木材を保存する|長期間、適切に保存するための方法について解説

eTREE編集室

DIYを行う方や木材を扱う方にとって、悩みの種にもなるのが余った木材の保存方法ではないでしょうか。

不適切な方法で保管していると、虫害や腐敗の原因となり使用できなくなってしまいます。そこで今回は、長期間、適切に保存するための方法について解説します。

木材を劣化させる原因

木材を劣化させる原因は、大きく下記の2つに分けられます。

  • 生物的劣化
  • 非生物的劣化

それぞれ詳しく解説します。

生物的劣化

生物的劣化の原因となるのは、木を腐らせる菌類「腐朽菌」による腐朽や、「シロアリ」や「キクイムシ」などの虫類による食害です。

湿度や温度などの環境条件がそろうことで繁殖し、急激に劣化が進行します。気づいた時には大きな被害になっていた、というようなケースも多々見られます。劣化により、木材としての性能や製品としての価値が大きく損なわれることになるため、保存環境の整備は重要です。

非生物的劣化

非生物的劣化とは、熱や光、乾湿の変化に加えて、荷重の繰り返しや火災による燃焼など、生物以外に起因する木材の劣化のことです。

具体的には、乾湿の変化によって木材の細胞壁が破壊されたり、木材を構成する「リグニン」が紫外線によって分解されたりすることが挙げられます。

また、火災による燃焼や、継続的な荷重によって木材としての性質が損なわれることも含まれます。

非生物的劣化の場合、一般的に被害の進行は緩やかで、保存中に激しく劣化するケースはまれと言えるでしょう。

木材の適切な保管方法

木材を適切に保管するために必要なポイントは下記の4つです。

  • 「カビ対策」
  • 「乾燥対策」
  • 「腐朽菌対策」
  • 「虫対策」

具体的な方法について解説します。

寝かせて桟積み|カビ対策

カビは、湿度や温度が高い場所を好みます。木材をカビから守るためには、木材の間に空気を循環させて、湿気をこもらせないことが重要です。

カビ対策に効果的な保存方法として、桟積みがあります。桟積みとは、木材と木材の間に桟木と呼ばれる細い木を渡して積み重ねていく方法です。桟木の幅の分だけ隙間が空くことで空気が循環し、カビの抑制と木材の乾燥に効果があります。

立てて保管|乾燥対策

生木を保管する場合は、根元を上にし、立てての保管がおすすめです。木は伐採した後も生きていた時と同じように、根元から葉の方に向けて水分が循環します。

そのため、根元を上にすることで、木材の中の水分が緩やかに抜け、乾燥しやすくなると言われています。根元を上にすることで、新たな水分吸収も抑えられるとも言えるでしょう。また、立てることで大量の木材も省スペースで保管できることはメリットのひとつです。

海水に浸す|腐朽菌対策

現在ではあまり行われていませんが、昔は伐採した木材を海水に付けて保管していました。水につけることで腐朽菌が生きるために必要な「酸素」の供給を絶ち、繁殖しない環境を作りだせるためです。

加えて、海水につけて保管しておくと木の辺材と心材との間で乾燥の差が無くなり、製材時にひび割れしなくなるとも言われています。

また、重量のある大きな木材でも水の浮力によって少人数での運搬が可能であった点も、水中保存が盛んにおこなわれていた理由の一つです。

現在では、フォークリフトなど機械の進歩や、乾燥技術の進歩により、乾燥に時間のかかる水中保存はなくなりつつあります。

木材保存剤の使用|シロアリや難燃対策

木材を長期間使うための薬剤として「木材保存剤」が使用されます。

樹種にもよりますが、無処理の丸太が2~4年で腐朽するのに対して、保存剤を注入した丸太は5年以上、長いもので10年以上の耐用年数が得られるということが分かっています。

参考:木製屋外製品の維持管理について|北海道林産試験場

木材保存剤とは?

木材保存剤とは、虫やシロアリ、腐朽菌などの生物的劣化や、火災による非生物的劣化を防止し、木材の耐久性を向上させるために使用される薬剤のことを言います。

1960年代後期には、CCAとよばれるクロム・銅・ヒ素化合物系の木材防腐剤が使われてきました。

ところが、CCA処理木材を不適切な方法で焼却した場合の有害ガス発生や排水への悪影響が判明し、現在ではヒ素やクロムを使用しない保存剤への転換が急がれています。

参考:家屋解体工事におけるCCA処理木材分別の手引き(改訂版)|北海道立林産試験場

木材保存剤を使った処理方法

木材保存剤は、下記のような方法で木材に使用されます。

  • 加圧注入処理
  • 深浸潤処理
  • 表面処理

ひとつずつ詳しく解説します。

加圧注入処理

木材保存剤を満たしたタンクの中に木材を入れた状態で圧力を加え、木材の内部に薬液を浸透させる方法です。

木材保存処理方法の中で最も効果が高いとされています。森林総合研究所における屋外試験では、加圧注入処理を施した木材が、29年経過しても良好な状態であるとして、現在も継続して行われています。

また、防腐防蟻薬剤を注入する処理方法も効果的です。気になる方は、下の記事もご覧ください。

深浸潤処理

深浸潤処理は「インサイジング」と呼ばれる、木材表面に多数の傷をつける加工を施した木材に、特殊な機械を使って薬剤を付着させる方法です。

加圧注入処理と同程度の効果を得られるとされています。

深浸潤処理を使用することで、加圧注入処理では難しいとされてきた、難浸潤性のホワイトウッドやカラマツ集成材などの木材でも容易に処理できるようになりました。

参考:深浸潤処理法|国立研究開発法人科学技術新興機構

表面処理

表面処理は、木材保存剤を貯めた槽に木材を漬けることで、木材の表面に保存剤を付着させる方法です。

木材表面への塗布は、建築現場で行われることも多い方法ですが、工場内の管理された工程で処理をおこなうことによって、品質が均一になる点がメリットです。

DIYで行われることもあり、最も簡単に行える処理方法と言えます。

木材保存処理の性能区分

日本農林規格である「JAS」で規定されている製材の保存処理は、防腐、防蟻、防虫処理を対象にしています。

保存処理の性能は、K1からK5までの5段階に区分され、下記のようにそれぞれ使用薬剤と処理基準が規定されています。

性能区分木材の使用状態具体的内容
K1屋内の乾燥した条件で腐朽・蟻害の恐れのない場所で、乾材害虫に対して防虫性能のみを必要とするもの。ヒラタキクイムシを対象とする。 ヒラタキクイムシは、ラワン材、ナラ材などの広葉樹の辺材部分に存在するでん粉を栄養として食害する。したがってスギ材などの針葉樹は食害を受けないため、この処理の対象とはならない。
K2低温で腐朽や蟻害の恐れのある条件下で高度の耐久性の期待できるもの。比較的寒冷な地域での建材部材用。 例えば「住宅の品質確保の促進に 関する法律(品確法)」の評価方法基準では、青森県及び北海道地域で使用する土台には、K2相当以上の処理を要求している。
K3通常の腐朽・蟻害の恐れのある条件下で高度の耐久性の期待できるもの。土台等の建築部材用。例えば、「住宅の品質確保の促進(品確法)」の評価方法基準では、青森県及び北海道地域以外で使用する土台には、K3相当以上の処理を要求している。
K4通常より激しい腐朽・蟻害のおそれのある条件下で高度の耐久性の期待できるもの。屋外で風雨に直接さらされる部材用。腐朽やシロアリの被害が激しい地域での建築部材には性能区分K4の製材を用いることが望ましい。
K5極度に腐朽・蟻害の恐れのある環境下で高度の耐久性の期待できるもの。電柱、枕木、海中使用等極めて高い耐久性が要求される部材用

引用:製剤のJAS制度(6)保存処理について|一般社団法人 全国木材検査・研究協会

処理基準は、薬剤の浸潤度と有効成分の吸収量で規定され、数字部分が大きいほど、より過酷な環境での使用を想定した内容と言えます。

木材保存に関する2つの資格|公益社団法人日本木材保存協会

現在、木材保存に関して「日本木材保存協会」が認定する下記2つの資格が存在します。

  • 木材保存士
  • 木材劣化診断士

日本木材保存協会では「木材保存」について、さまざまな角度から調査・研究を行い、木材保存に関する資格認定を始め、木材保存剤の規格や基準の作成、および認定なども行っています。

参考:公益社団法人日本木材保存協会

木材保存士

木材保存士とは、木材の寿命を延ばす処理方法や処理木材の性能など木材を長持ちさせるための知識をもつプロです。

近年、環境問題が注目されているなかで、森林資源を有効活用するための手段として、木材を長期にわたって保存・保管する技術が必要とされています。

しかし、防腐剤など薬剤を使用した木材の処理は、健康や環境に対する安全性や廃棄物の適正な処理方法、製品のリサイクルなどにも、適切な知識が必要です。

木材保存士は、木材保存に関する最新の知識を習得し、処理方法や管理技術の向上を図る目的で制定された資格です。

参考:木材保存士|公益社団法人日本木材保存協会

木材劣化診断士

木材劣化診断士は、菌類やシロアリなど生物による木材の劣化をきちんと診断する技術を持つ専門家です。

木造住宅の維持管理や、リフォーム時の劣化調査などで活用できる劣化診断の技術を習得しています時に、修理や補修に対するアドバイスなどをおこなうこともあります。

資格取得には木材保存士、1級・2級建築士、木造建築士の資格と1日間の講習受講、並びに試験への合格が必要です。

参考:木材劣化診断士|公益社団法人日本木材保存協会

まとめ

木材の保存には「カビ対策」「乾燥対策」「腐朽菌対策」「虫対策」が必要です。

基本的な対策として、空気を通して湿気をためないことが重要ですが、実際の現場では、木材保存剤の注入が主な対策と言えます。

木材保存剤の処理にはさまざまな方法があり、JISやJAS材の認定も進んでいます。

木材保存士や木材劣化診断士といった資格を有する専門家の活躍によって、今後、安全性などが広く知られるようになれば、長期間保存できる木材がさらに普及するきっかけとなることでしょう。

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