住宅の快適性は何で決まる?健康にも影響が大きい要因とは

eTREE編集室

快適な住まいで暮らしたいとは誰もが願うことですが、住宅の快適性を決定づける要因は多岐にわたり複雑です。

何か一つの要因だけで快適性は決まりませんが、室内で感じる暑さ寒さは、住みやすさや健康に大きな影響を与える項目であることは確実です。

本記事では、室内の温熱環境を左右する因子や、寒暑が人に与える影響などを解説します。

最適な温熱環境に近づける工夫も紹介するので、快適な住まいの実現に役立ててください。

住宅の快適性は何によって判断されるのか?

住まいの快適性を決める要素は、空気環境暑さ寒さ明るさ室内の意匠性防音性耐震性などです。快適な生活空間は、これら複数の要素が組み合わさって実現できます。

中でも、適切な温熱環境は人の健康にも直接影響するため、優先して考えたい要素の一つです。

快適な住まいを作る「室内の温熱環境」

一年中暑くも寒くもない家では、快適に過ごせることが容易に想像できます。

さらに、住宅内の温熱環境は、快適性だけでなく健康にも影響します。極端な暑さ寒さは人の心身にストレスを与え、健康を害することもあるからです。時には命に関わるような事態を招くこともあるので、適切な温熱環境は、快適かつ健康に過ごせる住まいに欠かせません。

参考:国土交通省|住宅の温熱環境と健康の関連

居住環境の暑さや寒さを決める6つの要素

人が建物内で感じる暑さや寒さは、下記の6要素に影響を受けています。

【環境側の要素】

  • 気温
  • 湿度
  • 気流
  • 放射熱

【人間側の要素】

  • 着衣量
  • 運動量

ただ、このうち、住宅側がコントロールできる部分としては「環境側の要素」です。住宅の快適性を向上させるためには「温度」が重要だということがわかります。

居住環境をコントロールしやすい高気密・高断熱住宅

住宅を高気密化高断熱化すると、外気温の遮断によって快適な室内環境を保ちやすくなります。気密性が低ければ、冷暖房で気温をコントロールしても、外気温の影響を受けて運転効率が悪くなります。断熱材を施工しても、断熱性能を十分活かせません。

断熱性能もまた、住みやすい住環境に必要不可欠です。気密性と同様に冷暖房効率をUPさせる働きのほかに、同じ気温でも体感温度を快適に保つ効果があります。

高断熱化された住宅では、断熱材が外気温の影響をシャットアウトするため、内壁・天井・床などの表面温度と室温の差が小さくなります。放射熱の影響を抑えられるので、室温以上に暑い・寒いと感じることがなくなるのです。

また、これまでの断熱材はロックウールやグラスウールが一般的でしたが、昨今では欧州を中心に木繊維断熱材も普及しています。気になる方は、下の記事もご覧ください。

温熱環境がもたらす健康な暮らし

住まいの極端な暑さ寒さや気温差は、住む人の健康に悪影響を及ぼすことが分かっています。場合によっては命に関わることもあるので、油断は禁物です。近年、自宅での事故が増えている高齢者は、特に注意しましょう。

食事や運動と同様に、最適な温熱環境は健康を維持する上で欠かせない要素といえます。温熱環境が体に及ぼす影響を、具体的に確認しておきましょう。

寒さが体に及ぼす影響

寒い室内環境が健康に及ぼす主な影響は、下記の通りです。

  • 循環器疾患(脳血管疾患、心疾患)
  • 呼吸器疾患
  • アレルギー疾患

循環器疾患は、居室と浴室・トイレなどの激しい気温差による急激な血圧の上下が引き金になることが知られています。断熱性能の低い家に住む高齢者の浴室事故やトイレ事故は頻繁に起こるので、注意が必要です。

冬は、空気の乾燥も健康に悪影響を及ぼします。湿度が低いとウイルスに感染しやすく、風邪に代表される呼吸器疾患を招くからです。

また、暖房による屋外との気温差で室内に生じた結露は、カビやダニを発生させ、アレルギー疾患につながる可能性も指摘されています。

暑さが体に及ぼす影響

暑い室内環境がもたらす健康影響の代表は「熱中症」と「脳梗塞」です。

熱中症は、高温多湿な環境に長時間身を置くことで、体に熱がこもった症状で、命が危険にさらされる場合もあります。屋外での運動中以外に、室内で何もしていない時にも起こり得ます。近年、住宅で熱中症を発症する高齢者が増えており、適切な冷房使用などの対策が求められています。

脳の血管が詰まる脳梗塞は、夏場に多く発生します。発汗によって体が水分不足の状態になり、血流の悪化や血栓の発生につながるからです。特に、暑い部屋で寝ると脱水が進みやすいため、注意が必要です。

睡眠に及ぼす影響

寝室は、暑すぎても寒すぎても、覚醒の回数が増えて睡眠の質が低下することが分かっています。就寝時の室温は、 パジャマや寝具をまとうことを考慮した上で、13〜29°Cの範囲内であることが望ましいとされています。

さらに、室温だけでなく、湿度が高い環境でも覚醒は増加します。睡眠障害は、うつ病や認知症、生活習慣病との関連も指摘されています。健康を保つためには、人生の3分の1を占めるとされる睡眠中の温熱環境にも気を遣う必要があります。

参考:住環境計画研究所|住宅における温冷熱環境に関する 快適性評価指標の開発に関する調査

寒さの原因は気密性の低さ

国内に多く存在する築年数の長い木造住宅は、温熱環境が劣悪である場合が多数です。本来、木材はコンクリートよりも断熱性能が高い素材です。それにもかかわらず、古い木造住宅が得てして寒いのは、低い気密性断熱材の劣化断熱性能の低い窓、などが理由として考えられます。

気密性の低さはすきま風を招き、断熱性能の低い壁や窓からは熱が逃げていくことで、暖房が効きづらいのです。

古い木造住宅の温熱環境を改善する工夫

国内戸建て住宅の半数以上を占めるのが、木造です。近年、木造も高気密・高断熱化が進んでいますが、先述の通り古い木造住宅は、冬場に寒すぎる場合があります。

これまで見てきたように、劣悪な温熱環境での生活は、心身ともに悪影響を受けるので、何らかの対策をするのが賢明です。住まいの新築はハードルが高く誰にでもできることではありませんが、できる範囲で工夫してみましょう。簡単でコストもかからない手軽な方法と、補助金も利用できる断熱リフォームを紹介します。

参考:総務省統計局|平成30年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計 結果の概要

【個人で可能】簡単・低コストな対策

気密性の低さを補うには、市販のすきまテープが役立ちます。窓・扉・壁と床のすきまに貼りましょう。厚手のカーテンを長めに使うのも、窓からのすきま風防止に有効です。

窓が断熱性能の低いアルミサッシの一重ガラスであれば、逃げる熱は大きいものです。窓際に立てかける防寒ボードは、手軽にできる対策です。

そのほかに、窓に貼る断熱シートも選択肢の一つです。

防寒ボードや断熱シートよりもコストをかけられるのであれば「ウインドラジエーター」も検討してみましょう。ウインドラジエーターとは、暖かな上場気流を発生させて、窓からの冷気を遮断する窓下専用のヒーターです。少ない消費電力で、窓からの冷気の侵入を防いでくれます。住まいが変わっても持ち運びできるので、引越しの多い人にもおすすめです。

【補助金が出る場合も】リフォームで根本対策

断熱リフォームなら、さらに踏み込んだ対策が可能です。

予算が心配になるかもしれませんが、脱炭素社会の実現を掲げて住宅の省エネ化を推進している国は、補助事業を設けています。国土交通省・経済産業省・環境省が連携して展開する「住宅省エネキャンペーン」では、新築だけでなく、窓・壁・天井・床などの断熱改修にも補助金が出るので、対象であればぜひ活用しましょう。

参考:国土交通省・経済産業省・環境省|住宅省エネ2023キャンペーン

まとめ

住宅の快適性はさまざまな要素に影響されますが、温熱環境の重要度が高いことに疑いの余地はありません。

健康への直接的な影響が大きいので、現在の住まいの温熱環境に問題を感じるなら、できる範囲で対策を取るのがおすすめです。国が用意した断熱リフォームへの補助金も上手に利用しながら、暑さ寒さに煩わされることのない、健康にのびのび暮らせる住まいを目指しましょう。

森未来は木材情報を集約したプラットフォーム「eTREE」を展開しています。プロの木材コーディネーターが、あらゆる木材の調達や加工をサポートします。木材の調達・加工にお困りであればぜひご相談ください。

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