうした場面で必要になるのが特殊伐採です。
ロープを使ったツリークライミングや、クレーンを用いた吊り降ろしなど、高度な技術と安全管理を前提とした作業になります。
本記事では、特殊伐採の意味と費用構造、必要な道具・資格、ビジネスとして拡大していく際のポイントを整理します。
目次
特殊伐採とは、山林での一般的な伐倒とは違い、住宅密集地や道路際、電線の近く、急斜面、高所など、制約の多い現場で行う伐採作業を指します。
木を根元から一気に倒す方法が取れないため、樹上に作業者が登り、ロープや滑車を使って枝や幹を少しずつ切り分け、吊りながら安全な場所へ降ろしていきます。
この作業には、ツリークライミングと呼ばれるロープ登高技術や、クレーンを使った吊るし切りのノウハウが欠かせません。
周囲の建物や人、電線に被害を出さないことが最優先になるため、一般の伐採よりも高度なリスク評価と安全管理が求められます。
林業や造園業にとっては、都市部や里山近接地でのニーズに応えていくうえで、避けて通れない分野になりつつあります。
参考:林野庁 東北森林管理局 | ツリークライミングを基本とした特殊伐採について
特殊伐採の費用は、「高さ」「太さ」「周囲の条件」「必要な機材」の組み合わせで大きく変わります。樹高が高く、胸の位置での直径が太い木ほど作業量が増え、リスクも高いです。
さらに、建物や塀、電線、道路交通など、守らなければならないものが多いほど、ロープワークやクレーン作業の手順が複雑になり、単価は上がります。
比較的条件が良い中木であれば数万円台で収まることもありますが、ツリークライミングや吊るし切りが必要な大木になると、一本で十万円以上になる場合もあります。
複数本の伐採や大型クレーンを使う現場では百万円を超えるケースも珍しくありません。
見積もりを受け取る際は、「高さと直径」「本数」「危険度」「処分・運搬費」「重機やクレーンの費用」がどのように積算されているかを意識しておくと、外注先の比較やコスト管理がしやすくなります。
参考:株式会社アーボプラス | 特殊伐採の料金目安
参考:株式会社信太商店 | 大木の伐採費用・相場を解説|抜根も含めた処分費用は?100万円かかるケースもある?
特殊伐採は、チェーンソーだけを扱えればよい作業ではありません。
樹上に登るためのロープとハーネス、高所で身体を支えるクライミング器具、重たい幹を支えるワイヤーやスリング、場合によってはクレーン車や高所作業車も必要です。
これらの機材を適切に組み合わせ、安全な手順で運用することが、事故を防ぎつつ利益を確保する前提条件になります。
参考:林野庁 東北森林管理局 | ツリークライミングを基本とした特殊伐採について
ツリークライミングは、クライミングロープと専用のハーネスを使って樹上に登り、枝や幹の上で安全を確保しながら作業を進める技術です。昇高器や下降器、ブロックやプーリーといった器具を組み合わせ、小さな力でロープを操作し、身体と伐採材の両方をコントロールします。
吊るし切りは、伐った枝や幹をいきなり落とさず、ロープやワイヤー、スリングで吊り下げながら少しずつ降ろす方法です。
クレーン車や高所作業車を併用する現場も多く、オペレーターとの連携が安全性を左右します。これらの技術は、道具の使い方だけを覚えればよいわけではありません。
作業前の危険予知、墜落防止の手順、地上での誘導や通行規制、行政への申請など、全体の段取りを含めて初めて成り立ちます。
参考:林野庁 東北森林管理局 | ツリークライミングを基本とした特殊伐採について
参考:株式会社大住緑栄 | 吊るし切りの料金比較と選び方!最適な業者を見つけるためのポイント
特殊伐採を自社で手がける場合、まずは機材への投資を避けて通れません。高出力のチェーンソーに加え、クライミング用ロープやハーネス、ヘルメットやランヤード、滑車やカラビナ、クレーンを使うなら吊り具一式、伐採材を運ぶためのトラックや薪割り機などが必要になります。
道具は購入して終わりではなく、定期的な点検と部品交換、法令に基づいた検査や記録も欠かせません。ロープやハーネスは傷みがあればすぐに更新する必要があり、安全を優先するとどうしても維持コストはかさみます。
そのため、単価設定では作業員の人件費だけでなく、機材の減価償却やメンテナンス費、教育・講習の費用まで含めて考えることが必要です。
効率化と安全確保の両方を意識した装備選びと更新計画が、結果的に収益性を左右していきます。
参考:林野庁 東北森林管理局 | ツリークライミングを基本とした特殊伐採について
高所でチェーンソーを扱い、危険木を処理する特殊伐採では、経験と資格の両方を備えた人材が不可欠です。
伐木作業に関する特別教育やチェーンソー作業の講習に加え、造園施工管理技士やクレーン運転士、現場を統括する責任者のスキルが組み合わさることで、安全で信頼性の高いチームが成り立ちます。
特殊伐採の現場では、伐木作業に関する特別教育やチェーンソー作業の特別教育を受けた作業員が中心になります。そこに、造園施工管理技士のように現場全体の工程や安全を管理する立場の人、クレーンや高所作業車を操作する有資格者、樹木の健康状態を診断できる樹木医や樹木管理責任者といった役割が加わります。
近年は、自治体や業界団体が主催する特殊伐採向けの講習会も増えており、地域名と「特殊伐採 講習」といったキーワードで探すと、現場に沿った内容の研修が受講可能です。
資格があることは、発注者への説明や保険加入の条件としても有利に働き、事故が起きた際の責任範囲を明確にするうえでも重要です。
参考:RINDO | 【未経験者必見】特殊伐採の作業内容や必要資格をわかりやすく解説
求人情報を見ると、特殊伐採を担うスタッフは、林業部門や造園・外構部門の中で高所作業や危険木処理を任される専門職として採用されることが増えています。
賃金水準は地域や会社によって差がありますが、危険作業手当や出張手当などを含めると、一般的な伐採作業より高く設定されているケースも少なくありません。
事業者側の視点で見ると、「単発の応急対応」で終わらせるのか、「定期的な樹木管理契約」の入口として位置づけるのかで、収益構造は大きく変わります。自社でクレーンや高所作業車を保有し、ロープワークに長けた人材を複数育成できれば、高難度の案件を同時並行で処理できるようになります。
ウェブや口コミで実績を見える化し、専門性の高いブランドとして認知されることが、「儲かる特殊伐採」へ近づくためには重要です。
参考:RINDO | 【未経験者必見】特殊伐採の作業内容や必要資格をわかりやすく解説
林業や造園業として既に伐採業務を担っている事業者が、特殊伐採に本格的に取り組むかどうかを判断する場面も増えています。
最初からすべてを自社で賄うのではなく、まずは信頼できる専門業者へ外注しながらノウハウを蓄積し、徐々に自社施工の割合を増やす段階的な進め方も有効です。
自社で特殊伐採を請け負う場合は、機材の準備、人材育成、安全管理体制、保険や労務管理、そして営業や見積もりの仕組みをセットで整える必要があります。
需要の山場は、台風や大雪の後、高齢木が増えた住宅街、都市の高木化した街路樹の更新など、ある程度予測がつく場面が多くなります。
こうしたタイミングに合わせて、待機体制や単価設定を準備しておくと、事業を拡大しやすくなるでしょう。安く依頼したい発注者の気持ちを理解しつつも、リスクとコストを正しく説明し、適正価格で受注できる体制づくりが重要です。
参考:林野庁 東北森林管理局 | ツリークライミングを基本とした特殊伐採について
危険木や支障木をどうにかしたい発注者にとっては、「どこに頼めばよいのか」「いくらかかるのか」が最初の不安になるでしょう。
発注側が基本的な流れとポイントを理解しておくと、業者選定での失敗やトラブルを減らせます。
ここでは、依頼先の選び方と見積もりから施工までの一般的なフローを整理します。
特殊伐採を依頼できる先としては、山林を主な現場とする林業会社だけでなく、庭木や街路樹の管理を行う造園業者、樹木医やツリークライマーが所属する専門会社など、いくつかの選択肢があります。
電線や建物に近い高所の伐採では、クレーンや高所作業車を自社で運用している事業者や、ロープワークの実績が豊富な事業者の方が、現場に合った提案をしやすくなります。
見積もりを依頼する際には、これまでの施工事例や、安全管理に関する社内ルール、作業員がどのような資格や講習を受けているかを確認しておくと安心です。
伐木作業やチェーンソー作業の特別教育を修了しているかどうかも、一つのチェックポイントになります。
一般的な流れは、まず現地調査から始まります。業者が現場を訪れ、立木の高さや太さ、傾き、周囲の建物や電線、道路状況などを確認し、どのような方法で伐るのが安全かを判断しなければなりません。
そのうえで、伐採作業にかかる費用、枝葉や幹の搬出・処分費用、クレーンや高所作業車が必要な場合の料金などを整理し、見積書として提示します。
発注者は内容と金額を確認し、必要であれば複数社の見積もりを比較検討します。発注後は、道路の使用許可や近隣への挨拶を済ませておくことが必要です。
作業当日は、安全確認を行ってから樹上やクレーンに人を上げ、枝や幹を分割して降ろしていきます。伐採後の木材は、現場で玉切りして持ち帰り、チップ化や薪としての再利用、焼却処分などに回されます。
参考:株式会社信太商店 | 大木の伐採費用・相場を解説|抜根も含めた処分費用は?100万円かかるケースもある?
特殊伐採は、住宅地の危険木や都市の高木、災害時の倒木リスクへの対応など、これからさらに需要が高まる分野です。
高度な技術と設備が必要な一方で、その専門性が適正な単価を支える根拠にもなります。林業・造園関係者がビジネスとして取り組む際には、費用構造、機材投資、資格と人材、発注フローを整理し、自社のどこまでを内製化するのかを見極めることが大切です。
安全性や法令遵守を軽視した安請け合いは、事業継続のリスクにつながります。専門性を磨き、信頼できる体制を築くことが、特殊伐採で持続的に稼ぐための前提条件になります。
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