木材加工

2024.4.8

実加工の種類を解説!本実と相じゃくりの違いや用途別の使い分けを押さえよう

eTREE編集室

フローリングや羽目板を手早くきれいに、かつ、丈夫に施工するために必要になるのが、実加工です。実加工にはいくつかの種類があり、床材や壁材、内装や外装などの用途による使い分けが必要です。

この記事では、実加工の種類や関連する用語、施工後の見え方を左右する継ぎ目の仕様などを解説します。
用途ごとに最適な実加工を選択することで、施工の完成度を高められます。まずは、実加工の基礎知識を身につけましょう。

実加工(さねかこう)とは「板を連結させるための木材加工」

実加工とは、フローリングや羽目板を組み合わせるために、板の側面に施された凹凸をつける加工方法のことです。
通常、実の凸部分を雄実(おざね・おすざね)、凹部分を雌実(めざね・めすざね)と呼びます。
​​両者をパズルのようにぴったりと組み合わせることで、隣り合う板同士を接合するのです。

実加工があると、側面に何も加工をしていない板を単純に並べるよりも、板同士を強固に接合することができます。実加工には、板材のズレを防止し、防水性や気密性を高める働きがあるのです。

実加工の種類に関する用語解説

実加工には、凹凸の形状や組み合わせ方の違い、実を施す場所などによって、いくつかの種類があります。
ここからは、実加工に関して理解しておきたい以下の用語を解説します。

  • 本実(ほんざね)
  • 相じゃくり(あいじゃくり)
  • 雇い実(やといざね)
  • 四方実(しほうざね)

本実(ほんざね)

本実とは、板の接合部分の一方を凹、もう一方を凸の形状に加工し、両者を組み合わせる連結方法です。

雄実と雌実がしっかりかみ合うため、強く結合できるという特徴があります。

また、施工後、木材の変形などで段差ができることを抑えられる点もメリットです。

そのほか、雌実(凹側)のくぼんだ部分に釘を打ち込んで固定する「隠し釘打ち」をするため、表面からは釘が見えずきれいな仕上がりが特徴です。

なお、本実加工を施した板の幅は、通常雄実の長さを除いた「働き巾」で表します。雄実を作るために板を切り欠くため、働き巾は加工前の板の幅よりも狭くなります。

床材や壁材など内装材の接合には、本実加工が用いられることが多いです。

参考:本実(ほんざね)について​​|東京木材問屋協同組合​​

相じゃくり(あいじゃくり)

カキ状(一段の階段状)の合わせ部分を組み合わせる接合方法を「相じゃくり」といい、本実と並び代表的な実加工の一つです。

相じゃくり​​加工は、本実加工に比べて施工が簡単です。

固定のための釘は、接合部分の表面から打つため、施工後も釘頭が見えます。
見た目は本実に劣りますが、釘が抜きやすいため取り外しが容易で、部分的な交換がしやすいというメリットがあります。

繋ぎ目に水がたまりにくく水捌けが良いため、雨にさらされる外壁板などに多く用いられる接合方法です。

そのほか、本実に比べて薄い板でも加工できるという特徴もあります。本実には12mm程度以上の板の厚みが必要ですが、相じゃくりは7mm程度の薄い板でも加工可能です。

参考:本実(ほんざね)について​​|東京木材問屋協同組合​​

雇い実(やといざね)

材本体を両方とも雌実に加工し、雌実同士を合わせてできる溝に、違う材で作った雄実を挟み込んで接合する方法が雇い実です​​。
実を本体と別の材で「雇う」ことから、「雇い実」と呼ばれます。

テーブルの天板の剥ぎ方としてよく使われる方法です。

雇い実には、板幅を最大限に使えるというメリットがあります。本実や相じゃくりは、雄実の凸部分を作るために材を切り欠くため、板幅が狭くなってしまうのです。

参考:本実(ほんざね)について​​|東京木材問屋協同組合​​

四方実(しほうざね)

床や壁のように幅広く面積を取る場合には、長辺だけでなく短辺のつなぎ目も必要です。

一枚の板に対して、四面すべて実加工されているものが、四方実です。
巾方向(フローリングでいうと板の端の部分・短手)の雄雌の加工を、エンドマッチと呼びます。エンドマッチの実を雄雌どちらにするかは、商品によって異なります。​​

四方実にすることで、複数の板材をよりスピーディに美しく組み上げられるようになります。

接合部の見え方の種類

実による接合部分の見え方は大別して2種類あり、どちらを用いるかで施工後の印象が異なります。

  • 突付(つきつけ)
  • 目透し(めすかし)

それぞれの特徴を説明していきます。

突付(つきつけ)

材と材の表面がぴったりとくっつくのが、突付です。主にフローリングに使われます。

目違いが目立つ(継いだ板面同士が同一平面にならない)ことがあり、それを和らげるために小さく面取りすることが多くあります。
面取り以外に隙間がないため、仕上がりはすっきりとした印象です。

主にデザイン性を高めるために、隙間の断面がV字になるように大きく面取りする場合もあります。この形状はV溝と呼ばれ、シャープな印象の仕上がりになります。

目透し(めすかし)

材と材の表面に隙間が空くのが、目透かしです。継ぎ目が凹んで段差ができるため床材には不向きで、主に壁材(羽目板)に使われます。

無垢材を使用すると、湿度の変化などによる木の動きは避けられません。
目透かしには、あらかじめ隙間を作り遊びを持たせておくことで、無垢材の膨張・収縮を吸収できる実用面の効果があります。施工後、部分的に生じる隙間や段差が目立ちにくくなるのです。

意匠面では、隙間で陰影ができ、継ぎ目がはっきり見えるという特徴があります。
さらに、隙間で段差ができるため大きく面を取ることが多いです。
その場合、より立体的な見え方になり、無垢材の厚みや質感を十分に感じられる仕上がりになります。

実加工の使い分け

実加工は、その種類や継ぎ目の見え方の組み合わせによって、用途ごとに向き不向きがあります。
フローリング・羽目板・外壁には、それぞれどのような継ぎ方が最適なのかを見ていきましょう。

フローリング

フローリングの施工に最適なのが、本実突付加工です。

隣り合う板の間に隙間を作らないため、段差がなく、隠し釘のため表面から釘が見えないきれいな仕上がりとなります。

ただし、特に無垢材フローリングは、木の膨張・収縮によって隙間が生じる可能性があるため、注意が必要です。
対策として、施工後の木の動きを加味して、適切な隙間を設けて施工ができる業者を選ぶ
ことが挙げられます。
フローリングの割れや収縮のリスクを高めるホットカーペット、コタツなどは施工後に「断熱マットの上に置く」「洗面所や窓際など水濡れしやすい箇所にはマットを敷く」などの対策が必要となります。

羽目板

壁や天井など、床以外の内装用途に適しているのが、本実目透し加工です。

目透しは突付と異なり、はじめから接合部分に隙間があるため、無垢材の弱点である施工後の膨張・収縮による歪みや隙間を吸収してくれます。

また、先述の本実突付と同様に釘を隠して施工するため、見た目がきれいに仕上がり、内装として最適です。

外壁

風雨にさらされる外壁に向くのは、施工後の表面が平坦で水が流れやすい相じゃくり加工です。
特に多く用いられるのが、「水切り目透し相じゃくり」の組み合わせです。接合部分の片側を垂直ではなく斜めに加工し、その傾斜を伝って水が流れる仕組みになっています。

釘は板の表面から打つため、本実加工より見た目が悪い点はデメリットです。
しかし、その一方で数年に一度の交換が必要になることから、外壁材としては「更新作業が容易に行える」という点は、メリットにもなります。

また、相じゃくりは本実よりも施工の難易度が低いため、初心者でも貼りやすいでしょう。

まとめ

複数の板を連結させて広い面積を埋める際に欠かせないのが、実加工です。
実加工を施すことで、単純に板を並べるよりも、板同士をしっかりと接合することができます。

実加工には、その形状によって種類があり、用途によって使い分けることが必要です。また、継ぎ目の見え方も一つではなく、意匠性と実用性の両方の観点でさまざまな工夫がなされています。

適材適所の実加工を用いて、完成度の高い施工を目指しましょう。

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